- 『ジャンヌ・ディエルマン、ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地』シャンタル・アケルマン
- 『こちらあみ子』森井勇佑
- 『トップガン マーヴェリック』ジョセフ・コシンスキー
- 『MEMORIA メモリア』アピチャッポン・ウィーラセタクン
- 『みんなのヴァカンス』ギヨーム・ブラック
- 『THE FIRST SLAM DUNK』井上雄彦
- 『ザ・ビートルズ Get Back:ルーフトップ・コンサート』ピーター・ジャクソン
- 『あのこと』オードレイ・ディヴァン
- 『RRR』S・S・ラージャマウリ
- 『ちょっと思い出しただけ』松居大悟
- 『グリーン・ナイト』デヴィッド・ロウリー
- 『シャドウ・イン・クラウド』ロザンヌ・リャン
- 『さかなのこ』沖田修一
- 『ミセス・ハリス、パリへ行く』アンソニー・ファビアン
- 『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』ジョン・ワッツ
- 『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』ギレルモ・デル・トロ
- 『さがす』片山慎三
- 『MEN 同じ顔の男たち』アレックス・ガーランド
- 『コーダ あいのうた』シアン・ヘダー
- 『NOPE/ノープ』ジョーダン・ピール
- 『WANDA/ワンダ』バーバラ・ローデン
- 『ナイトメア・アリー』ギレルモ・デル・トロ
- 『夜を走る』佐向大
- 『X エックス』タイ・ウェスト
- 『すずめの戸締り』新海誠
- 『ドント・ウォーリー・ダーリン』オリヴィア・ワイルド
- 恋は光』小林啓一
- 『かがみの孤城』原恵一
- 『そばかす』玉田真也
- 『キングダム2 遥かなる大地へ』佐藤信介
- 『LOVE LIFE』深田晃司
- 『アフター・ヤン』コゴナダ
- 『オフィサー・アンド・スパイ』ロマン・ポランスキー
- 『ケイコ 目を澄ませて』三宅唱
- 『ナイブズ・アウト: グラスオニオン』ライアン・ジョンソン
- 『秘密の森の、その向こう』セリーヌ・シアマ
- 『三姉妹』イ・スンウォン
- 『ある男』石川慶
- 『国境の夜想曲』ジャンフランコ・ロージ
- 『フラッグ・デイ 父を想う日』ショーン・ペン
- 『春原さんのうた』杉田協士
- 『PLAN75』早川千絵
- 『女子高生に殺されたい』城定秀夫
- 『ベイビー・ブローカー』是枝裕和
- 『わたしは最悪。』ヨアキム・トリアー
- 『犬王』湯浅政明
- 『ゴーストバスターズ/アフターライフ』ジェイソン・ライトマン
- 『クライ・マッチョ』クリント・イーストウッド
- 『LAMB/ラム』ヴァルディマル・ヨハンソン
- 『リコリス・ピザ』ポール・トーマス・アンダーソン
- 『窓辺にて』今泉力哉
- 『西部戦線異状なし』エドワード・ベルガー
- 『パラレル・マザーズ』ペドロ・アルモドバル
- 『ナワリヌイ』ダニエル・ロアー
- 『マイ・ブロークン・マリコ』タナダユキ
- 『神は見返りを求める』吉田恵輔
- 『愛なのに』城定秀夫
- 『セイント・フランシス』アレックス・トンプソン
- 『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』サム・ライミ
- 『FLEE フリー』ジョナス・ポエール・ラスムーセン
- 『ビリーバーズ』城定秀夫
- 『東京2020オリンピック SIDE:A』河瀬直美
- 『ハケンアニメ!』吉野耕平
- 『3つの鍵』ナンニ・モレッティ
- 『スティルウォーター』トム・マッカーシー
- 『ノベンバー』ライナー・サルネ
- 『ニューオーダー』ミシェル・フランコ
- 『スペンサー ダイアナの決意』パブロ・ラライン
- 『カモン カモン』マイク・ミルズ
- 『ソー:ラブ&サンダー』タイカ・ワイティティ
- 『TITANE/チタン』ジュリア・デュクルノー
- 『サウンド・オブ・007』マット・ホワイトクロス
- 『ウエスト・サイド・ストーリー』スティーヴン・スピルバーグ
- 『囚われの女』シャンタル・アケルマン
- 『ザリガニの鳴くところ』オリビア・ニューマン
- 『THE BATMAN-ザ・バットマン-』マット・リーヴス
- 『ドリームプラン』レイナルド・マーカス・グリーント
- 『ヘルドッグス』原田眞人
- 『東京2020オリンピック SIDE:B』河瀬直美
- 『ハウス・オブ・グッチ』リドリー・スコット
- 『エルヴィス』バズ・ラーマン
- 『グレイマン』ルッソ兄弟
- 『アネット』レオス・カラックス
- 『コンビニエンス・ストーリー』三木聡
- 『ザ・メニュー』マーク・マイロッド
- 『百花』川村元気
- 『ロッキーVSドラゴ ROCKY IV』シルヴェスター・スタローン
- 『アムステルダム』デヴィッド・O・ラッセル
- 『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』ライアン・クーグラー
- 『ファイブ・デビルズ』レア・ミシウス
- 『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』ジェームズ・キャメロン
- 『オッドタクシー イン・ザ・ウッズ』バク・キノシタ
- 『ドンバス』セルゲイ・ロズニツァ
- 『マッドゴッド』フィル・ティペット
- 『オルガの翼』エリ・グラップ
- 『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』コリン・トレボロウ
- 『ブレット・トレイン』デヴィッド・リーチ
- 『シン・ウルトラマン』樋口真嗣
- 『この子は邪悪』片岡翔
- 『ベルファスト』ケネス・ブラナー
- 『呪詛』ケヴィン・コー
- 『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』ウェス・アンダーソン
- 『激怒』高橋ヨシキ
- 『沈黙のパレード』西谷弘
- 『ボイリング・ポイント/沸騰』フィリップバランティーニ
- 『ブラックアダム』ジャウム・コレット=セラ
- 『選ばなかったみち』サリー・ポッター
- 『ナイル殺人事件』ケネス・ブラナー
