花とミツバチ

花とみつばち(1) (ヤングマガジンコミックス)

モテたい。嗚呼、モテたい。モテモテ、と思わず声に出してみる。そのソフィスティケイトな響きには、無限の可能性が広がっている。モテるって、なんてスバラシイことなんだろう。

俺も10代の頃はモテることしか頭になかったぜ(今でもそうだけど)。「花とミツバチ」は、日本全国のダサメンに捧げられた、福音の書なのである。

「男子地味派」に属し、背後霊のごとく存在感のないダサメン・小松。自分はイケてないと勝手にカテゴライズし、そのおそろしいまでの劣等感から、メンズエステ美男ワールドへの扉を開ける。

あまりにも場違いな空気に、「オレはちょっとのぞいただけで…」と尻込むものの、オカマエステシャンに「モテたくないんですか?」と聞かれ、「モテ!?」とマッハのスピードで反応する小松。ああ、分かるぜオマエの気持ち!!!

自虐と劣等感の哀しき暴走は、メンズエステの鬼姉妹のマゾスティックな快楽と共に増幅し、尋常を逸するハイテンションで突き進む。なぜにこんなにハイテンションかといえば、小松は常に逡巡しているからだ(本能を理性で押さえ込む←自信がない)。

モテるためのロジックは、長沢チャン必殺のスマイルや、太田の恥じらい表情ひとつでコロコロ入れ替わる。自分のモノサシで何一つ行動できず、いつも他人の目が気になってしょーがない小松。ああ、分かるぜオマエの気持ち!!!

小松は、明らかにダサメンとしてカリカチュアされた存在ではあるが、「女のコとヤリたいパワー」で全7巻を駆け抜けてしまう、そのあまりに純粋な初期衝動に、我々は共感を覚えるのだ。

うーむ、女性だてらにここまでダサメンの気持ちを押さえているとは、やはり安野モヨコはタダモンではないな。さすが庵野秀明夫人。

…ん、まてよ。でも絶対に安野モヨコってSタイプだよな。はっ!!ひょっとして、このマンガを読んで小松のごとく一喜一憂している俺たちを嘲け笑うがために、このマンガは描かれたのか!?

「いい男としかセックスしないんだもん!」という、ノータリンギャルの日常描いた「ハッピーマニア」の男版と思ったら、大間違いだ。無理メの太田と付き合う小松の姿に、自らを投影させる日本全国津々浦々のダサメンを気持ち良くさせるだけさせといて、一気に現実に突き放す。

それって、まさに庵野秀明の「エヴァンゲリオン」劇場版と同じ論理な訳で、なるほど、やっぱこの二人は似た者同士の夫婦なんだと、実感する次第である。

DATA
  • 著者/安野モヨコ
  • 発売年/2002年
  • 出版社/講談社

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