- 『ドリーミン・ワイルド 名もなき家族のうた』ビル・ポーラッド
- 『ブルータリスト』ブラディ・コーベット
- 『Flow』ギンツ・ジルバロディス
- 『教皇選挙』エドワード・ベルガー
- 『ガール・ウィズ・ニードル』マグヌス・フォン・ホーン
- 『サブスタンス』コラリー・ファルジャ
- 『ノスフェラトゥ』ロバート・エガース
- 『敵』吉田大八
- 『MaXXXine マキシーン』タイ・ウェスト
- 『ファーストキス 1ST KISS』塚原あゆ子
- 『あの歌を憶えている』ミシェル・フランコ
- 『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』ソイ・チェン
- 『アプレンティス ドナルド・トランプの創り方』アリ・アッバシ
- 『We Live in Time この時を生きて』ジョン・クローリー
- 『プロフェッショナル』ロバート・ロレンツ
- 『ファレル・ウィリアムス:ピース・バイ・ピース』モーガン・ネヴィル
- 『野生の島のロズ』クリス・サンダース
- 『ANORA アノーラ』ショーン・ベイカー
- 『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』ジェームズ・マンゴールド
- 『パディントン 消えた黄金郷の秘密』ドゥーガル・ウィルソン
- 『映画を愛する君へ』アルノー・デプレシャン
- 『フライト・リスク』メル・ギブソン
- 『ジュ・テーム、ジュ・テーム』アラン・レネ
- 『サンセット・サンライズ』岸善幸
- 『バッドランズ』テレンス・マリック
- 『エミリア・ペレス』ジャック・オーディアール
- 『悪い夏』城定秀夫
- 『メイデン』グラハム・フォイ
- 『大きな玉ねぎの下で』草野翔吾
- 『機動戦士Gundam GQuuuuuuX Beginning』鶴巻和哉
- 『室町無頼』入江悠
- 『TATAMI』ザーラ・アミル・エブラヒミ、 ガイ・ナッティヴ
- 『ビーキーパー』デヴィッド・エアー
- 『映画ドラえもん のび太の絵世界物語』寺本幸代
- 『ノー・アザー・ランド 故郷は他にない』バーセル・アドラー、ハムダーン・バラール、ユヴァル・アブラハーム、ラヘル・ショール
- 『BETTER MAN/ベター・マン』マイケル・グレイシー
- 『片思い世界』土井裕泰
- 『ベイビーガール』ハリナ・ライン
- 『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』近藤亮太
- 『HERE 時を越えて』ロバート・ゼメキス
- 『ロングレッグス』オズグッド・パーキンス
- 『セプテンバー5』ティム・フェールバウム
- 『聖なるイチジクの種』モハマド・ラスロフ
- 『劇映画 孤独のグルメ』松重豊
- 『ベルサイユのばら』吉村愛
- 『ミッキー17』ポン・ジュノ
- 『雪の花 -ともに在りて-』小泉堯史
- 『ウィキッド ふたりの魔女』ジョン・M・チュウ
- 『知らないカノジョ』三木孝浩
- 『岸辺露伴は動かない 懺悔室』渡辺一貴
- 『プレゼンス 存在』スティーブン・ソダーバーグ
- 『Broken Rage』北野武
- 『嗤う蟲』城定秀夫
- 『ゆきてかへらぬ』根岸吉太郎
- 『おんどりの鳴く前に』パウル・ネゴエスク
- 『リー・ミラー 彼女の瞳が映す世界』エレン・クラス
- 『異端者の家』ブライアン・ウッズ、スコット・ベック
- 『アンデッド/愛しき者の不在』テア・ビスタンダル
- 『シンシン SING SING』グレッグ・クウェダー
- 『ストップモーション』ロバート・モーガン
- 『白雪姫』マーク・ウェブ
- 『グランメゾン・パリ』塚原あゆ子
- 『花まんま』前田哲
- 『366日』新城毅彦
- 『お嬢と番犬くん』小林啓一
- 『マインクラフト ザ・ムービー』ジャレッド・ヘス
- 『ドライブ・イン・マンハッタン』クリスティ・ホール
- 『エマニュエル』オドレイ・ディワン
- 『タイムマシンガール』木場明義