- 『モービウス』ダニエル・エスピノーサ
『めまい』や『東京物語』を抑えて、2022年サイト&サウンド・マガジン「史上最高の映画100選」で映えあるナンバーワンに輝いた、伝説的映画をやっとこさ鑑賞。もう、何といいましょうか。例えるなら、同じBPMで四つ打ちのビートを刻むテクノが、ちょっとずつ不穏なSEがインサートされ、気がつけばBPMも変わっていて、何だったらリズムもポリリズムになっていたというような、反復の美学が僅かな差異によって軋みを起こしているような映画。中盤のあるシーンでとんでもないジャンプカットがあって(昼間が一気に夜に切り替わるシーン)、ボンヤリしていた僕もようやく事の事態が理解できて、そこからは食い入るように画面を見つめていた。1位に輝いたのもむべなるかな。凄まじい映画。シャンタル・アケルマン、恐るべし。
目の前に広がる世界は、思っているより意地悪で、たくさん傷ついたりする。劇中映画の「フランケンシュタイン」が明示するように実はかなりホラー的な題材を、森井勇佑監督の鋭敏すぎる音楽と映像センスで普遍的な青春ドラマに構築させてしまう技量に戦慄。掛け値なしの大傑作。
間違いなくトム・クルーズ自身の映画論になっている。自ら危険なスタントを行なって肉体的躍動感を大スクリーンに焼き付けんとする行為はもはや時代遅れだけど、それを絶滅危惧種のパイロットを演じることで「それが映画なのだ」と高らかに宣言。クレイジーすぎて、死に絶えつつある文化であることを知りつつも、「でも今じゃない」とトム・クルーズは必死に自分自身が信じる映画を守ろうとしている。その愚鈍なまでの真っ直ぐさに、僕は最大級の賛辞を送るものであります。
“音”だけで映画に不穏さを撒き散らし、変態的長回しであっても緊張感を持続させてしまうという、アピチャッポンの荒業。ティルダ・スウィントンの“透明な”存在感。コロンビアの原生的風景がそれを下支えする。アニミズムを超えてもはやSF。
男3人が南仏で過ごすだらだらヴァカンスを、寛容も不寛容も道徳も不道徳も全部呑み込んで、ギョーム・ブラックがこの上なく愛おしく描く、最高の夏休み映画。この解放感、多幸感!引きのショットが多いだけに、ラストカットのあの”顔”が非常に効いてる。
かつて大友克洋が自ら『AKIRA』を映画化してアニメ史に一石を投じたように、井上雄彦も「最初の強烈なダンクシュート」を決めてみせた。キャラの顔に執着した演出、音の使い方、時間の伸縮。そこかしこに「最強の素人」の才気がみなぎっている。
これ最高じゃんか。4人最後のライブ演奏というだけで爆上がりだし、スプリットスクリーンの使い方も気が利いてる。おまけに、警官がやってきていつコンサートが中止されちゃうのかというサスペンス要素もアリ。IMAXで見れて本当によかった。
中絶が違法だった60年代フランスで、予期せぬ妊娠をしてしまった主人公アンヌが、四面楚歌状態でたった一人状況を打開しようと戦う物語。狭い画角のスタンダード・サイズで彼女のアップを多用することで、孤独と焦燥感が強調され、彼女の内面に入り込んでいく。いい映画と口当たりのいい言葉だけで収まらない強度を勝ち得ている。
頭から尻尾まで面白い、エンターテイメントとして贅を尽くした大作。引きのショットを入れるタイミングとか、さりげないPOVショットとか、なんかもう普通に映画的に巧い。参りました。「ロード、エイム、シュート」は2022年の俺的流行語大賞。
今まで奇をてらいすぎてた感のある松居大悟作品だけど、今作は絶妙に時間操作しながら、ストレートな恋愛物語として屈指の出来。池松壮亮も伊藤沙莉も最高、そしてクリープハイプの主題歌「ナイトオンザプラネット」も最高。そして、夜景シーンの艶かしさもイイ。
アーサー王伝説外伝の「ガウェイン卿と緑の騎士」をデヴィッド・ロウリーが底意地悪く翻案し、非英雄譚として創り上げた。血湧き肉躍らない、カウンターとしての中世物語。ガウェインが縛られた状態で横たわっているシーン。カメラがゆっくり右に旋回すると時間が経過して白骨化した死体が現れ、そこからまた左に旋回すると時間が戻って元の縛られた状態になる。こういう大胆な時間のジャンプ&編集が全体に施されていて、その辺りがとってもデヴィッド・ロウリー!
これ、トンでもない傑作じゃないですか。銃座に押し込められた前半の息苦しさ(そしてそれが何の暗喩なのか)、一転して後半の痛快無比さ。もう最高っすね。
さかなクンをのんに演じさせるというノーベル賞級発明によって、沖田修一フィルモグラフィーにまた一つ傑作が加わった。特に中盤の不良の喧嘩シーンは秀逸過ぎ。ほのぼのテイストを寸断させるような、不穏極まりないショットがそこかしこにインサートされているのも、いかにも沖田流。
いやー素晴らしい。ストでゴミだらけの芸術の都パリと、モノが散乱している富裕層の家を掃除してきた家政婦ハリスを重ね合わせ、労働者階級による「改革」によってパリもディオールも生まれ変わるという、巧みすぎる脚本が凄い。そしてミセス・ハリスを演じるレスリー・マンヴィルの、何とチャーミングな可愛らしさよ。『ファントム・スレッド』でダニエル・デイ=ルイスの姉を演じた人とは思えんわ。
MCUというよりも、青春映画として感動してしまった。「大いなる力には大いなる責任が伴う」の言葉を投げかけられることで、確実にトム・ホランド版ピーター・パーカーも大人への階段を登った。だがそれはきっと、“屈託のない純粋な正義”を捨て去ることじゃないはず。
まるで『フランケンシュタイン』のようなゴシック・ホラーの要素を入れつつ、しかしながらストップ・アニメーションとしての楽しさとチャーミングも備えた、ファミリー・ムービーとして出色の出来。
いやー凄かった。ドス黒いのに青春物語の匂いもあって、悲劇なのに滑稽でもあり。これって、かつてポン・ジュノの助監督を務めていた片山監督の、『母なる証明』へのアンサーフィルムなのでは。
トキシック・マスキュリニティを醜悪なホラーとして昇華してみせた、mee tooムービーの新しい波。
エミリア・ジョーンズは超絶キュートだし、ジョニ・ミチェル「青春の光と影」の選曲がツボすぎるし、後半にかけて小さな伏線を回収する脚本も見事。情緒に流れすぎない演出もイイ。実は一番大事な問題が置いてきぼりだけど、あの人があーなるから解決ってことでいい?
