巨悪に立ち向かう国税局査察部の苦闘を描いた、「板倉亮子・敗北の巻」
前作『マルサの女』(1987年)が、「脱税&査察の攻防を描いたHOW TOモノ」として機能していたのに対し、今回の『マルサの女2』(1988年)は明らかに巨悪に立ち向かう国税局査察部の苦闘を描いた、社会派ドラマとしての色合いが濃い。
前半はヤクザの卑劣極まりない地上げの実態をつまびらかにし、後半になってマルサがその悪行を白日の下にさらしていくという展開は、後に製作された『ミンボーの女』(1992年)にも通じる構成だ。
しかし、カタルシスはない。今作はいわば「板倉亮子・敗北の巻」なんであって、結局トカゲの尻尾切りで巨悪にメスを入れられなかった査察部の大いなる失望感が、社会派ドラマとしての印象をより強めている。前作では電話でしか登場しなかった悪徳代議士・漆原が、今回遂に登場していることも見逃せない。
“対象に対して執拗に寄る”という伊丹流イディオムは、もちろん今作でも踏襲されているんだが、三國連太郎演じる鬼沢鉄平は、前作の山崎努よりもはるかに冷淡な悪役キャラ。
彼は彼なりに切迫感を感じているらしい、という心象風景は時折インサートされるものの、全くもって感情移入できる余地はなし。悪徳キャラの上にさらなる超悪徳キャラがいるという二重構造が本作のキモなんである。
とにもかくにも、前作から1年足らずでプロットを考案し、徹底したリサーチを行い、脚本を仕上げ、キャスティングし、撮影をクランクアップさせ、ポストプロダクションを行い、パート2を映画公開させてしまったことには感嘆します。
しかも、’88年といえば日本はバブルの絶頂期。お金を湯水のように使っていた時代に、金銭欲に取り憑かれた人々をシニカルに見つめた作品を連続リリースするというのは、カルト教団という着眼点も含めて、先見の明があったという証左だろう。
僕的には、粘着質の語り口がどーにも好きになれない作品ではありますが。
- 製作年/1988年
- 製作国/日本
- 上映時間/127分
- 監督/伊丹十三
- 脚本/伊丹十三
- 製作/玉置泰、細越省吾
- 撮影/前田米造
- 美術/中村州志
- 衣裳/小合恵美子、斉藤昌美
- 編集/鈴木晄
- 音楽/本田俊之
- 宮本信子
- 津川雅彦
- 丹波哲郎
- 大地康雄
- 桜金造
- 益岡徹
- 笠智衆
- 洞口依子
- 小松方正
- 加藤治子
- 三國連太郎
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