ローレライ/樋口真嗣

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オタクの、オタクによる、オタクのための潜水艦映画

「オタクの、オタクによる、オタクのための潜水艦映画」との評価がすっかり定着している『ローレライ』。

そりゃ監督が樋口真嗣で、ヒロインのコスチュームデザインが出渕裕で、画コンテに庵野秀明が協力していて、なぜか押井守までがB-29のマークデザインとしてクレジットされているとくれば、キャストに役所広司や堤真一といった重厚な演技派を揃えたところで、どうしたってオタク・ムービーにならざるを得んだろう。

よってテイストとしては、『レッド・オクトーバーを追え! 』(1990)や、『クリムゾン・タイド』(1995)といったハリウッド産サブマリン・ムービーよりも、『宇宙戦艦ヤマト』に近接した仕上がりに。そういえば、ピエール瀧が砲弾を発射するシーンは、古代進が波動砲を発射するかのようなカット割り。明らかに確信犯的な手つきだ。

誰かがこの作品を、「綾波レイが乗り込んだ宇宙戦艦ヤマト」と述べていたが、まさに言い得て妙!

香椎由宇の裸身に、ラバーをぐるぐる巻きにした萌えコスチューム(『フィフス・エレメント』(1997)の、ミラ・ジョヴォビッチにも通ずるものあり)や、激しい精神感応でバッタリと気絶するシーンなどには、どこか精神病棟から抜け出して来たかのような“イタイ感じ”が充満しており、自傷系ヒロイン・綾波レイと見事に“シンクロ”している。

しかし僕は、『宇宙戦艦ヤマト』『新世紀エヴァンゲリオン』ともうひとつ、『機動戦士ガンダム』という記念碑的SFアニメからの影響も言及したい。

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そもそも原作の『終戦のローレライ』を著した福井晴敏自身、熱心なガンダム・フリーク(実際福井は、ガンダムのノベライズ作品『ターンエーガンダム』を手がけているほど)。

むしろ『ローレライ』の表層的イメージは『ヤマト』『エヴァ』で形成されているものの、本質的なプロットはほぼ『ガンダム』の換骨奪胎ではないか、と思うくらいだ。

「地球上に残った人類などは、地上のノミだと言うことがなぜ分からんのだ!」

とは、映画『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』(1988)で、シャア・アズナブルがアムロに向かって吐いたセリフ。

彼は宇宙に出て行った人類の革新を信じており、それがニュータイプを生み出す土壌になると説く。だからこそ地球にしがみつく人間たちの粛正を目論み、小惑星基地アクシズの軌道を変えて地球に落とそうとするんである。

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『ローレライ』における浅倉大佐(堤真一)の役回りは、シャアそのもの。彼はローレライを提供する見返りとして、「東京に第三の原爆を投下する」という密約をアメリカとの間に交わし、日本の国土を徹底的に破壊することで、「優良種の誕生と強靭な国家の再生」を果たそうとする。

その対立軸として艦長の絹見(役所広司=アムロ的キャラ)が配置され、大勢の人間の命を犠牲にすることに異を唱えるのである。

しかしオタク映画の宿命というべきか、この作品は致命的に「血が通っていない」ために、全ての議論が机上の空論にきこえてしまう。戦争を知らない軍事オタクが、頭のなかだけでシミュレーション・モデルを組み立てたような感じ、というべきか。

これはまあ世代的なものなんだろうが、’70年代日本映画が持っていた尋常ならぬ熱量は、『ローレライ』のスタッフには受け継がれなかったのである。

DATA
  • 製作年/2005年
  • 製作国/日本
  • 上映時間/128分
STAFF
  • 監督/樋口真嗣
  • 製作/亀山千広
  • プロデューサー/臼井裕詞、市川南
  • 製作総指揮/島谷能成、関一由、千草宗一郎、大月俊倫、甘木モリオ
  • 脚本/鈴木智
  • 原作/福井晴敏
  • 撮影/佐光朗
  • 音楽/佐藤直紀
  • 美術/清水剛
  • 照明/渡邊孝一
  • 録音/鶴牧仁
  • 編集/奥田浩史
CAST
  • 役所広司
  • 妻夫木聡
  • 柳葉敏郎
  • 香椎由宇
  • 石黒賢
  • 佐藤隆太
  • ピエール瀧
  • 鶴見辰吾
  • 國村隼
  • 堤真一
  • 上川隆也
  • 伊武雅刀
  • 橋爪功

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