ナインスゲート/ロマン・ポランスキー

ナインスゲート ―デジタル・レストア・バージョン― [Blu-ray]

ロマン・ポランスキーが仕掛けた、悪魔学の罠

『チャイナタウン』(1974年)のジャック・ニコルソン、『ゴーストライター』(2010年)のユアン・マクレガー。

ロマン・ポランスキーが手掛けるサスペンス映画には、そのマスクの裏側に暗黒世界への扉が開かれているかのような、ダークサイド系俳優が選ばれることが多い(『フランティック』(1988年)のハリソン・フォードは例外だろうが)。ジョニー・デップもまた、その系統に属する役者といっていいだろう。

ジョニー・デップ演じるコルソは、稀少本の発掘を生業とする「本の探偵」。安値で貴重な本を買い上げて、金に糸目をつけない収集家に高額で引き取らせるという、”土地ころがし”ならぬ”本ころがし”である。

そんな彼のもとに、悪魔学の権威バルカンから、世界に3冊しか現存しないという祈祷書「影の王国への九つの扉」についての調査を依頼される。しかし調査を進めるコルソの周りで、関係者が次々と謎の死を遂げ、やがて魔の手は彼自身にも及んでいく…というのが、大まかな粗筋。

黙って稀少本の調査をしていれば多額のマネーが転がり込むというのに、クライアントの意に反して勝手な行動をするものだから、確実にコルソは生命をおびやかされる羽目に。

まあ、サスペンス映画なんてものは往々にしてそういうもんだ。じゃないと話が発展しないし。ジョニー・デップの端正なマスクには、そんな行動すら許容できるだけの暗黒面が標準装備されている。ポランスキー映画の主役たちは、常に自らの意思で謎の森の奥に分け入っていくんである。

しかしながら、コルソを暗黒面に導く謎の女を演じるエマニュエル・セニエが、どーにもミスキャスト感あり。『フランティック』では妖婦めいた魅力をスクリーンいっぱいに散布した彼女だが(ちなみにロマン・ポランスキー夫人でもあります)、さすがにトウを超えた感は否めず。

『フランティック』(ロマン・ポランスキー)

ジョニー・デップが彼女に「君は学生かい?」というセリフには「そんな訳ないやろ!」とツッコミを入れそうになってしまった。個人的に好きだったのは、双子の製本家セニサ兄弟。アヤしさ満点ながらどこかオトボケ感もあり、ちょっとデヴィッド・リンチが描くフリークスっぽさを感じました。

もうひとつ気になったのが撮影。この『ナインスゲート』、ホラー映画のわりには妙に画面がフラットで、色調を抑えたダークな色彩感覚というよりは、絵画的でキッチュなテイストだったりする。

誰が撮影監督をやってるんだろう?と思ったら、ジャン・ピエール・ジュネの初期作品を支えた名カメラマン、ダリウス・コンジだった。確かに『ロスト・チルドレン』のような箱庭SF/ファンタジーだったらジャストマッチなんだろうが、いまひとつこの作品にはアンマッチな気がしたり、しなかったり。

ロスト・チルドレン [Blu-ray]
『ロスト・チルドレン』(ジャン・ピエール・ジュネ)
DATA
  • 原題/The Ninth Gate
  • 製作年/1999年
  • 製作国/フランス、スペイン、アメリカ
  • 上映時間/133分
STAFF
  • 監督/ロマン・ポランスキー
  • 製作/ロマン・ポランスキー
  • 原作/アルトゥーロ・ペレス=レベルテ
  • 脚本/エンリケ・ウルビス、ロマン・ポランスキー、ジョン・ブラウンジョン
  • 撮影/ダリウス・コンジ
  • 衣裳/スタイリスト アンソニー・パウエル
  • 美術/ディーン・タブラリス
  • 音楽/ヴォイチェフ・キラール
CAST
  • ジョニー・デップ
  • フランク・ランジェラ
  • レナ・オリン
  • エマニュエル・セニエ
  • バーバラ・ジェフォード
  • ジェームズ・ルッソ
  • ジャック・テイラー
  • トニー・アモニ
  • ホセ・ルイス・ロペロ

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