モテキ/大根仁

モテキ Blu-ray豪華版(2枚組)

世の童貞男子を狂喜させる、一大スケベ・エンターテインメント

ライターの故・川勝正幸が猛プッシュしていたこともあり、『去年ルノアールで』(2007年)、『週刊真木よう子』(2008年)、『湯けむりスナイパー』(2009年)などを手掛けた大根仁が、注目の映像クリエイターであることは承知していた。

リミックス感覚の映像表現+男の子スケベ目線+溢れるサブカル愛+卓越した音楽センスで、文科系ボーイズ&ガールズの熱い支持をゲット。

「月9」なんぞ蹴散らすくらいに、民放で今最もキテるドラマ枠『ドラマ24』(テレビ東京)で、久保ミツロウ原作のマンガ『モテキ』(2010年)が大根仁監督でドラマ化されると聞いたときは、期待で思わず小躍りしたものだ!

モテキ (1) (イブニングKC)
『モテキ』(久保ミツロウ)

実際『モテキ』は、小生の2010年ベスト・ドラマである。三十路間近のイケてない派遣社員・藤本幸世(森山未來)が、突然ふりかかってきたモテ期に右往左往するサマは、世の童貞男子(&童貞気質男子)ならツボること必至の、一大エンターテインメント。

しかも女優陣がサイコーである。土井亜紀役の野波麻帆は、濃縮100%のエロさが辛抱たまりませんし、バツイチ・ヤンキー林田尚子役の菊地凛子は、男前気質と溢れる母性を併せ持っている。

小宮山夏樹役の松本莉緒は、いかにも一発ヤレそうな“ゆるふわ”オーラがダダ漏れで、中柴いつか役の満島ひかりに至っては、神レベルの演技。

という訳で小生、毎週金曜日の0時12分から正座スタンバイし、キャッキャキャッキャしながら楽しく鑑賞したんであるが、どうしてもある問題が回を追うごとに顕在化してきて、正直終盤になると生理的に辛くなってしまった。

『モテキ』最大のウィークポイント、それは主人公・藤本幸世に1ミクロンたりとも感情移入でき~ん!!!ということにある。

彼は実は非モテ男子ではなく、モテ期を利用して群がってくる女の子たちを全員食っちまおう!とする、肉食男子(でもメンタルは超薄弱)なんであって、その身勝手さ、オトコとしての未成熟さにイライラしてしまうのだ。

この構造的欠陥が、今回の映画版になるとさらにエスカレート。長澤まさみ、麻生久美子、仲里依紗、真木よう子というビューティフル・ガールズが幸世の前に現れ、トキメキデイズ・チャプター2が再起動するんだが、来る者は拒まず状態だったドラマ版と違い、映画版では幸世は最初から長澤まさみにロック・オン(僕もそうします!)。

しかし、その気もないのに麻生久美子と一晩を共にし、彼女をすっかりその気にさせた挙げ句、「っていうか重いんだよ!」と鬼畜コメントをブチかます。

モラル・ハザードはさしおいて、「これがオトコの本質なのだ!」という製作サイドの確信犯的手つきなのかもしれないが、娯楽作品を標榜している映画において、主人公に嫌悪感を覚えさせる…というのは、明らかに戦略ミスなんではないか。

巷では賛否両論、主に「否」が多い…というエンディング問題についても、僕は断然「否定派」であります。確かに、セカチュー・コンビが泥だらけになりながら口づけを交わし、ミラーボールが煌めくなかカメラが360°パンする映像は高揚感に溢れている。

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しかしながらそれに至るまでのプロセスは全くもって理解不能で、仕事を放棄して長澤まさみを追いかける森山未來にも、最終的に彼を受け入れる長澤まさみにも、どっちにも感情移入できないのだ(っていうか、『幸世くんだと成長できないの』とか言ってなかったか?お前?)。

結局のところ『モテキ』においては、モテない奴=いい奴、モテる奴=嫌な奴、という単純な方程式が根幹なのであって、逆にモテない奴がどれだけ残虐非道な限りを尽くしてもOKだし、モテる奴がどんなに仕事を頑張っても、最終的に足をすくわれてしまうのである。

まあ確かに、金子ノブアキなんていかにもザ・モテメンって感じだし、我々非モテ族からするとパブリック・エネミーではありますが。

とまあ、いろいろ批判めいたコメントをいろいろ申し上げてきましたが、『モテキ』映画版はある一つのファクターにおいて、必見の作品であることもまた間違いないんである。つまり、長澤まさみはアルマゲドン級に可愛ええーーー!ってことである。

予告編では「殺人級にキュートな笑顔を持つ雑誌編集者」というキャッチフレーズがつけられていたが、激しく同意。サブカルの聖地・下北沢ヴィレッジ・バンガードで会うなり「意外にかっこいいじゃーん!」なんて言われたら、それだけで完全ノック・アウトだ。

何でもDVD版に「みゆきの部屋」なる特典映像がついているらしいが、この内容がスゴい。長澤まさみとの居酒屋デート・シーンが幸世の主観で撮られており、まさみの笑顔&胸元&足への目線が忙しく(&エロく)動き回る、というのだ。

しかも大根仁自らカメラを担当しているというから、我々の期待を裏切らない出来になっていることは間違いなし。はっきりいって『モテキ』映画版、これだけでオール・オッケーだったんじゃね?という気もしてくる今日この頃。

《捕捉》
僕は『モテキ』を観るために一人いそいそと平日夜の新宿ピカデリーに赴いたんだが、観客は童貞&セカンド童貞どころか、イケてるカップルばっかで、僕もカップルに両端を挟まれるという状態に。ファッ~~ク!この映画、テーマからして「カップル禁止」のR指定にして頂きたい。

DATA
  • 製作年/2011年
  • 製作国/日本
  • 上映時間/118分
STAFF
  • 監督/大根仁
  • 製作/井澤昌平、市川南
  • エグゼクティブププロデューサー/中尾哲郎、塚田泰浩、山内章弘
  • 企画/川村元気
  • 原作/久保ミツロウ
  • 脚本/大根仁
  • 撮影/宮本亘
  • 美術/佐々木尚
  • 編集/石田雄介
  • 音楽/岩崎太整
  • 録音/下元徹
CAST
  • 森山未來
  • 長澤まさみ
  • 麻生久美子
  • 仲里依紗
  • 真木よう子
  • 山田真歩
  • 伊達暁
  • りりィ
  • 新井浩文
  • 金子ノブアキ
  • リリー・フランキー

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