ちょっと信じられないくらいに素晴らしかった。音楽の才能に溢れた弟と凡庸な兄という物語に、ケイシー・アフレック(兄:ベン・アフレック)とボー・ブリッジス(兄:ジェフ・ブリッジス)が出ているだけで、もう落涙。バンドShe & Himのメンバーで、「(500)日のサマー」のサマー役でもお馴染みズーイー・デシャネルも出演。キャスティングが絶妙です。
まさしく巨大な建造物のような作品だった。プロローグ、第一部、第二部、エピローグの四階建建築に、宗教/国家/家族etc.をぶち込んで、トンマナも気にせずカメラワークや音楽を大胆に変えていく。威風堂々たる大作というよりは狂気の怪作。僕は超好きです。
水没した世界を舞台に1匹の黒猫が冒険を繰り広げる大傑作アニメ。太古の地球に迷い込んだような世界観に完全にやられました。「ロボット・ドリームズ」もそうだったがセリフがないことで映像への没入度がマシマシに。これからのスタンダードになるかも。
バチカンという最も保守的な空間を舞台に、多様性という言葉の意味を鋭く問いかける衝撃作。前作『西部戦線異状なし』もそうだったが、エドワード・ベルガー監督は一枚絵としてのビジュアルの強度と、不安煽りまくりの音響の感性が並外れている。全力でオススメ。
『異端の鳥』を思い起こすほどの地獄めぐりっぷりに驚愕し、デンマークで実際に起きた事件を元にしているということを後で知ってさらに驚愕。ドローン系の電子音楽を使うセンスにもシビれる。ダグマーが何度もいう「いいことをしたね」というセリフは、おそらく自分自身を納得させるための言葉なのでは?
女性の商品化という問題を、やりたい放題ボディ・ホラーとしてパワフルに昇華した、2025年屈指の問題作。あからさまな「シャイニング」の引用には笑った。
ムルナウの精神を正統に受け継ぐ映画作家ロバート・エガースによる、堂々たるゴシックホラー。登場人物を真正面に捉えた切り返しショット、シンメトリーな構図にただただ興奮。そして情念と狂気を孕んだリリー=ローズ・デップの艶演。傑作。
筒井康隆の同名小説を吉田大八監督がモノクロで映画化。独居老人の日々をリアリスティックに描く日常系と思いきや、シュールな妄想譚へと急ハンドル。鋭角に物語を切り取っていく吉田大八の並々ならぬ感性と切れ味、そして松尾貴史の異様な存在感!
タイトルにXが三つ並ぶことで『X エックス』シリーズ3作目であることを明示しつつ、テイストは80年代的スプラッターホラー。ヒッチコックやポランスキーの影を感じさせつつ、デパルマを意識した猥雑演出が超楽しい。
ぶったまげた。松たか子と松村北斗が画面に収まっているだけで愛おしすぎるし、相変わらず名言連発の坂元裕二脚本はチャーミングだし、抑制の効いた塚原あゆ子の演出は見事だし、光に溢れた四宮秀俊による撮影は絶品。恋愛映画の新たな傑作。あと、この映画の硯カンナ&硯駈という名前もそうだけど、「カルテット」の巻真紀(まきまき)とか、大豆田とわ子とか、坂元裕二作品におけるキャラの秀逸な名前問題は今後も考えていきたいテーマ。
死屍累々の超理不尽ムービー「ニューオーダー」の監督ミシェル・フランコの新作とあって身構えていたら、容赦ない冷徹さはありつつも滋味深い暖かさもミックスされた素晴らしいヒューマンドラマ。ミシェル・フランコは次回作が最も気になるフィルムメーカーになった。
復讐×友情がスパークする最高の香港アクションなんで全人類見てほしい。九龍城砦で男たちが覇権を争うというプロットはハイロー感あるし、谷垣健治によるアクション演出は爽快無比。御年73歳サモハンも普通に強い。
繊細でウブな若者が、悪名高き弁護士ロイ・コーンから「勝つための3つのルール」を学び、我々の知っているドナルド・トランプへと変貌していく。自らをKILLER(殺人者)と呼ぶ男が世界から耳目を集めるという展開は、『聖地には蜘蛛が巣を張る』と同じ。80年代ドキュメンタリーのようなラフな映像の切り取り方に、アリ・アッバシの天才的センスを感じる。『ボーダー 二つの世界』、母国イランを舞台にした『聖地には蜘蛛が巣を張る』ときて、『THE LAST OF US』『アプレンティス ドナルド・トランプの創り方』とアメリカを舞台にした作品を手がけたのは、アリ・アッバシがこの国を「死にゆく超大国」と捉えたからなのか?
