混沌とグルーヴ、プリミティブな覚醒
『Exit Planet Dust』(1995年)と『Dig Your Own Hole』(1997年)が粗削りなロックとクラブミュージックのエネルギーを、『Surrender』(1999年)ではゲスト・ボーカルとの邂逅によってキャッチーでポップなダンス・アンセムを追求したのに対し、この4thアルバム『Come With Us』(2002年)はスペーシーでトライバルなサウンドが特徴的だ。
ザ・ヴァーヴ(The Verve)の元ボーカリストであるリチャード・アシュクロフトや、SSWベス・オートンがゲストとして参加しているが、全体的にはインスト曲メイン。
オープニング・トラック「Come With Us」で、「Behold, they’re coming back(見よ、彼らが戻ってくるぞよ!)」という、昔のB級SF映画のナレーションみたいな物々しいボーカルサンプルで幕を開けたあと、M-2「It Began in Afrika」では、強烈なアフロ・ビート&複雑に絡み合うパーカッシブなリズムが流れ込んでくる。
これはもう、彼らなりのワールド・ミュージック宣言と捉えてさしつかえないのではないか。M-9「Pioneer Skies」は古の儀式と近未来的なサウンドが融合したかのような雰囲気あるし、M-10「The Test」のイントロなんて、密教みたいなニューエイジ・ミュージックだし。
フロア仕様のクラブ・ミュージックから、プリミティブなリズムへの回帰。細かく重ねられた音のレイヤーのその奥に、太くて力強いリズムセクションが配置されていることで、僕たちリスナーはビートそのものをはっきりと感じることができる。ファズの効いた音色や、ドリーム・ポップ、シューゲイズにも通じるような浮遊感のあるサウンドが、それを柔らかく包み込む。はい、名盤だと思います。
ちなみに自分、ミシェル・ゴンドリーが監督した「Star Guitar」のMVが大好きでして(スーパー有名作品だから、そんな方々は世界中にゴマンといるでしょうが)、列車の窓から見える風景が音楽のリズムと完全同期して変化するアイディアは、いつ観ても猛烈に感動する。観てない人は可及的速やかにチェックしてくだされ。
- アーティスト/ケミカル・ブラザーズ
- 発売年/2002年
- レーベル/Freestyle Dust
- Come With Us
- It Began In Afrika
- Galaxy Bounce
- Star Guitar
- Hoops
- My Elastic Eye
- The State We're In(feat. ベス・オートン)
- Denmark
- Pioneer Skies
- The Test(feat. リチャード・アシュクロフト)

