「ヒヨワな中年女性」が「逞しい戦闘美女」に変貌する、ジェームズ・キャメロンのフェティシズム全開作
細身で、骨太で、筋肉質。ジェームズ・キャメロンが、結婚・離婚を繰り返して来た女性たち…ゲイル・アン・ハード、キャスリン・ビグロー、リンダ・ハミルトン、スージー・エイミスという顔ぶれをみれば、彼の好みのタイプは明白だ。
さらに『エイリアン2』(1986年)のリプリーやバスクエス、『タイタニック』(1997年)のローズ、『アバター』(2009年)のネイティリなど映画のヒロインを列挙すれば、腕っ節が強く、男勝りな女性が好みであることもまた明白である。
しかしながら’94年に公開された『トゥルーライズ』は、いささか趣きが異なる。本編のヒロインであるジェイミー・リー・カーティスに用意された役柄は、不倫の恋にヨロメキそうになり、雨あられの銃撃戦に悲鳴をあげながら逃げまくる、冴えない中年主婦なのだ。
元々この映画の企画は、フランス映画『La Totale』(1991年)を観たシュワルツェネッガーがいたくこれを気に入り、ジェームズ・キャメロンにリメイクを持ちかけたことに始まる。
キャメロンはこの映画を、政府機関オメガ・セクターの諜報員ハリー(アーノルド・シュワルツェネッガー)が、その身分を隠して国際テロリストと闘うという、コメディ・アクションとして撮り上げた。
だが『トゥルーライズ』を注意して観てみると、実は「ヒヨワな中年女性」が「逞しい戦闘美女」に変貌するプロセスを描いた映画であることが分かる。
夫の正体を知ったジェイミー・リー・カーティスは、その後スパイとして雇われ、夫婦揃ってテロ活動に立ち向かう。自信に満ちあふれたその横顔は、かつてヒマを持て余していたしがない主婦のそれではない。
かつて『ターミネーター』(1984年)で、しがないウェイトレスだったリンダ・ハミルトンが、やがて屈強な女兵士にリ・ボーンする過程を改めてなぞっているのだ。
核爆発のキノコ雲をバックに、シュワちゃんとジェイミー・リー・カーティスがキスをしちゃうような、特に我々日本人からすると迂闊に容認できないシーンもあるものの、「これは、一人の女性をキャメロン好みに仕立て上げるまでを描いた変態映画なのだ」と寛大な心で受け止めるべきである。
まずは罪のないお気楽コメディーとして楽しみましょう。
- 原題/True Lies
- 製作年/1994年
- 製作国/アメリカ
- 上映時間/144分
- 監督/ジェームズ・キャメロン
- 製作/ジェームズ・キャメロン、ステファニー・オースティン
- 製作総指揮/リー・サンチーニ、ロバート・シュライヴァー、ローレンス・カザノフ
- 原作/クロード・ジディ、シモン・ミシェル、ディディエ・カミンカ
- 脚本/ジェームズ・キャメロン
- 撮影/ラッセル・カーペンター
- VFXスーパーバイザー:ジョン・ブルーノ
- VFX:デジタル・ドメイン、ボス・フィルム
- 音楽/ブラッド・フィーデル
- 美術/ピーター・ラモント
- 編集/コンラッド・バフ、マーク・ゴールドブラット、リチャード・ハリス
- アーノルド・シュワルツェネッガー
- ジェイミー・リー・カーティス
- エリザ・ドゥシュク
- ティア・カレル
- トム・アーノルド
- アート・マリック
- グラント・ヘスロヴ
- ビル・パクストン
- チャールトン・ヘストン
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