ロンドン発、ボサノヴァとR&Bが織りなす至極のベッドルームポップ
オバマ元大統領がプレイリストに入れるほどのお気に入りとして知られる、イギリス・ウェストロンドン出身のSSWホープ・タラ。そんな彼女の待望のデビュー・アルバム『Hope Handwritten』(2025年)が遂にリリースされた。
14歳で独学でギターを習得し、ローリン・ヒルやエリカ・バドゥ、ディアンジェロといったソウルとR&Bのレジェンドたちに影響を受けた彼女の音楽は、ボサノヴァ、ジャズ、ソウルを軽やかに横断するベッドルームポップ。
近年のオリヴィア・ディーンやメレバ、ジェネヴィーヴといったアーティストたちとも通じる、繊細で親密な空気感を持つサウンドが特徴的だ。
家族から離れ、初めてLAで過ごす孤独と不安を歌ったM-1「Growing Pains」、自己肯定と自信をテーマにしたM-3「Lights Camera Action」、愛と依存の境界線を探るM-4「Magic or Medicine」、再生と希望を描いたM-9「Phoenix」、アルバムの締めくくりとして、心の鼓動をテーマにしたM-16「Heartbeat」…。
特にこのアルバムのハイライトといえるのは、M-8「Survival」だろう。彼女が得意とするボサノヴァリズムを土台にしつつ、繊細な楽器アレンジとヴォーカルで、内面の強さを描写したトラックだ。
ちなみに僕のベストトラックは、M-11「Lose My Mind」。いやーめっちゃいい曲ですよね。サビの「My Mind、My Mind、My Mind…」を聴くたび、心をもっていかれてしまう。
アルバム全体を通じて、ナイロン弦ギターの優しいアルペジオが心地よく響き、しなやかなスウィング感のリズムが軽やかな浮遊感を演出する。特にボサノヴァの特徴的なシンコペーションは、4/4拍子に留まらない独特のグルーヴを生み出し、リスナーのハートをゆったりと包み込む。淡いシンセやパーカッションが過剰な装飾をせず、自然体で曲の中に溶け込んでいる点も秀逸だ。
ヴォーカルは驚くほど素直で柔らかい。過度なリバーブやディレイを控えたことで、彼女の想いがダイレクトに伝わってくる。飾り気のない言葉で紡がれる歌詞が、親密さをさらに深めている。
ベッドルームポップというジャンルは、かつてのインディーシーンから進化し、個人の感情や日常の断片を繊細に描き出すことに特化した音楽スタイルだ。彼女の作品は、そのジャンルの魅力を余すところなく表現しつつ、伝統的なソウルやジャズのエッセンスを巧みに融合させている。
次世代のシンガーソングライターの中でも、特に異彩を放つ才能ホープ・タラ。個人的にもこのアルバムは2025年のヘビロテ盤である。
- アーティスト/Hope Tala
- 発売年/2025年
- レーベル/PMR Records
- Growing Pains (Prologue)
- Jumping the Gun
- Lights Camera Action
- Magic or Medicine
- Breaking Isn’t What a Heart Is For
- I Can’t Even Cry
- Thank Goodness
- Survival
- Phoenix
- Fall Too Hard
- Lose My Mind
- Bad Love God
- A Story To Tell/Where I Begin
- Miracle
- Shiver
- Heartbeat (the end)