ハッキリ言ってバカ映画なんだけど、ホイテ・ヴァン・ホイテマを撮影監督に招聘した映像的快感がハンパないド級の怪作。しかも手触りは「未知との遭遇」+「ジョーズ」+「宇宙戦争」とスピルバーグ成分てんこ盛り。こんなの嫌いな訳ないだろ。好きに決まってんだろ。断固支持。
炭鉱町の女性ワンダの、どーしようもない、不器用すぎる逃避行劇。主婦という役割から解放されても、彼女の転落ライフはより速度を増して急降下していく。ザラついたルック、対象に対する切り取り方にカサヴェテスなものを感じたんだが、彼自身お気に入りの映画なんだとか。納得。
何というか、あえて語りを鈍重にしているというか、性急に物語を転がさないというか、デル・トロ監督の作家としての余裕を感じる。クラシカルなノワールとして堂々の佇まい。これまでの彼のフィルモグラフィーで一番好きかも。
中盤以降、想像の遥か斜めを行く展開に目を見張りっぱなし。日常が非日常に変貌するのではなく、非日常が日常の地続きにあることを、サスペンスというフォーマットで巧みに描いている。いやホント、良くこんなストーリー思いつけるよなあ。佐向大監督、ひたすらリスペクトです。
史上最高齢の殺人鬼夫婦と、とにかくセックスしまくる若人が対決するヴィンテージ・ホラー。特に前半のホラーの積み上げ方が秀逸。
これまでの新海誠で最も“開かれた”映画で、最も“エンターテインメント”としての揺るぎない強度の映画だった。はっきりポスト宮崎駿を宣言した、記念碑的作品かと。僕は断固支持します。
凝り固まったジェンダーロールによる、偽りのユートピアを抜け出そうとするSFスリラー。様々な古典からの引用、核爆弾という暗喩を織りまぜることで、ある種の寓話として構築するオリヴィア・ワイルドの手腕に感服。
大根仁「モテキ」が文化系の皮を被った肉食系ハントストーリーだったのに対し、こちらは恋バナを繰り広げて徹頭徹尾「文化系哲学恋愛映画」の構造を堅持。役者陣もいいが淡い色調のカメラと岡山のロケ地が素晴らしい。そして最後にシー&ヒム「In The Sun」をかける抜群のセンス!
いじめという非常にデリケートな内容を真正面から受け止めて、安易に逃げることなく、きっちりハードに描いていることにまず驚愕。ファンタジーという器だからこそ現実世界を照射できるということか。ラストは号泣。あとコナンのギャグにはビックリしました。
アセクシュアルの主人公が少しずつ、本当に少しずつ、この世界で生きていく希望を見出す物語。カメラは被写体に寄らず、切り返すこともなく、ニュートラルな視座で、それでいて軽やかにストーリーを紡いでいく。カメラを大きく回り込ませたり、実は映画的な運動感に溢れてるのもイイ。
公開から一ヶ月遅れで鑑賞で申し訳ありません。そして合戦映画として白眉の出来であったことを知り申し訳ありません。魏軍に占拠された丘を取り戻すという超シンプルな設定、2日間の攻防戦に絞った構成の妙、そしてアクションの乱れ打ち。見事。
言葉が無効化するという『ドライブ・マイ・カー』を想起させる筋立てだったり、不穏に鳴り響く通奏低音だったり、鑑賞者のリテラシーを揺さぶってくる映画のように見えて、実は「目を見てコミュニケーションする」という、すっごいベタな話なのでは。深田晃司の優しさを最も感じました。
「自分を自分たらしめるものは、国籍でも性別でも宗教でもなく記憶である」という、これまで数多くのSF作品が扱ってきたテーマを、家族ドラマとして構築してみせるコゴナダ監督の手際たるや。余白のある空間設計、同じ時間を微妙にずらしながら折り重ねていく編集、全てが美しい。
遠景でゆっくり横パンするオープニングから、上質な映像体験に身を浸せる。ポランスキー的な狂気&変態成分は薄めなれど、無駄のないストーリーテリングと、終盤にかけて次第に熱を帯びていく構成に、老成した名監督の技を感じる。
ボクシング映画なのにボクシングそのものには重心が置かれない。ドラマティックな展開もない。劇伴も流れない。ケイコがミット打ちするリズムがビートとなって、耳が不自由なボクサーの孤独と連帯が16mmフィルムに焼き付けられる。『きみの鳥はうたえる』に続く、三宅唱の傑作。
より知的に、より奇抜に、より大胆に。傑作『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』を、さらに歯切れの良い極上のミステリにアップデート。ライアン・ジョンソンってこんなに腕のあるステーリーテラーだったのか。
母親が抱えている孤独を、8歳の娘が寄り添い、癒していく物語。ある種のファンタジーとも言える童話的筋立てなれど、家族が儚く壊れやすいものであることをハッキリ明示してしまう、極めて現実的な映画なのでは。優しさと残酷さが自然に同居している分だけ逆に怖い。家族、親子という関係のファンタジー性を、ファンタジーという器で解体して再構築している、とでも言いましょうか。
家父長制への異議申し立てをハードエッジに描くも、意外にも読後感は爽快。秀逸なのは食事シーンで、三姉妹のキャラクターや心情を「何を食べるか」「どう食べるか」でさらりと描いている。汁を啜る音一つに微細な演出が感じられる良作。最後は泣きました。
まだ4作目なのに、日本を代表する映画監督となった石川慶作品。正直1作目の「愚行録」は見せ方のアイディアを詰め込みすぎてる気がしたが、本作はじっくり腰を据えて余計はことは一切せず、寒色系の映像で淡々と、そしてダイナミックに物語を綴っていく。どこか70年代野村芳太郎的な匂いも。
