正しさとは何かをPOPな文体で問いかける、芥川龍之介賞受賞作
第155回芥川龍之介賞受賞作。三十代半ばにして恋愛経験なし・正社員歴なし・コンビニバイト歴18年目の主人公・古倉恵子の目を通して、正しさとは何ぞや?というなかなかに重いテーマを、ポップな文体で綴っていく。
自分が他の人たちとズレていることを幼少時に察知した彼女は、周りの空気に合わせることでアオハルをサバイブ。やがて大学生になった彼女は、コンビニ店員という型に自分を当てはめることで社会に接続し、生の実感を得る。
我々は多かれ少なかれ、我々はこの世界のなんとなくの“正しさ”に適応して過ごしている。でも、その“正しさ”が書かれたルールブックなんて存在しない。そして、恵子はその“正しさ”が分からない。だから完璧なマニュアルが用意されたコンビニで、彼女は初めて居場所を見つけることができた。コンビニという空間は、世界そのものなのだ。
大概の人間は正しい世界に位置していて、正しい人間であることを自覚するために、正しくない人間を見つけると「正しさ」について説法を垂れるという描写は、読んでいて辛くなった。たぶん僕も、自分が正しい世界にいる正しい人間であることを証明するために、そのような行動をとったことは一度や二度ではないはず。
最低・最低のF⚫︎⚫︎K野郎・白羽の「この世界は異物を認めない」という言葉がいつまでも脳内で残響する。
DATA
- 著者/村田沙耶香
- 発売年/2016年
- 出版社/文藝春秋
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