サイドストーリーは面白いのにメインストーリーがフラついている、残念な青春ダンス映画
1984年、イングランド北東部の炭坑町。母親を亡くし、父親と兄と痴呆症気味の祖母の四人で暮らしている11歳のビリー少年は、毎日ボクシング教室へ通っている。
ひょんなことから、ウィルキンソン夫人が主催するバレエ教室に飛び込み参加することになり、ダンスの魅力にとりつかれていく。彼の生来の素質を見抜いた夫人だったが、それを知った父は大激怒。ダンスを止めるように忠告するも、一度ビリー少年に火のついたダンスへの情熱は、消えることはなかった…。
一人の少年がバレエに出逢い、傷付きながらも成長していく姿を綴った『リトル・ダンサー』(2000年)は、ゴールデングローブ賞にもノミネートされ、世界中で絶賛を浴びた作品らしい。
実際、日本でも公開当時にはけっこう話題になった模様。しかし、まあ何というか、スッキリしない映画なんである。素直に感動する前に、映画のアラが気になってしょうがない。
まずは演出。ビリー少年がダンスしている映像は実に躍動感に満ち、迫力もあるんだが、どうも監督のスティーヴン・ダルドリーはやたらとカットバックを挿入する悪いクセがあるようで、踊るビリー少年の映像にどーでもいいようなカットをかぶせてくる。
「バレエ」というモーションに連なるイメージの羅列なのは分かるが、このパターンを踊るたびに繰り返すもんだから、ちょっと芸がなさすぎ。
二つ目の不満は、ビリー少年とウィルキンソン夫人との関係が、最後の方でうやむやになってしまったこと。
母親をなくしたビリー少年は彼女に母親の面影を求め、彼女も息子のような態度で接する。単なる師弟関係ではない二人に、『ベスト・キッド』(1984年)のラルフ・マッチオ君(どこいっちゃったんだろうね、このヒト)とミヤギの関係を連想したのだが、途中でウィルキンソン夫人はすっかり出番がなくなってしまい、後半はその役割を父親が担うことになってしまう。
ナンダカンダで、ビリー少年をロイヤル・バレエ団に入れようと奮起する父と息子との家族愛の物語にすり変わってしまうのだ。当然父子の関係を描くことも重要には違いないんだが、これではウィルキンソン夫人とのエピソードが中途半端すぎ。
最大の不満はビリー少年を演じるジェイミー・ベル君。ダンスに情熱を燃やすナイーブな感性を持った少年、というよりは意地悪そうな悪ガキにみえてしまうのは僕だけか。子供特有のワガママや反抗が、ちっとも可愛くみえてこない。このテの映画で子供が可愛くない、というのは致命的だ。
子供のクセにいやにマセた言動をするウィルキンソン夫人の娘や、ホモッ気のあるビリーくんのお友達など、サイドストーリーは面白いのに肝心のメインストーリーがフラついているのは残念。ひょっとしたら、編集に問題があるのかも。
シノシプスを読み直して、改めて再編集したらすっごくチャーミングな作品になるのかも。そういう可能性を持った映画ではある。
- 原題/Billy Elliot
- 製作年/2000年
- 製作国/イギリス
- 上映時間/111分
- 監督/スティーヴン・ダルドリー
- 製作/グレッグ・ブレナン、ジョン・フィン
- 製作総指揮/ナターシャ・ワートン、チャールズ・ブランド、テッサ・ロス、デヴィッド・エム・トンプソン
- 脚本/リー・ホール
- 撮影/ブライアン・テュファノ
- 美術/マリア・ジャコヴィック
- 編集/ジョン・ウィルソン
- 衣装/スチュアート・ミッチャム
- ジェイミー・ベル
- ジュリー・ウォルターズ
- ゲイリー・ルイス
- ジェイミー・ドラヴェン
- ジーン・ヘイウッド
- ステュアート・ウェルズ
- マイク・エリオット
- ニコラ・ブラックウェル
- コリン・マクラクラン
- ジャニーヌ・バーケット
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