東京ヒゴロ/松本大洋

再び漫画への情熱を取り戻す、中年ONE AGEINもの

一身上の都合により退職した漫画編集者の塩澤が、再び漫画への情熱を取り戻し(そのきっかけになったのが、手塚治虫とか大友克洋とか諸星大二郎とか、漫画の神々の作品を目にしたことだったっていうのが、良き!)、退職金を注ぎ込んで新しいコミック本を作ろうとする、中年ONE AGEINもの。そんなの泣くしかないだろ。

てっきり編集者にフォーカスした松本大洋版『編集王』だと思ってたら、さまざまな漫画家の葛藤と苦闘を描いた『まんが道』でもあって、実は漫画業界に関わるさまざまな登場人物に肉薄した群衆劇。

Beggars Banquet
『まんが道』(藤子不二雄)

思いかけず連載が大ヒットしてしまった新人漫画家の青木が、どんどんメンタルがやられていく描写があったりして、これが正視できないくらいにリアル。たぶん彼は若き日の松本大洋を引き写した存在なのだろう。個人的に好きなキャラが、メタボ漫画家の長作君。もうほとんど花男(バッティングセンター行ってるし)!

「本を完成させることではなく、創造をする苦難の中に、その道程にこそ、喜びがある」。こんな青臭いセリフをのたまう塩澤、スーパーかっこええ。漫画への純粋な情熱、青臭さを肯定するために、3巻をかけて走り抜けた松本大洋にはリスペクトしかありません。

DATA
  • 著者/松本大洋
  • 掲載誌/ビッグコミックオリジナル
  • 出版社/小学館
  • 巻数/全3巻

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