時系列をシャッフルさせた構成、イギリス映画らしいユーモア感覚、そして主演の二人の存在感が良き。フローレンス・ピューの裸がガンガン出てくるが、一緒にお風呂に入ったり、出産を迎えたりすることで、その肉体が母親として、セクシャルなものからより神々しいものに変化していくのも印象的。
これ結構オススメ。「誘拐の掟」とか「ラン・オールナイト」とか“地味だけどめっちゃ面白いリーアム・ニーソン映画”の最新ver。イーストウッドと長年タッグを組んできたロバート・ロレンツが監督をしているだけあって、話も人物造形もイーストウッドみがある。キアラン・ハインズやコルム・ミーニーなど、渋いおじいちゃんのご尊顔が楽しめるのもマル。
既存の音源を組み合わせるヒップホップと、ピースを組み立てるレゴの相性が抜群。インタビューやPVやTV出演のヒトコマを入れる伝記映画の王道をやればやるほど、レゴ映画として面白い。音が光として見える共感覚をまんまレゴでビジュアライズしているのも楽しい。ファレル・ウィリアムスの戦略勝ち。スヌープ・ドッグとかケンドリック・ラマーとかジャスティン・ティンバーレイクがレゴ出演しているのも面白いけど、びっくりしたのが監督がドキュメンタリー映画「バックコーラスの歌姫たち」のモーガン・ネヴィルであること。マジで今後ミュージシャン伝記レゴ映画がスタンダードになるかも。
心を持たないロボットのロズに愛情が生まれるというプロットに新奇さはないものの、何よりもまずアクション映画としてめちゃめちゃ優秀。手描き風のキャラクターたちが躍動する絵を見ているだけで恍惚。ルピタ・ニョンゴ、ペドロ・パスカル、マーク・ハミルと声優にスター・ウォーズ勢が妙に多いのは何で?
緩急つけたショーン・ベイカーの話芸に感嘆しきり。あるシークエンスでは細かなエディットで心の高揚を描き、あるシークエンスではたっぷり尺をとって爆笑をかっさらう。そして主役を演じるマイキー・マディソンのチャームっぷり!いうならば、クラブで踊りまくるパーティ感と朝を迎えてダウナーになるアフターパーティ感の二部構成みたいな映画で(真ん中に強烈なシークエンスが挟まってるけど)、むしろアフターパーティが物語のメインでチルな感じにもならないのが、すっごいショーン・ベイカーっぽい。
音楽を定義づけることを避け、常に革新を目指し、Like a complete unknownでLike a rolling stoneを体現するボブ・ディランの半生記。ニューポート・フォーク・フェスティバルの演奏をはじめ、想像以上に音楽映画だった。エル・ファニング演じるシルヴィが、“どこからボブ・ディランを眺めているか”に着目して観ると切なさが倍増する。
伏線回収、言葉遊び、キャラクターの描き込み、全てにおいてシナリオが巧み。なぜパディントンがマーマレード好きなのかということまで踏み込んで、最後はきっちり泣かせてくる。見事です。
映画を解剖学的に解析するのではなく、思い出語りに終始するでもなく、アンドレ・バザンの言葉を引用しつつ映画と人生の意味を見出していく、アルノー・デプレシャン監督によるシネマ・エッセイ。デプレシャンの後ろ姿がゴダールそっくりだった!
