ファレリー兄弟の知的計算と抜群のセンスが光る、お馬鹿コメディ
邦題は『2番目のキス』(2005年)だが、原題は『Fever Pitch(アツい球場)』。ドリュー・バリモアが過去に主演した『25年目のキス』(1999年)と『50回目のファースト・キス』(2004年)に続くシリーズ第3弾ということらしいが、はっきりいって3作とも何の繋がりもないので、ちょっと詐欺まがいのタイトルである。日本の配給会社の陰謀なり!
もともとはこの作品、人気作家ニック・ホーンビィが、イングランドのサッカークラブであるアーセナルの熱狂的サポーターを描いた自伝的ベストセラー『ぼくのプレミア・ライフ』を、大リーグに置き換えて映画化したもの。
’97年にもコリン・ファース主演で、一度映画化されていたりする。それにあたって、主人公をボストン・レッドソックスの熱狂的ファンという設定にしたのが成功した。
少なくとも2004年までは、レッドソックスは悲劇のチームであった。アメリカン・リーグ東地区に所属するこの球団は、同地区のライバルチーム、ニューヨーク・ヤンキースと激しい試合を繰り広げながら、86年間もワールドシリーズを制覇することができなかったのだ。映画内でもこのあたりのエピソードは“バンビーノの呪い”なる逸話と共に語られる。
日本でいえば一昔前の阪神タイガースみたいなもんで、熱狂的ファンを抱えながらも、長年満足のいく成績をおさめることはできなかった。
しかしこの映画を撮影するやいなや、あれよあれよとチームは白星を積み重ね、ミラクルに次ぐミラクルの連続で優勝してしまったのだから、ちょっとそのミラクルぶりはスゴイと思う。はからずも本作は、86年ぶりのワールドシリーズ制覇までを追ったドキュメンタリー・フィルムとしての様相も呈しているのだ。
だがそこは『メリーに首ったけ』(1998年)、『愛しのローズマリー』(2001年)といったお馬鹿ムービーを世に放ってきたファレリー兄弟の作品とあって、過去の諸作に比べて「お下品度」&「お馬鹿度」はやや薄めながら、相も変わらずテッテー的にくだらないコメディー作品に仕上げている。
プロデューサーとしても名を連ねているドリュー・バリモアは、30歳を目前に控えたキャリアウーマンという設定だが、やや太めのバディーと一撃必殺のスマイルで多幸感を全編にふりまき、コメディエンヌとして八面六臂の大活躍。
恋人のベンに逢うために、レッドソックスのホーム球場であるフェンウェイパークを駆け回るという、割とどーでもいいシーンがクライマックスとして成立するのは、ひとえにドリュー嬢の健気さが画面を支配してしまうからだ。
主演・製作を務め、ファレリー兄弟を迎えて撮ったこの作品には、彼女の知的計算と抜群のセンスが伺い知れる。だてに芸能生活長くないですね、このヒト。
- 原題/Fever Pitch
- 製作年/2005年
- 製作国/アメリカ
- 上映時間/103分
- 監督/ピーター・ファレリー、ボビー・ファレリー
- 製作/ドリュー・バリモア、アラン・グリーンスパン、ナンシー・ジュヴォネン、ギル・ネッター、アマンダ・ポージー、ブラッドリー・トーマス
- 製作総指揮/ニック・ホーンビィ、デヴィッド・エヴァンス、マーク・S・フィッシャー
- 原作/ニック・ホーンビィ
- 脚本/ローウェル・ガンツ、ババルー・マンデル
- 撮影/マシュー・F・レオネッティ、グレッグ・ル・ダック
- プロダクションデザイン/メイハー・アーマッド
- 衣装デザイン/ソフィー・デラコフ
- 編集/アラン・ボームガーテン
- 音楽/クレイグ・アームストロング
- ドリュー・バリモア
- ジミー・ファロン
- ジャック・ケーラー
- アイオン・スカイ
- ジェイソン・スペヴァック
- スコット・H・セヴェランス
- ケイディー・ストリックランド
- スティーヴン・キング
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