中東の悲劇を描いたドキュメンタリーというよりは、もはや一片の詩のような世界。西洋絵画のような美学に貫かれた撮影、死と隣り合わせの生活を淡々と描く演出。少年が嵐のなか木の下に佇んでいるシーンは、ベルイマンにも匹敵する映像的強度。
『トップガン マーヴェリック』がハリウッドスターとしてのトム・クルーズ論となってたように、ショーン・ペンが骨の髄までインディペンデントの申し子であることを示した一作。かつて『タップス』で共演した二人は、時を経てそれぞれが信ずる映画を背負っている。
極端なまでに説明をそぎ落とし、ゆっくりと“喪失”と“再生”を浮かび上がらせる、特異な語り口。静謐という言葉に収まらない、不穏な哀しみが全編を覆っている。
ニューヨークの美大で学んだ経歴を持つ、早川千絵監督の長編デビュー作。陰影の濃いカメラ、アンチドラマティックな語り口に息を飲む。画面の隅々に、ヨーロッパ的感性が息づいている。
「女子高生に殺されたい!」という、変態的欲望を叶えるために綿密な計画を立てた高校教師の顛末を変態的に描く、いかにも城定秀夫らしい一編。後半のシナリオの展開に唸らされる。
ソン・ガンホ、IU、 ペ・ドゥナ、イ・ジュヨンと、韓国のトップスターが集結。是枝裕和がこれまで描いてきた「疑似家族の物語」のさらにその向こう側…「いのちを力強く肯定する物語」。撮影監督ホン・ギョンピョによる、常に揺れ動く映像が美しい。
想像してたものとは何もかも違う映画だった。何かを待ってるけど何も来ない。自分探しでただいたずらに時間が過ぎていく。でも人生の脇役にはいたくない…。これは「時間」と「選択」を主題に据えた、とっても普遍的な人間ドラマだ。共感度100%の。
溢れるイマジネーションを舞台装置の開発に傾けることによって、犬王のパフォーマーとしての魅力を引き出すことに専念。湯浅政明の抑制と計算が行き届いた、新時代のミュージカル・アニメーション。
都市ではなく郊外、コメディではなく家族愛、大人ではなくティーンエイジャーを物語の中心に据えたのがジェイソン・ライトマン流。ちゃんと彼自身の映画になってたのがエライ。
何がイイって、全編にわたって暴力の匂いがしないのがイイ。全体的に漂うホノボノ感、非暴力感が、なんとも心地いい、イーストウッドが孤独なアウトローから“転向”した、記念碑的作品。
霧深い荒野、走り回る犬って、それってもはやタルコフスキー先生の世界じゃないですか。映像としてのポエジーに神話的禍々しさをミックスした、アイスランド発「ひつじのこ」。
オープニング、トイレで爆竹が爆発する瞬間から、この映画が「青春の暴走作」であることを宣言。時にはバイクから振り落とされたり、ノーガソリンで坂を転げ落ちるように車を運転したりして、暴走が加速する。そして何度も繰り返される全力疾走。眩しすぎるわ!!
「昔の彼女が、猫を追いかけていなくなった」という極めて村上春樹的なトーンの物語を、あらゆる“光”で祝福する物語。
「世界の半分が参加した大虐殺を、神様は見ているだけ」というセリフにも如実なように、“人間の愚かしさ”を俯瞰で描く戦争映画と思いきや、演出は意外にもエモーショナル。ドーンドーンドーンという重低音バリバリの劇伴や、連合国側の装甲車&火炎放射器部隊&戦闘機という乱れ打ちにもそれは顕著。過剰な演出が反戦テーマに直結している。
シングルマザーとしてのパーソナルな遺伝子の物語と、スペイン内戦という負の歴史に端を発する遺伝子の物語を、ペドロ・アルモドバルの力技で接着してしまった、とにかく濃厚な映画。あ、あとペネロペがキレイです。
プーチンを糾弾し続けてきた信念の男ナワリヌイを密着取材した、驚愕のドキュメンタリー。「モスクワ4」のエピソードが頭にこびりついて離れない。
永野芽郁が叫ぶ、永野芽郁が怒る、永野芽郁が泣く姿を真っ直ぐカメラで捉える、役者の力を信じきったタナダユキ演出の潔さ。そして、オフビートなロードムービーに久々に帰ってきた向井康介のシナリオ。どこかゼロ年代的な香りが漂うこの感じ、もちろん僕は好きっス。
毎度のことながら、吉田恵輔が作る映画のアベレージの高さは異様。自民党の支持率ぐらい安定してる(嫌な例えですいません)。前半と後半で岸井ゆきの演じる主人公のキャラを反転させているのがミソ。
今泉力哉と城定秀夫がコラボしたら、エロくて愛らしくて真っ直ぐなラブストーリーが出来上がった。古本屋に入っていく河合優実の足と、傍らで佇む猫をローポジションで捉えるショットが神々しい。
子育ては地獄と言い切る母親だったり、心と体のバランスを失って相手を強く非難したり、言葉にするとネガティヴにしかならない事象そのものが、優しく、温かく、ユーモラスに描けることに、映画のチカラを感じる。そして男の自分がどれだけボンクラかを思い知らされたり。
タイトル通りマッドな映画。魔法=ハッタリズムという割り切った演出が、チープで可愛い。色んな問題を孕んでいることは認めつつ、全然嫌いになれない。
移民やセクシュアリティの問題を、アニメーション形式にすることで逆に想像力を喚起させるというアイディアが素晴らしい。警察に連行された少女の恐怖に怯えた表情が忘れられない。
夢野久作の「瓶詰の地獄」みたいなお話かなーと思ってたら、その予想を次のシークエンスでどんどん裏切っていく物凄い展開。まさに「うつし世はゆめ」的。R15だけど、良い子の皆さん夏休み映画にどうぞ。
ワイは『SIDE:B』よりも『SIDE:A』派。以上。
良作だが、もう少し「本当のリア充ってナニ?」という描き込みがないと、お仕事ドラマとしての出力にやや欠ける。劇中アニメ1つでも設定を観客に伝えるのは難しいのに、2作品が同時に描かれていることで、正直内容を掴みきれなかったのもマイナス。でも吉岡里帆はかわいいです。