メルギブ兄貴、これめっちゃ面白いですやん。航空機に限定した密室空間、電話のみで黒幕を暴くサスペンス、ハゲ散らかしたマーク・ウォールバーグの悪役っぷり、そして溢れる午後ロー感。こういう映画が見たくてこちとら金払っとるんですわ。
「エターナル・サンシャイン」に影響を与えたアラン・レネのSFラブストーリーってどないやねんと思ってたら、パッチワーク編集による散文詩感覚と、反復表現によって愛の喪失を突きつける、強烈な映像体験だった。『二十四時間の情事』や『去年マリエンバートで』にも通底する、時間の失調感覚。タイムトラベルものという意味では、60年代フランスのかなりエッジーな『ファーストキス 1ST KISS』という言い方もできるかも(できない)。
「ふてほど」もそうだったが、宮藤官九郎は保守/革新、古いもの/新しいものという二項対立を彼なりに“止揚”するアウフヘーベンを志向している気がしているんだが、この映画もまた南三陸を舞台に異なる価値観を止揚する作品だった。
テレンス・マリック監督が1973年に発表した長編初監督作。これはもうアメリカ版『青春の殺人者』。
麻薬王がトランスジェンダー女性になって生まれ変わろうとするが、結局過去と自分自身からは逃れられないという、若干レ・ミゼラブルみのある話。そう考えるとミュージカル仕立てなのも納得。抜群に面白いけど、後半の展開と人物造形が少々モヤる。
北村匠海も河合優実も木南晴夏も、みんなみんな虚な目をした闇堕ち転落ドラマ。なのに終盤では笑うしかない畳みかけもあって、感情グッチャグチャ。エグ味たっぷり演出も良き。監督:城定秀夫×脚本:向井康介コンビ、最高の組み合わせなのでは。そして竹原ピストル、今年だけで他に「サンセット・サンライズ」と「ファーストキス 1ST KISS」にも出演していて、いよいよ日本映画界の重要人物になってきた。伊藤万理華× 河合優実の「サマーフィルムにのって」コンビ共演も嬉しい。
コダックの16ミリフィルムで紡がれる、喪失感を抱えた少年少女の物語。カナダの俊英グラハム・フォイ監督の才能は本物。
ユー・ガット・メール的すれ違いラブコメ。脚本がめっちゃ良くできてる。爆風スランプの小ネタをさりげなく挟み込む手腕も見事。「恋は光」もそうだったが、神尾楓珠は”面倒臭いけど可愛らしい男子”やらせたら日本一なんじゃないか。
ファーストとZと逆襲のシャアくらいしか見ていないガンダム弱者の僕が、ここ数年劇場で目撃した映画の中でもトップクラスにびっくりしたんだから、ファンは悶絶するはず。あとこれってガイナックスのメタファーって理解で大丈夫すか。
こんなにマカロニ・ウェスタン調の娯楽時代劇だったとは。才蔵(長尾謙杜)の特訓シーンが初期ジャッキー・チェン映画のような趣きで楽しい。ラストになって『十一人の賊軍』ばりの集団抗争時代劇へとなだれ込む展開も良き。
タイトルからしててっきり日本家屋で巻き起こるホラーかと思ってたら、イラン女子柔道のお話で、しかも敵対国イスラエルとの対戦を避けるため棄権するよう命じられるという、ポリティカルサスペンスみもあるストーリー。スタンダードサイズの狭い画角が、キャラの鬱屈とした感情を映し出している。
丸腰のジェイソン・ステイサムが敵のアジトを正面突破して、超絶格闘スキルで皆殺しにする理不尽アクション。監督がデヴィッド・エアーだけあって意外とゴア描写もあり。
全クリエイター必見の映画だった。自分の作品に価値を見出すことができなくても世界を変える可能性はあるというポジティブな創作論、そして逆に想像力が世界を闇に覆い尽くすこともあるという警告。とんでもなく良く出来てる。
