ハリー・ポッターとアズカバンの囚人/アルフォンソ・キュアロン

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クリス・コロンバスは、ある意味で最もハリウッド的な映画作家である。

脚本家としてキャリアをスタートさせたコロンバスは、『グレムリン』『グーニーズ』『ヤング・シャーロック/ピラミッドの秘密』といったエンターテインメント作品で成功をおさめ、『ホーム・アローン』で映画監督としての名声を得た。

彼のフィルモグラフィーで一貫しているのは、伝統的なフォーマットに裏打ちされた願望充足型の幼稚性。その分かりやすさが、世界のメジャー足りえんとする単純明快なハリウッド映画にジャストフィットしたのだ。

『グッドナイト・ムーン』や『9ヶ月』など、大人のラブストーリーに挑戦したものもあるにはるが、その男女間の関係性はあまりにも類型的で、繊細な心情の綾とか機微といったものはナッシング。

結局「子役の魅力を引き出すことにかけては定評のある映画作家」という肩書きにおさまってしまい、お子様映画の達人として『ハリー・ポッターと賢者の石』『ハリー・ポッターと秘密の部屋』の監督に抜擢されたのだ。

しかし『アズカバンの囚人』では過去の路線を踏襲できない。まだハリー坊やが初々しかった頃は、クリス・コロンバスお得意のホームアローン的幼稚性で“ハレ”を全開させればよかったのだが、さすがに13歳くらいの思春期になるとそのテイストではキツくなる訳で、そういう意味で監督がアルフォンソ・キュアロンにバトン・タッチされたのは賢い計算だったと思う。

アルフォンソ・キュアロンといえば、『天国の口、終りの楽園』で高い評価を浴びたメキシコの若手監督だが、独特の高温多湿な色彩設計が『ダークサイド・オブ・ハリポタ』とも言うべき今作のテイストにマッチしている。逆に言えば、『アズカバンの囚人』にディズニーランド的なファンタジー色は皆無だ。

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『天国の口、終りの楽園。 』(アルフォンソ・キュアロン)

吸魂鬼ディメンターなんて、ガキンチョがうなされそうなくらい怖いし、夢に満ち溢れたワンダーランドだったはずのホグワーツ学校も、ほとんどホーンテッド・マンション状態。

爽快で躍動感に溢れていたクィディッチのシーンは今回ドシャ降りのなか行われ、ハリーくんは途中気を失って墜落してしまう。ハリーくんは己と過去と恐怖に対峙するんである。

それにしても結局オチが時間操作ということで、思いっきり『ドラえもん のび太の大魔境』と同じなのは笑った。

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『大長編ドラえもん のび太の大魔境』(藤子不二雄)

ローリング女史は藤子・F・不二雄のファンなんだろうか。クライマックスもほとんどドタバタ劇で、場当たり的な感じ。ルーピン先生が狼男だったって言われても、ねえ。

たぶんこの映画、ハリーくんがトシをとればトシをとるほど内的葛藤が深まり、単純明快なファンタジーから乖離していくんだろうな。原作読んでないから、よく分からんけど。それでも世界中のガキンチョどもが追従できるかどうかが、今後の課題でしょう。

DATA
  • 原題/Harry Potter And The Prisoner Of Azkaban
  • 製作年/2004年
  • 製作国/アメリカ
  • 上映時間/142分
STAFF
  • 監督/アルフォンソ・キュアロン
  • 製作/デヴィッド・ヘイマン、クリス・コロンバス、マーク・ラドクリフ
  • 製作総指揮/マイケル・バーナサン、カラム・マクドゥガル、ターニャ・セガッチアン
  • 原作/J・K・ローリング
  • 脚本/スティーヴ・クローヴス
  • 撮影/マイケル・セレシン
  • 編集/ スティーヴン・ワイズバーグ
  • 音楽/ジョン・ウィリアムズ
CAST
  • ダニエル・ラドクリフ
  • ルパート・グリント
  • エマ・ワトソン
  • ゲイリー・オールドマン
  • ロビー・コルトレーン
  • マイケル・ガンボン
  • エマ・トンプソン

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