3組の家族のディスコミュニケーションを、コミュニケーションの物語に変容させるナンニ・モレッティの話術。クライマックスを飾るシーンでは、イタリア映画が伝統的に受け継いできたある種のおおらかさを感じた。フェリーニ映画のあのセリフを思い出す。「人生は祭りだ。共に生きよう」。
単なるサスペンス映画に非ず。昔気質の無骨なアメリカ人男性と、都会的で洗練されたフランス人女性との交流から浮かび上がる、異文化のぶつかりあいを描いた物語。
エストニア発のアート系ダークファンタジーと思いきや、意外にもコメディ風味。マジックリアリズムが単なるゴシック幻想譚ではなく、シュールな可笑しみとして機能してる。カット割や人物配置が明快なので、通俗的な意味でもわかりやすい。オープニング、ぶっ飛びすぎ!
経済力の格差が臨界点を突破して、暴力という名のニューオーダー(新しい秩序)が世界を覆い隠す近未来。誰かに感情移入する暇もなく、ぼろ切れのように殺されていく阿鼻叫喚の地獄絵図。凄い映画を観たというよりも、来るべき世界を容赦なく突きつけられた感じ。
常にダイアナにつきまとうカメラとクリステン・スチュワートの渾身アクトによって、閉鎖空間としてのイギリス王室がスクリーンに刻まれる。しかもそこに幽霊的なモチーフも重なってくるんだからかなりトリッキー。不穏なファッション映画にして残酷なフード映画。
全てが詩的で、でもちょっぴり残酷で、そして美しい。この人の編集の呼吸って、ちょっと他の追随を許さないくらいに音楽的。あと、風呂場が大人と子供が本音で対話できる場所であることを学びました。
第1作はケネス・ブラナーを迎えて重厚なシェイクスピア路線、第2作はアラン・テイラーを迎えて正統派ハイ・ファンタジー路線を歩み、前作からタイカ・ワイティティを迎えてご陽気路線にシフトチェンジ。今回はそのご陽気さに拍車がかかってる。ずっとゴキゲン、ええ感じ!
誤解を恐れずあえて言うなら、父権社会への異議申し立てというアプローチではなく、「女性であることの呪い」を肉体的な痛みを描くことで顕在化させた作品のように感じた。とにかく強烈すぎる。
『007』シリーズの音楽に焦点を当てたドキュメンタリー。レディオヘッドの幻の主題曲があるのは知らんかったわ。
70代となったスピルバーグが初めて挑戦する、本格的ミュージカル映画。オリジナルにも濃厚に描かれていた人種問題をより深く掘り下げると同時に、ジェンダーの問題、アメリカの銃問題にも切り込む。実はこの映画には、貧富の格差という問題もテーマとして掲げられているのだが、「意外とそこは掘り下げられていないな」というのが正直な印象。もはや世界的大富豪でもあるスピルバーグには、貧困描写は難しいのかも。
マルセル・プルースト『失われたときを求めて』の一編を、シャンタル・アケルマンが映像化。嫉妬に苛まれた男のバリバリのストーカー映画。トリュフォーをエキセントリックに仕立てたような感じ。
法廷劇、ミステリー、児童虐待、性暴力、ラヴロマンス、とにかくあらゆるエッセンスがテンコ盛りな“女の一生”モノ。主演のデイジー・エドガー=ジョーンズが時々シャルロット・ゲンズブールに見えた。
「セブン」的なサスペンス映画、「大統領の陰謀」的な社会派映画、「タクシードライバー」的なヴィジランテ映画の要素を重ね合わせようとした結果、一本の映画に収斂されていない感じ。しかも、ヴィジランテ映画としての帰結が、「やっぱり個人じゃなくて、公の機関と連携して人助けするのが大切だと思いました」という、当たり前やん!という落とし前の付け方だったりする。あまりいい例じゃないけど、結局この映画って、麻薬中毒者が自分よりもヤバい中毒者に会うことで、こりゃヤバいと改心して、麻薬から足を洗うみたいな話だな、と。
家族映画であり黒人映画でありスポーツ映画でもあるという、かなりミクスチャー感覚の強い作品でした。やっぱこれって冒頭の舞台がヒップホップのメッカであるコンプトンだから?それにしてもジョン・バーンサルってどの映画でもおいしい役どころだよね。
設定を全部会話で済ませちゃう、その会話もあまり聞き取れないいつもの原田眞人節ながら、ダークヒーロー岡田准一、仔犬のようにカワイイ坂口健太郎を据えることで、妙に面白いブロマンス・ヤクザ映画が爆誕。余韻に浸らせないハイテンポ編集も、ハードボイルドな作風にマッチしとる。
誰が作っても歪つにならざるを得ないこの公式記録を、だったら歪なまま切り取ろうとする意志は感じる。中立的な視座を保とうとする意志も感じる。だからこそ『SIDE:B』のアクロバティックな構成にギョッとする。あらゆる意味で無視できない。
レディー・ガガをパトリツィア役にキャスティングした時点で、リドリー・スコットの戦略勝ち。ドロドロした人間の欲望を徹底的に俯瞰してみせる、ラグジュアリー・サスペンス。
観たらジャクソン5への言及があって、そういやプレスリーの娘リサ・マリーってマイケル・ジャクソンと結婚してたよなーと思い出し、女の子がプレスリーの腰振りダンスに熱狂するのってマイケルに熱狂して倒れるファンと同じだなーと思いに耽り、結果マイケルのことばっか考えてしまった映画。あ、普通に面白かったですよ。
リアリティなんぞガン無視、「太陽を盗んだ男」の菅原文太ばりにダイハードなライアン・ゴズリングが、ジャッキーを超える身体能力で敵をぶっ倒す。彩度高めのルック、派手なカメラワーク、これがルッソ兄弟の真骨頂か。SWATと敵チームが入り乱れる中盤のアクションには目を見張った。
