かくかくしかじか/東村アキコ

笑いと涙の東村アキコ流「まんが道」

やだこれ、号泣必至漫画ですやん。ずるくないですか。

将来は漫画家になることを夢見てる自意識過剰な女子高生・林明子(東村アキコ)が、絵画教室のスパルタ画家・日高健三に竹刀でボッコボコされながらデッサンを描きまくり、やがて漫画家として成功していくまでの東村アキコ流「まんが道」。

高校時代は「ブルーピリオド」みたいな美大受験漫画で、入学して宮崎に帰郷してからは典型的なモラトリアム漫画で、時間を持て余していた学生時代は一コマも漫画を描かなかったくせに、会社員と絵画教室と漫画の三足の草鞋生活になってから、ガゼン漫画を描き始めるっていうのがすごくリアル(実話だからリアルなはずなんだけど)。人間って追い詰められないとパワーを発揮できないもんです。

語り口も面白い。現在の東村アキコがガンガンにナレーションしてくるし、閑話休題って感じで現在のエピソードがインサートされてくるし、それがいい塩梅に“これから待ち受けているであろう悲劇”を暗示しているのが、この作品のミソになってる。

そして東村アキコ漫画といえば、登場人物が超テンパってるとか超ハイテンションになっているときのデフォルメ描写。「彼氏あいたーい!」とか「集英社のパーリー!」とか、いちいちツボ。

キャラクターもみんな最高だけど、個人的に好きなのが、エジプト展行ってきたという理由で第一声が「メンフィスー!」と謎の奇声を発する石田拓実先生。あんな友達、僕も欲しい。イケメン彼氏とか、高校美術部顧問の中田先生もイイっすね。ってかこの漫画、出てくる人がみーんなスーパー優しい。

超絶ハイテンション・コメディだからこそ、不意に訪れる死の影にはっとさせられる。「先生の残り時間が残り少ないことを知りながら先生を見捨てて逃げた」というリュックの後ろ姿が切ないこと!漫画としての見せ方の巧みさに脱帽。

DATA
  • 著者/東村アキコ
  • 出版社/集英社
  • 巻数/全5巻

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