女の生理を鋭利なナイフで切り刻む、“歌舞伎町の女王”の降臨
椎名林檎って可愛いよね。顔もイイし、巻舌のヴォーカルもいいし、胸のカタチだっていい(と思う)。
自ら新宿系自作自演屋と名乗る歌舞伎町の女王は、’80年代に戸川純が牽引した寺山修司的世界をポップに踏襲した。かつてアイドルとしてオーディションを受けた(本人は忘れたい過去でしょうが)ほどのルックスを合わせ持つ女王サマは、世のM男を魅了してやまないのである。
衝撃的なデビューシングル『ここでキスして。」で、イタイがロリな可愛さで世間を騙くらかし、てっきり川本真琴と同じレールを歩むのかと思っていたが、処女作『無罪モラトリアム』を聴いて悶絶した。
女の生理を切り刻むかのような、手首をカッターで切りかねない「不安定」な歌詞世界、ナイフのように研ぎすまされた音楽。
トム・ヨークと浅井健一をフェイバリット・アーティストと公言し、オタクでネクラな文学系をもファンにとりこむ彼女は、まさに現代のニナ・ハーゲンだ。
若くして結婚、出産、音楽活動の一時停止と今までのプロフィールは「歌舞伎町の女王」としていい感じ。
あとは離婚、ママさんロッカーとしての復活、子供と親子二代でのステージなんていうストーリーが描けたら完璧だろう(今のところは『若くして離婚』までピッタリ)。
でも素顔の彼女って、実は普通の可愛い女のコじゃないかなって気もする。笑顔で僕らにくったくのないVサインをしている椎名林檎が、僕にとってはすごくリアルなのだ。
至高のカバーアルバム『唄い手冥利~其ノ壱』(2002年)の至高の名曲『木綿のハンカチーフ』において、彼女以外に「可愛らしさ」と「刹那さ」を同時に表現し得るアーティストが他にいるだろうか?
僕は正直言って、最近の椎名林檎は好きではない。何と言うか、椎名林檎が椎名林檎の模倣生産をしているような気がしてならないのだ。しかし、『無罪モラトリアム』はいまだ圧倒的な高みにある。
『ここキス』を何度もリピート再生しては悶絶する権利を、僕たちはまだ手に入れているのだ。
- アーティスト/椎名林檎
- 発売年/1999年
- レーベル/東芝EMI
- 正しい街
- 歌舞伎町の女王
- 丸の内サディスティック
- 幸福論(悦楽編)
- 茜さす 帰路照らされど…
- シドと白昼夢
- 積木遊び
- ここでキスして。
- 同じ夜
- 警告
- モルヒネ
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