アダム・ドライバー演じるコメディアンの凋落って、日々変わる世界基準に自分をどうあわせていくか、という問いに思えた。合わせすぎるとコメディアンとしての批評性が失われ、合わせなければ観客から袋叩きに合う。カラックスの作り手としての偽らざる思いなのかも。
デヴィッド・リンチ×つげ義春×寺山修司。鬼才・三木聡から届けられた、とびっきり妖しくて、とびっきり奇妙な、万華鏡的世界。
「批評すること、批評されること」を超露悪的に昇華させてみせたグルメ・ホラー。カルト的共同体の恐怖という意味では、『ミッドサマー』っぽくもある。
大メジャーの東宝、しかも川村元気監督作品とは思えないくらいにチャレンジングな企画。正気とは思えないショットの連なりに驚愕。そして原田美枝子の無双っぷりに驚愕。そして河合優実のあまりにももったいない使い方に驚愕。
ポーリーもドラゴ妻もロボットも出番が減り、文字通りロッキーとドラゴに焦点を絞った再編集版。回想長いとか人物アップ多すぎとか、気になるところは多々あるが、「ゴルバチョフがロッキーの言葉に拍手する」→「憮然とした表情会場を去る」の改変が最大にモヤる。これだと、「人は変われる」というメッセージと明らかに齟齬を起こしてるのでは?悪い意味でタカ派っぷりが色濃い。
お話としてだいぶとっちらかっちゃってるんだが、多士済々のオールスター・キャストの魅力で押し切ってしまった歴史コメディスリラー。独裁主義への異議申し立てという形を借りて、民主主義の尊さを語るデヴィッド・O・ラッセルのマジメさがよく出てる。
コレほとんど『極道の妻たち』ですね。先代が急死し、跡目を継いだアンジェラ・バセット姐さんが「ヴィブラニウムを勝手に奪おうなんてしたら許せへんで!覚悟しいや!」と啖呵を切り、組の対立劇と愛憎劇が描かれる。MCUでこのウェット感は貴重。
何を言ってもネタバレになるのでめっちゃ語りにくいけど、ある意味で『秘密の森の、その向こう』と対を成す作品かと。アデル・エグザルコプロス演じるジョアンヌが絶叫するシーンに全てが込められている。
一瞬でも心を持っていかれたら3時間12分至福の時間を過ごせるが、一瞬でも心が離れてしまったらツッコミどころしかない。
最初は物語の着地点がさっぱり見えなくて、こんなに伏線回収系アニメとは思わなんだ。売れないお笑いコンビ「ホモサピエンス」を演じたダイアンの声が妙に心に残る。
監督のセルゲイ・ロズニツァってどっかで聞いたことあると思ったら、「国葬」や「静粛裁判」の人でしたか。親ロシア派武装勢力が蜂起したドンバス地域におけるエピソードを数珠繋ぎ的に描く本作でも、無慈悲な事象をノーエモーションでただただ観察する作風は健在。まさに笑えない喜劇。
文字通り特撮界のゴッドであるフィル・ティペットが、己の中に巣食うマッドネスをそのままスクリーンに焼き付けた異形の映画でした。好きとか嫌いとかそういう次元じゃなく、黙ってこうべを垂れるしかない。たぶん彼にとってここはディストピアではなくユートピアなんではないか。
ヤヌコーヴィチ政権下のウクライナを脱出し、スイスで体操を続けるオルガ。主人公が革命に身を投じるのではなくSNSを通じて革命が描くという発想、その痛みを体操という身体に負担をかける競技で比喩的に描くという手法が画期的。カットの切り替えに監督の映像的センスを感じる。
要は「ジュラシック・ワールド3」ではなく「ジュラシック・パーク6」であり、このシリーズの支配者がスピルバーグではなくコリン・トレボロウであることを宣言する、ファンサービスに徹した一作。中盤までミッション:インポッシブル成分強めなのも興味深し。
予想通りバカ映画の皮を被った理知的映画。堂々と流れるニッポン歌謡曲、一瞬のたるみも許さぬハイテンポ編集、過度にデコったデザインセンスで、トンチキJAPANを構築。『アトミック・ブロンド』で冷戦時代を80sポップに描いたデヴィッド・リーチが、いよいよ本領を発揮しとる。
演出面における「人物描写よりも状況描写に特化」路線と、シナリオにおける「エモーショナルなドラマ」路線の、食い合わせの悪さ。ヒーロー映画としてのカタルシス欠如。すいません、全然ノレませんでした。
全編にわたって玉木宏が玉木宏っぷりを見せつける、すっごく玉木宏な映画。理屈とか合理性とかは置いといて、スケキヨお面少女やお目目ぐるぐるお母さんのホラーショーを愛でるべき一編。
すっごくチャーミングな映画なんだけど、スケッチ的なエピソードの羅列というスタイルと、そのエピソードが実は引っ越しする/しないに収斂しすぎている感じが、ちょっとミスマッチな印象。もっとエピソードにバリエーションを持たせて、完全なる群衆劇にしたほうが良かったのでは。
あまり怖くなかったのは、POVという形式と、2つの時系列を並行で描く構成の相性が悪すぎること。物語が一直線&リアルタイムで描くことでPOVは威力を発揮すると思うが、このやり方だとせっかく高まった受け手のエモーションが毎回リセットされてしまう。しかもPOVとしては異例なほどにカットバックを多用しているため、「何かが映り込んでいるかもしれない」という、静謐な恐怖も立ち上がってこない。正直、これは戦略ミスなんではなかろうか。
周りからは絶賛だけど個人的には苦手という監督がいて、僕の場合は何を隠そうウェス・アンダーソン。カキワリのようなセット、平面的な画面構成、セリフ過多なストーリー展開。今作はその極北で、シネフィルぽく褒め称えたいけどむしろ一番キツかった。すいません。
ジョン・カーペンター味溢れる、近未来ディストピア・バイオレンス。権力&コンプラを徹底的に破壊しまくる、実はめっちゃ真面目な映画でした。やや映像のケレン味よりもメッセージ性が先に立ちすぎているような気も。舞台の富士見町って要は不死身ってこと?
