續姿三四郎/黒澤明

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どうやら黒澤明は、自身の処女作にしてヒット作となった『姿三四郎』の続編を撮るにあたって、「上層部は単純に二匹目のどじょうを期待している」とあまり乗り気ではなかったらしい。

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『姿三四郎』(黒澤明)

実質的な姉妹作だった『用心棒』(1961年)と『椿三十郎』(1962年)という例外はあるにせよ、黒澤は基本的に続編映画を撮らない監督だった訳だが、不本意ながらも脚本・監督を務めた『續姿三四郎』は、それでも単なる二匹目のどじょう的作品に陥らず、新たなテクスチャーを発露させている。

読者貴兄は同意されないだろうが、この作品はチャップリン風コメディー・タッチを意識したんではないだろうか、と個人的に思ったりした。

ファーストシーンで三四郎が外国人を投げ飛ばすくだりでは、画面が寄りにならず、基本的に引きの絵でアクションを展開させており、“動き”でユーモアを増幅させるという仕掛けが、いかにも初期チャップリン的なんである。

月形龍之介演じる前作のライバル檜垣源之助に代わって、その実弟で空手の使い手である檜鉄心なる人物が登場するのだが、演じるのがこれまた月形龍之介。

一人二役という発想もどことなくコメディーチックだし、この鉄心が道場破りに現れるシーンなどは、その奇妙奇天烈な構えや珍妙な叫び声も含めて、もはやチャップリンを通り越してスラップスティック的な匂いすら感じさせる。

前作ではハイカラな洋風紳士に見えた月形龍之介が、本作ではチョビヒゲを生やした奇怪な人物にしか見えず、その胡散臭さたるやほとんど「世界のナベアツ」と近接している。

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『オモローのナベアツ』(世界のナベアツ)

『續姿三四郎』は黒澤の余裕を感じさせるユーモアタッチの作品なのだが、『姿三四郎』のレビューに引き続いてクドいようではありますが、やっぱり主演の藤田進が弱いと思う。

あまりにも一本調子な演技パターンなので、脇の役者がフォローしてあげないと、ドラマのカタルシスや情感が生成されない。やっぱり藤田進は…(以下、『姿三四郎』 のレビューと同じ)。

DATA
  • 製作年/1945年
  • 製作国/日本
  • 上映時間/83分
STAFF
  • 監督/黒澤明
  • 脚本/黒澤明
  • 原作/富田常雄
  • 製作/伊藤基彦
  • 撮影/伊藤武夫
  • 美術/久保一雄
  • 照明/大沼正喜
  • 編集/後藤敏男、黒澤明
  • 音楽/鈴木静一
CAST
  • 藤田進
  • 大河内傳次郎
  • 月形龍之介
  • 志村喬
  • 轟夕起子
  • 森雅之
  • 河野秋武

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