エドワード・ホッパー ―静寂と距離―/青木保

ハードボイルド・アメリカとホッパーの接続

文化人類学者・青木保によるエドワード・ホッパー論。ヘミングウェイやダシール・ハメットの小説に代表される、心理描写はしない/行動を中心に描く/余分な説明をしないという「ハードボイルド・アメリカ」像とホッパーを接続させ、論を展開する。

エドワード・ホッパーの代表作「ナイトホークス」に対して、多くの識者が指摘する「都会の孤独」一辺倒な見方に疑問を唱えているのが面白い。この絵画の魅力はそのシンプルさにあり、現実が普遍化することで、「どこにでもある風景」を具現化しているのではないか、と語る。

描かれている人物は決してエリート層ではないし、店内に薄暗い光があるために、闇に覆われたイメージもない。あえて孤独に耽溺するでもなく、悲劇に走るでもなく、このありふれた世界を切り取る力こそが、ホッパーという画家の偉大さであるようだ(そういえばこの本を読んで気づいたが、このダイナーにはドアがない。つまり出ることができない)。

僕がよく見ているYouTube「山田五郎 オトナの教養講座」で、エドワード・ホッパーを取り上げたときに山田五郎さんも指摘していたが、不気味な一軒家を描いた「House by the Railroad」が、アルフレッド・ヒッチコックの『サイコ』のノーマン・ベイツ邸に影響を与えていることは、とても興味深い。エドワード・ホッパー=暗黒映画。それはタイ・ウェストの『X エックス』シリーズにも繋がる事実だ。

ただ正直文章がやや散漫で、論旨がまっすぐ進んでいかないので、読みにくいことは確かかも。

DATA
  • 著者/青木保
  • 発売年/2019年
  • 出版社/青土社

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