余白が全体を覆う、生々しくてなまめかしいガールズ・グラフィティ
高校三年生の桐島カヤ子が、留年していた同学年の遠藤雅美に恋心を抱き、やがて離れ離れになるまでのガールズ・グラフィティ。大枠でいえば「青春旅立ちもの」になるんだろうけど、その手触りはあまりにも生々しくて、なまめかしい。
登場人物は全員黒目で、その心の奥を伺い知ることができない。極端に背景を省略することで、余白(白)が全体を覆っている。情報量が抑制された世界で、桐島と遠藤の心のアヤだけが浮かび上がっていく。決定的な瞬間に、あえて顔を描かない演出も切な哀しい。
それにしても、なんでこんなに魚喃キリコが描く人間たちって、とてつもない空虚を抱えていて、しなやかな身体性があって、ぼうっとした色気があるんだろ。その線にエロスが内包されている。
DATA
- 著者/魚喃キリコ
- 出版社/東京ニュース通信社
- 巻数/全1巻
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