【映画レビュー】ディープ・ブルー／アラステア・フォザーギル、アンディ・バイヤット

弱肉強食をしみじみ痛感させられる、海洋ドキュメンタリー

映画『ディープ・ブルー』（2003年）に関する1ダース

映画『ディープ・ブルー』（2003）は、イギリスのBBCで放送された『BLUE PLANET』を映画用に再編集した海洋ドキュメンタリーである。
『ディープ・ブルー』は、製作7年、ロケ地200ヶ所、撮影7000時間という膨大なリサーチの積み重ねによって完成した。
世界最高峰のオーケストラであるベルリン・フィルハーモニー管弦楽団が、今回はじめて映画音楽を引き受けた。イギリス＝ドイツ製作の作品ということで、「どこかドイツっぽさを表現したかった」のがオファーした理由らしい。ものすごく安易な理由だが、流石にその音楽は流麗で荘厳である。
シャチに空中に放り投げられて弄ばれるアザラシの赤ちゃん、シャチに食べられて白骨化している鯨の赤ちゃんと、結構エグいシーンもあり。やっぱこの世の中、弱肉強食である。
オスのペンギン達が肩を寄せあって吹雪を凌ぐシーンは、妙にしみじみしてしまった。男たるもの、じっと我慢すべしということか。
シロクマがイルカを襲うシーンがあるが、そのハントのヘタさぶりは微笑ましくすらある。っていうか、絶対ムリだろ。
ミズクラゲの幻想的な美しさは、筆舌に尽くせない。GONTITIのチチ松村氏は大のクラゲ好きということだが、その理由がわかるような気がした。今流行りのスローライフだしね、きゃつらは。
ハシナガイルカの驚異的な二回転ひねりジャンプは、体操競技だったら10.00必至の大技である。
チョウチンアンコウの造形としての醜悪ぶりは、H.R.ギーガー並み。
本作のナレーションを務めているのは、アイルランド出身の俳優マイケル・ガンボン。2002年10月に亡くなったリチャード・ハリスに代わって、『ハリー・ポッター』シリーズのダンブルドア校長役を演じていることで有名な役者さんである。ちなみに日本語吹き替え版でナレーションを務めているのは、渋いダンディーボイスで世のオバサマ方を熱狂させている津嘉山正種氏。
サミュエル・L・ジャクソンの死にっぷりが記憶に新しいレニー・ハーリン監督による同名のパニック映画があったが、本作とは全く関係がない。
『ディープ・ブルー』（レニー・ハーリン）
海には、崇高なまでの美しさと凶暴さが同居している。『ディープ・ブルー』を観て「私もスキューバとかやってみたい！」と思う人がいたとしたら、ソイツはかなりの冒険野郎マグガイバーに違いない。