『ガリレオ』劇場版は、回を追うごとに映画的ダイナミズムが増して、映画ファンとして見逃せないシリーズだと思ってるんですが、今回の『沈黙のパレード』は正直凡庸な出来かなと。特に抑制が効いていた音楽の使い方がだいぶ過剰になってしまった印象。役者・飯尾和樹の素晴らしさは日本映画の発見かも。
高級レストランを舞台に90分ワンショットで撮影してるんだが、枝葉末節が多すぎてだんだん本筋が何だか分からなくなり、終盤になるに連れてどんどん興味が薄まっていくという、割と残念な作品。思い切ってカメラが追う人物をシェフに絞った方が良かったんでは。
監督ジャウム・コレット=セラは『アンノウン』という傑作を撮ってるけど、今回は大味な作品になってしまった。アダムが正義ではない破壊神って設定も、ロック様が演じるとやっぱヒーロー感を最初から感じちゃう。お話も「ジャスティス・リーグ」既視感あり。あとアメコミ知らなすぎる自分が悪いんですが、アトム・スマッシャーがデッドプールにしか見えなかったことを告白いたします。
まさかこんな分岐宇宙みたいな話とは思わなんだ。説話法としてだいぶトリッキーだし、それが完全にうまくいっているとも正直思わないが、中年男の悲哀という一点において心に染みる。
ケネス・ブラナーの関心はミステリーではなく、シェイクスピア的な恋愛悲劇であることが明確に打ち出された一作。原作よりも、そして1978年度版よりもその要素が強し。観光映画であることも本作のウリなのに色の彩度が高すぎて逆に下品。
『ヴェノム』、『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』に続くソニーズ・スパイダーマン・ユニバース(SSU)第3弾。ヴァンパイア映画への愛とリスペクトが詰め込まれた一作なのだが、致命的なくらいにストーリーが鈍重で、アクションが弱い。ただただ残念。
OTHER RANKINGS
- 1.
- 『リコリス・ピザ』 ポール・トーマス・アンダーソン
- 2.
- 『トップガン マーヴェリック』 ジョセフ・コシンスキー
- 3.
- 『パラレル・マザーズ』 ペドロ・アルモドバル
- 4.
- 『クライ・マッチョ』 クリント・イーストウッド
- 5.
- 『アネット』 レオス・カラックス
- 6.
- 『コーダ あいのうた』 シアン・ヘダー
- 7.
- 『ベルファスト』 ケネス・ブラナー
- 8.
- 『ウエスト・サイド・ストーリー』 スティーヴン・スピルバーグ
- 9.
- 『戦争と女の顔』 カンテミール・バラゴフ
- 10.
- 『あなたの顔の前に』 ホン・サンス
- 1.
- 『ケイコ 目を澄ませて』 三宅唱
- 2.
- 『ある男』 石川慶
- 3.
- 『夜明けまでバス停で』 高橋伴明
- 4.
- 『こちらあみ子』 森井勇佑
- 5.
- 『冬薔薇』 阪本順治
- 6.
- 『土を喰らう十二ヵ月』 中江裕司
- 6.
- 『ハケンアニメ!』 吉野耕平
- 6.
- 『PLAN75』 早川千絵
- 9.
- 『さがす』 片山慎三
- 9.
- 『千夜、一夜』 久保田直
- 1.
- 『パシフィクション』 アルバート・セラ
- 2.
- 『リコリス・ピザ』 ポール・トーマス・アンダーソン
- 3.
- 『NOPE/ノープ』 ジョーダン・ピール
- 4.
- 『EO イーオー』 イエジー・スコリモフスキ
- 5.
- 『偶然と想像』 濱口竜介
- 6.
- 『Bowling Saturne』 パトリシア・マズィ
- 7.
- 『アポロ10号 1/2: 宇宙時代のアドベンチャー』 リチャード・リンクレイター
- 8.
- 『イントロダクション』 ホン・サンス
- 9.
- 『Nobody’s Hero』 アラン・ギロディ
- 10.