ヨルダン川西岸のパレスチナ人居住地で、イスラエル軍が次々に建物を破壊し、パレスチナ人を強制移動していくさまを捉えたドキュメンタリー。観ているうちにどんどん神経がすり減って、どんどん胸が痛くなる。つまり必見。
元テイク・ザットのロビー・ウィリアムズの半生を描いた、いわゆる“ポップスターの栄光と転落”フォーマット映画だが、ある奇想天外な仕掛けによって主人公がどう見られているか/どう見ているかを外面化していて、エグみのあるハードエッジなエンタメに。見応え十分。
文字通り片思いの世界を描いたピュアストーリー。 50代後半を迎えた坂元裕二が、ここまで透徹な物語を紡ぐとは。そして『阿修羅のごとく』『ゆきてかへらぬ』、そしてドラマ『クジャクのダンス、誰が見た?』と、2025年広瀬すずのスタートダッシュが凄すぎる。
一見支配/被支配を描いたエロティック・ムービーのようでいて、実は男性が勝手に抱いている”女性の欲望の在り方”をブチ壊す映画。挑発的な筆致で描かれたフェミニズム映画なのでは。
『イシナガキクエを探しています』の近藤亮太監督だけあって、凍りつくような恐怖体験を味わわせて頂きました。ホラーの本質は「どう見せるか」ではなく「どう見せないか」であることを熟知した作り手の知性を感じる。
固定カメラをある場所に据え置いて、太古の時代からはるか未来までをアットランダムに時制を移し替えながら描く超実験作。監督ロバート・ゼメキス、脚本エリック・ロス、主演トム・ハンクス&ロビン・ライトという『フォレスト・ガンプ 一期一会』の座組で、こんなにアバンギャルドな映画を作ってしまうとは。
すごく変なバランスのすごく禍々しい映画。構造的には『羊たちの沈黙』だけど、『マインドハンター』や『トゥルー・ディテクティブ』の流れを汲んだ、アメリカの土着的暗部を炙り出す系でもある。しかも監督がアンソニー・パーキンスの息子オズって!
「黒い九月事件」をテレビ放送局のABC、しかも報道局ではなくスポーツ局スタッフが右往左往しながらライブ中継するさまを描く「お仕事映画」でありつつ、報道とモラルという問題にも踏み込んだ意欲作。報道偏重主義を相対化させる眼差しがない(キャラクターがいない)ことで、鑑賞者の倫理がより問われる。ナチスの悪夢があるために、ドイツが真正面からテロリズムに対抗できない描写が生々しく響く。
強権的・抑圧的な家父長制を、圧政を敷くイランの実情と重ね合わせて描く社会派ドラマ…と思ったら、最後は「シャイニング」みたいなスリラーに変貌。急激な味変が楽しめるし、想像以上にエンタメ映画だった
徹底して筋のあるドラマから逸脱することで唯一無二のタッチを獲得していたドラマ版に比べ、こっちは筋あり伏線回収あり。それでもファンを納得させるテイストに仕上げてるのが流石。韓国入国審査官を演じるユ・ジェミョンとのやりとりが面白すぎ。監督・脚本・主演を務めた松重豊は当初ポン・ジュノに監督オファーしたらしいけど、逆にいうと松重豊はポン・ジュノ的演出を意識したのかも(シュールなコメディ展開はちょっとだけ似てる)。
原作漫画もTVアニメも見ないまま今日まで生きてしまいました。いやー堂々たる愛と哀しみの一大歴史ロマンですね。男装の麗人オスカルが血の通ったひとりの女性として丁寧に描かれていることに感動。MAPPAの作画も流石。
体制vs反体制という『スノーピアサー』的モチーフと、謎の怪物という『グエムル-漢江の怪物-』的モチーフと、子に対する母の無償の愛という『母なる証明』的モチーフを全て注ぎ込んでコメディで味付けしたような、ポン・ジュノの集大成的作品。
