デイ・アフター・トゥモロー

デイ・アフター・トゥモロー [Blu-ray]

何ゆえに、ローランド・エメリッヒはニューヨークに固執するのか。

ドイツ・シュツットガルト生まれのこの異邦人映画監督は、数々の災厄をThe City Never Sleep(決して眠らない街)に与えてきた。

『インデペンデンス・デイ』では巨大宇宙船の攻撃によってN.Y.を一瞬のうちに崩壊させ、『GODZILLA/ゴジラ』では巨大イグアナを上陸させてN.Y.をパニックに陥れている。

インデペンデンス・デイ [AmazonDVDコレクション] [Blu-ray]

ディサスター・ムービーの職人として、巨大都市の崩壊イメージにニューヨークがジャスト・マッチだったと考えることはたやすい。しかしその一方で、彼が一貫して描いていたのが、アメリカ的マッチョイズムであることを見逃してはならない。

メルティング・ポット(人種のるつぼ)とも称されるこのビッグ・シティには、多種多様の人種・宗教・政治的思想が混在する。

多民族都市ニューヨークが危機的状況を乗り越えて一致団結するプロセスは、多民族国家アメリカが一神教(アメリカン・グローバリズム)によって、世界の中心にあり続ける現実とそのままシンクロするのだ。

いわばローランド・エメリッヒの過去の諸作は、プロパガンダ映画として存在したのである。ドイツ人である彼はそれを血としてではなく、技術として映画に導入した。その目論見はみごと成功し、ワールド・スタンダードとして『インデペンデンス・デイ』『GODZILLA/ゴジラ』『パトリオット』は認知される。

しかし「9・11」以降、情勢は激変した。エメリッヒの描いてきたマッチョイズムは最も悪い形で現実化し、正義の象徴であった筈のアメリカは暴走と孤立を深めていくのである。

アメリカ主義をハリウッド・ムービーの大前提に置いたローランド・エメリッヒは、映画的イデオロギーと個人的イデオロギーを、切り分けなければならない事態に陥った。

もはや『インデペンデンス・デイ』はファンタジーとしては語られない。『デイ・アフター・トゥモロー』は、ハリウッド的手法でつくられたアンチ・アメリカ映画なのである。

二酸化炭素の大量排出に伴う地球温暖化というテーマは、京都議定書を拒否したアメリカの立場からすれば、面白い話ではない。

本編に登場する副大統領は、環境問題よりも強いアメリカの再興を選択したブッシュ大統領をそのままなぞったようなキャラクターであり、故に副大統領がラストで全アメリカ人に向かって語りかけるスピーチの一節、「I was wrong」は、強い意味を帯びてくる。

ジョージ・H・ブッシュの為すべき政治的態度としてはもちろん、ローランド・エメリッヒ自身の謝罪と受け止めるべきだろう。過去のフィルモグラフィーの贖罪として、『デイ・アフター・トゥモロー』は存在する。

DATA
  • 原題/The Day After Tomorrow
  • 製作年/2004年
  • 製作国/アメリカ
  • 上映時間/124分
STAFF
  • 監督/ローランド・エメリッヒ
  • 製作/ローランド・エメリッヒ、マーク・ゴードン、トーマス・M・ハメル、ケリー・ヴァン・ホーン、ローレンス・イングリー、キム・H・ウィンサー
  • 脚本/ローランド・エメリッヒ
  • 製作総指揮/ウテ・エメリッヒ、ステファニー・ジャーメイン
  • 原作/アート・ベル、ホイットリー・ストリーバー
  • 脚本/ジェフリー・ナックマノフ
  • 撮影/ウエリ・スタイガー
  • 編集/デヴィッド・ブレナー
  • 音楽/ハラルド・クローサー
CAST
  • デニス・クエイド
  • ジェイク・ギレンホール
  • エミー・ロッサム
  • セーラ・ウォード
  • アージェイ・スミス
  • タムリン・トミタ
  • イアン・ホルム

Next Post

THX-1138

日 10月 1 , 2017
南カリフォルニア大学の映画学科に在籍中のジョージ・ルーカスが、課題作品として製作した短編『電子的迷宮 […]
THX-1138

アーカイブ

メタ情報

最近の投稿

最近のコメント

カテゴリー