- 『Qui A Part Nous』 ホナス・トルエバ
AWARDS
- 作品賞
- 『コーダ あいのうた』 シアン・ヘダー
- 『ベルファスト』 ケネス・ブラナー
- 『ドント・ルック・アップ』 アダム・マッケイ
- 『ドライブ・マイ・カー』 濱口竜介
- 『DUNE/デューン 砂の惑星』 ドゥニ・ヴィルヌーヴ
- 『ドリームプラン』 レイナルド・マーカス・グリーン
- 『リコリス・ピザ』 ポール・トーマス・アンダーソン
- 『ナイトメア・アリー』 ギレルモ・デル・トロ
- 『パワー・オブ・ザ・ドッグ』 ジェーン・カンピオン
- 『ウエスト・サイド・ストーリー』 スティーブン・スピルバーグ
- 監督賞
- ジェーン・カンピオン (『パワー・オブ・ザ・ドッグ』)
- ケネス・ブラナー (『ベルファスト』)
- 濱口竜介 (『ドライブ・マイ・カー』)
- ポール・トーマス・アンダーソン (『リコリス・ピザ』)
- スティーブン・スピルバーグ (『ウエスト・サイド・ストーリー』)
- 主演男優賞
- ウィル・スミス (『ドリームプラン』)
- ハビエル・バルデム (『愛すべき夫妻の秘密』)
- ベネディクト・カンバーバッチ (『パワー・オブ・ザ・ドッグ』)
- アンドリュー・ガーフィールド (『Tick, tick… BOOM! : チック、チック…ブーン!』)
- デンゼル・ワシントン (『マクベス』)
- 主演女優賞
- ジェシカ・チャステイン (『タミー・フェイの瞳』)
- オリヴィア・コールマン (『ロスト・ドーター』)
- ペネロペ・クルス (『パラレル・マザーズ』)
- ニコール・キッドマン (『愛すべき夫妻の秘密』)
- クリステン・スチュワート (『スペンサー ダイアナの決意』)
- 助演男優賞
- トロイ・コッツァー (『コーダ あいのうた』)
- キアラン・ハインズ (『ベルファスト』)
- ジェシー・プレモンス (『パワー・オブ・ザ・ドッグ』)
- J・K・シモンズ (『愛すべき夫妻の秘密』)
- コディ・スミット=マクフィー (『パワー・オブ・ザ・ドッグ』)
- 助演女優賞
- アリアナ・デボーズ (『ウエスト・サイド・ストーリー』)
- ジェシー・バックリー (『ロスト・ドーター』)
- ジュディ・デンチ (『ベルファスト』)
- キルスティン・ダンスト (『パワー・オブ・ザ・ドッグ』)
- アーンジャニュー・エリス (『ドリームプラン』)
- 脚本賞
- ケネス・ブラナー (『ベルファスト』)
- アダム・マッケイ (『ドント・ルック・アップ』)
- ザック・ベイリン (『ドリームプラン』)
- ポール・トーマス・アンダーソン (『リコリス・ピザ』)
- エスキル・フォクト、ヨアキム・トリアー (『わたしは最悪。』)
- 脚色賞
- シアン・ヘダー (『コーダ あいのうた』)
- 濱口竜介、大江崇允 (『ドライブ・マイ・カー』)
- ジョン・スペイツ、ドゥニ・ヴィルヌーヴ、エリック・ロス (『DUNE/デューン 砂の惑星』)
- マギー・ジレンホール (『ロスト・ドーター』)
- ジェーン・カンピオン (『パワー・オブ・ザ・ドッグ』)
- 金熊賞
- 『アルカラス』 カルラ・シモン
- グランプリ
- 『小説家の映画』 ホン・サンス
- 審査員賞
- 『Robe of Gems』 ナタリア・ロペス・ガヤルド
- 監督賞
- クレール・ドゥニ (『愛と激しさをもって』)
- 主演俳優賞
- メルテン・カプタン (『ミセス・クルナス vs. ジョージ・W・ブッシュ』)
- 脚本賞
- ライラ・シュティーラー (『ミセス・クルナス vs. ジョージ・W・ブッシュ』)
- パルムドール
- 『逆転のトライアングル』 リューベン・オストルンド
- グランプリ
- 『CLOSE/クロース』 ルーカス・ドン)
『Stars at Noon』 クレール・ドゥニ - 審査員賞
- 『Le otto montagne』 シャルロッテ・ファンデルメールシュ、フェリックス・バン・ヒュルーニンゲン)
『EO イーオー』 イエジー・スコリモフスキ - 監督賞
- パク・チャヌク (『別れる決心』)
- 男優賞
- ソン・ガンホ (『ベイビー・ブローカー』)
- 女優賞
- ザル・アミル・エブラヒミ (『聖地には蜘蛛が巣を張る』)
- 脚本賞
- タリク・サレ (『Walad Min Al Janna』)
- 金獅子賞
- 『美と殺戮のすべて』 ローラ・ポイトラス
- 審査員グランプリ
- 『サントメール ある被告』 アリス・ディオップ
- 審査員特別賞
- 『ノー・ベアーズ』 ジャファル・パナヒ
- 監督賞
- ルカ・グァダニーノ (『ボーンズ アンド オール』)
- 男優賞
- コリン・ファレル (『イニシェリン島の精霊』)
- 女優賞
- ケイト・ブランシェット (『TAR/ター』)
- 脚本賞
- マーティン・マクドナー (『イニシェリン島の精霊』)
- 2024年、2023年、2022年、2021年、2020年、2019年、2018年、2017年、2016年、2015年、2014年、2013年、2012年、2011年、2010年、2009年、2008年、2007年、2006年、2005年、2004年、2003年、2002年、2001年、2000年、1999年、1998年、1997年、1996年、1995年、1994年、1993年、1992年、1991年、1990年、1989年、1988年、1987年、1986年、1985年、1984年、1983年、1982年、1981年、1980年、1979年、1978年、1977年、1976年、1975年、1974年、1973年、1972年、1971年、1970年、1969年、1968年、1967年、1966年、1965年、1964年、1963年、1962年、1961年、1960年、1959年、1958年、1957年、1956年、1955年、1954年、1953年、1952年、1951年、1950年、1949年、1948年、1947年、1946年、1945年、1944年、1943年、1942年、1941年、1940年、1939年、1938年、1937年、1936年、1935年、1934年、1933年、1932年、1931年、1930年、1929年、1928年、1927年、1926年、1925年、1924年、1923年、1922年、1921年、1920年
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