引きの画から寄りの画にぬるっと変わるとか、少々説明調な台詞とか、滲み出る黒澤明的作劇っぽさ。
アリアナ・グランデが魔女の才能ゼロで好感度ばかり気にするあざと可愛い系を演じるとは。歌はもちろん、現代的なテーマ性といいダイナミックな演出といい、これぞハリウッド映画。
ファンタジック・ラブストーリーの名手・三木孝浩が、その手腕を存分に発揮した一作。「もしあの時君と出会っていなかったら…」というifもしも形式をマルチバース的として構築し、自分がこの世界で生きる意味を捉え直させるプロットに昇華。miletがとにかくキュートすぎる。
漫画の中でも指折りに変なエピソードを、よくぞ映像化したものだと感動。ダッチアングルとか仰角ショットとか実相寺昭雄みのある構図もキレキレだし、高橋一生は相変わらずカッコいい。絵として眼福な一本。
全編が幽霊視点という発想も凄いが、監督スティーブン・ソダーバーグ、脚本デヴィッド・コープという組み合わせも興味深し。ホラーよりもエモに力点を置いた理知的な作品。観終わったあと、この映画の真のテーマが浮かび上がる構成も巧み。
文字通り「アウトレイジ」を破壊する映画だった。後半はベタとメタの乱れ撃ち。デヴィッド・リンチ的空間(バー)があったかと思えば、唐突なエイリアン2オマージュもあり。金があればあるほどやりたい放題。たけし×浅野忠信× 大森南朋のビジュアルバム。
かなりストレートな村ホラー。警察官を演じる中山功太がいい味を出してます。
広瀬すずが柿を食べるシーンが妙に色っぽくて、思わず『ツィゴイネルワイゼン』で大楠道代が水桃を食べるシーンを思い出してしまったのだが、これ脚本が田中陽造だったのかいな。昭和文芸大作の匂いをきっちりとかぐわせる根岸吉太郎節も健在。そして、何よりも広瀬すず!ふだん彼女は鈴の鳴るような可愛らしい声なのに、明らかに語尾を少し低く、そしてちょっと湿らせたような発声にすることで、この時代の女性の色香を<音>でコントロールしている。「阿修羅のごとく」でもその片鱗を見せていたが、役者として本当に凄い。
これはもうルーマニア産の『コップランド』。
20世紀を代表する報道写真家リー・ミラーをケイト・ウィンスレットが熱演。ナチスドイツの暴力と男性の性加害を同時並行で描きつつ、最後は戦争の悲劇を目の当たりにしていくという構成に妙味あり。マリオン・コティヤール、アレクサンダー・スカルスガルドと共演陣が異様に豪華。
これは観終わって皆と語り合いたい作品。神学論争の果てに宗教の意味を問うスリラーにして、芯を食ったポップカルチャー論でもある。
ドキュメンタリー的カメラワーク&構図で、キャラクターの内面に深く分けいる北欧ホラー。世界が少しずつ不穏な状況に包み込まれていく描写が懇切丁寧。原作者が「ぼくのエリ 200歳の少女」、『ボーダー 二つの世界』のヨン・アイビデ・リンドクビストと知り妙に納得。
ヤン・シュヴァンクマイエルのクレイアニメ + デイヴィッド・リンチの初期作品 + ロマン・ポランスキーの「反撥」のような、奇妙な手触りのニューロティック・ホラー。あらゆる創造的行為は、すべからく狂気を孕んでいることを実感させる。
7人のこびとがあまり物語に絡んでこないし、白雪姫が毒林檎で命を落とすお馴染みの展開も妙に淡白なので、彼らの哀しみがいまひとつ伝わってこない。”喪失”ってマーク・ウェブ監督のお家芸だったはずなのに、これじゃあ力量をさっぱり発揮できん。勿体な!
