兄弟/姉妹で活動している俳優、しかもハリウッドの第一線で活躍しているとなると、その数は決して多くはない。
思いつくだけでも、ベン・アフレック&ケイシー・アフレック、リバー・フェニックス&ホアキン・フェニックス、オーウェン・ウィルソン&ルーク・ウィルソン、エミリオ・エステベス&チャーリー・シーンといったくらいか。
最近では、子役からすっかり女優としての風格を帯びてきたダコタ・ファニングとエル・ファニングあたりが有名ですね(面倒くさいんでヒルトン姉妹とかは割愛!)。
その中でボー・ブリッジス&ジェフ・ブリッジスは異色の存在である。1940年代に西部劇で鳴らした俳優ロイド・ブリッジスと、女優で詩人のドロシー・シンプソンを親に持つサラブレッドながら、二人の個性は絵に描いたような愚兄賢弟。
でっぷりとした体躯の持ち主で笑顔を絶やさず、『ホテル・ニューハンプシャー』では気のいいマイホームパパを演じていた兄貴のボーに対し、弟のジェフはハードボイルドかつアウトローなオーラをふりまく、二枚目プレイボーイ。
アレック・ボールドウィン&ウィリアム・ボールドウィンみたく、交換可能なワンパターン俳優に非ず!ここまで棲み分けが出来ている兄弟俳優っていうのも珍しいんじゃないか。
『恋のゆくえ』は、ボー&ジェフが兄弟のピアノ・デュオ「ファビュラス・ベイカー・ボーイズ」を演じており、サエない兄貴とプレイボーイの弟という設定をそのまま(?)引き継いでいる。
固い結束で結ばれた兄弟の友情が、はすっぱなブロンド美女スージー・ダイアモンド(ミシェル・ファイファー)の登場によって、次第にバランスが崩壊。
兄と弟、男と女という関係を軸にほろ苦い大人の恋が紡がれていく…。いや、マジこれ、長門裕之と津川雅彦とかだったら、二人がマドンナを奪い合うだけの破廉恥ドラマにしかなりませんよ。ボーの朴訥な人柄が、この映画に品格と潤いを与えている。
大人のくせに大人になりきれない、意地と意地のぶつかりあい。大人ゆえに素直になりきれないもどかしさ。そんな微妙な心理の綾を、当時30歳そこそこだったスティーブ・クローブスは、自ら書いたシナリオを元に丁寧に掬いとっていく。
BGMにジャズ界の重鎮デーヴ・クルージンを起用したセンスも良ろし。熟成されたワインのようにコクのあるラブストーリーである。
- 原題/The Fabulous Baker Boys
- 製作年/1989年
- 製作国/アメリカ
- 上映時間/109分
- 監督/スティーブ・クローブス
- 脚本/スティーブ・クローブス
- 製作総指揮/シドニー・ポラック
- 製作/ポーラ・ワインスタイン、マーク・ローゼンバーグ
- 撮影/ミハエル・バルハウス
- 音楽/デーヴ・グルーシン
- ミシェル・ファイファー
- ジェフ・ブリッジス
- ボー・ブリッジス
- エリー・ラーブ
- ジェニファー・ティリー
- ザンダー・バークレイ
- デイキン・マシューズ
- ケン・ラーナー
- アルバート・ホール
- テリー・トレアス
- グレゴリー・イッツェン
- ブラッドフォード・イングリッシュ
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