ドラマ・シリーズを追ってきた者からすると、一見傲岸不遜に見える尾花夏樹=キムタクは実は誰よりもチームの和を重んじていたはずなのに、パリに行ったら周りが全然見えなくなっている奴に激変していてビックリ。要は2時間かけて本来の自分を取り戻す話だった。
両親を失った兄がひとりで妹を育ててきたという設定だったり、オール阪神巨人が俳優として出てきたり、ナニワがすぎる人情噺かと思ったら(実際そうなのだが)、それを上回るくらいに狂気に満ちたカオス映画でびっくり。カラスと会話できる大学教授役の鈴鹿央士が、ハートウォーミングな空気を全てデイヴィッド・リンチ的ウィアード空間へと変貌させる。それでいて要所では泣かせる場面があったりして、情緒ぐっちゃぐっちゃ。ラストの結婚式のスピーチで、兄の言葉に涙をぬぐい続ける有村架純のバストショットを、長回しで捉える演出はとても良かった。
沖縄が舞台ということもあり、青春のキラキラがホントに映像として煌めいていて、僕のような“こじらせアオハル経験者”には目が痛い。天下無双のキュートっぷりを発揮する上白石萌歌には、あと20年くらい学生役をやってほしい。
ヤクザの家に生まれた高校生・福本莉子と、ボディガードとして彼女を身をもって守るジェシーの関係が、完全に『ターミネーター2』のジョン・コナーとシュワちゃんでした(サングラスをかけたジェシーのシュワルツェネッガー感が凄かった)。
とどのつまり、『ジュマンジ』+『ロード・オブ・ザ・リング』+『スクール・オブ・ロック』。ジャック・ブラック、尊い。ジェイソン・モモア、可愛い。
ダコタ・ジョンソンがタクシー運転手のショーン・ペンに自分の秘密を打ち明ける密室劇で、要は移動式懺悔室で告解する話。ショーン・ペンはセラピストであり父親であり神父でもある訳で、それはそれで強大な父権主義にも見えてしまった
大傑作『あのこと』の監督オドレイ・ディワンが、あの『エマニュエル夫人』をリメイク。“資本主義的構造と支配からの解放”というテーマで再解釈し、女性の身体をソフトポルノ的に消費するという眼差しからも解放させているあたりに、監督の強い志を感じる。だがちょっと語りたいテーマに物語が流れすぎてしまっている印象。
ビックリすると、ちょっとだけ過去にタイムスリップ。自分の意思ではなく、体質で過去に飛んでしまうという発想が超トリッキー。実はシスターフッド/女性の成長の物語。主役を演じる葵うたのが漫画みたいに表情豊かで、ビックリ顔がめっちゃ絵になる。
AWARDS
- 作品賞
- 『ANORA アノーラ』 ショーン・ベイカー
- 『ブルータリスト』 ブラディ・コーベット
- 『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』 ジェームズ・マンゴールド
- 『教皇選挙』 エドワード・ベルガー
- 『デューン 砂の惑星 PART2』 ドゥニ・ヴィルヌーヴ
- 『エミリア・ペレス』 ジャック・オーディアール
- 『アイム・スティル・ヒア』 ウォルター・サレス
- 『ニッケル・ボーイズ』 ラメル・ロス
- 『サブスタンス』 コラリー・ファルジャ
- 『ウィキッド ふたりの魔女』 ジョン・M・チュウ
- 監督賞
- ショーン・ベイカー (『ANORA アノーラ』)
- ブラディ・コーベット (『ブルータリスト』)
- ジェームズ・マンゴールド (『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』)
- ジャック・オーディアール (『エミリア・ペレス』)
- コラリー・ファルジャ (『サブスタンス』)
- 主演男優賞
- エイドリアン・ブロディ (『ブルータリスト』)
- ティモシー・シャラメ (『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』)
- コールマン・ドミンゴ (『SING SING シンシン』 )
- レイフ・ファインズ (『教皇選挙』)
- セバスチャン・スタン (『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』)
- 主演女優賞
- マイキー・マディソン (『ANORA アノーラ』)
- シンシア・エリヴォ (『ウィキッド ふたりの魔女』)
- カルラ・ソフィア・ガスコン (『エミリア・ペレス)
- デミ・ムーア (『サブスタンス』)
- フェルナンダ・トーレス (『I’m Still Here』)
- 助演男優賞
- キーラン・カルキン (『リアル・ペイン~心の旅~』)
- ユーリー・ボリソフ (『ANORA アノーラ』)
- エドワード・ノートン (『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』)
- ガイ・ピアース (『ブルータリスト』)
- ジェレミー・ストロング (『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』)
- 助演女優賞
- ゾーイ・サルダナ (『エミリア・ペレス』)
- モニカ・バルバロ (『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』)
- アリアナ・グランデ (『ウィキッド ふたりの魔女』)
- フェリシティ・ジョーンズ (『ブルータリスト』)
- イザベラ・ロッセリーニ (『教皇選挙』)
- 脚本賞
- ショーン・ベイカー (『ANORA アノーラ』)
- ブラディ・コーベット、モナ・ファストヴォルド (『ブルータリスト』)
- ジェシー・アイゼンバーグ (『リアル・ペイン~心の旅~』)
- モリッツ・バインダー、ティム・フェールバウム、アレックス・デイヴィッド (『セプテンバー5』)
- コラリー・ファルジャ (『サブスタンス』)
- 脚色賞
- ピーター・ストローハン (『教皇選挙』)
- ジェームズ・マンゴールド、ジェイ・コックス (『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』)
- ジャック・オーディアール、トーマス・ビデガン、レア・ミシウス、ニコラ・リヴェッキ (『エミリア・ペレス』)
- ラメル・ロス、ジョスリン・バーンズ (『ニッケル・ボーイズ』)
- グレッグ・クウェダー、クリント・ベントレー、クラレンス・マクリン (『SING SING シンシン』 )
- 長編アニメ賞
- 『Flow』 ギンツ・ジルバロディス
- 『インサイド・ヘッド2』 ケルシー・マン
- 『かたつむりのメモワール』 アダム・エリオット
- 『ウォレスとグルミット 仕返しなんてコワくない!』 ニック・パーク マーリン・クロシンガム
- 『野生の島のロズ』 クリス・サンダース
- 国際長編賞
- 『アイム・スティル・ヒア』 ウォルター・サレス
- 『エミリア・ペレス』 ジャック・オーディアール
- 『Flow』 ギンツ・ジルバロディス
- 『ガール・ウィズ・ニードル』 マグヌス・フォン・ホーン
- 『聖なるイチジクの種』 モハマド・ラスロフ
- 作曲賞
- 『ブルータリスト』 ダニエル・ブランバーグ
- 『教皇選挙』 フォルカー・ベルテルマン
- 『エミリア・ペレス』 クレマン・デュコル
- 『ウィキッド ふたりの魔女』 ジョン・パウエル、スティーヴン・シュワルツ
- 『野生の島のロズ』 クリス・バワーズ
- 撮影賞
- 『ブルータリスト』 ロル・クローリー
- 『デューン 砂の惑星 PART2』 グリーグ・フレイザー
- 『エミリア・ペレス』 ポール・ギローム
- 『Maria』 エドワード・ラックマン
- 『ノスフェラトゥ』 ジェアリン・ブラシュケ
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