テレビ東京ブロードバンドの100%出資会社として設立されたレーベル、「Traffic」への移籍第一弾アルバムでもある。社長を務めるのは、V2レコーズのジェネラルマネージャーとして辣腕をふるってきた中村周市氏。
エイジアン・ダブ・ファウンデーション、アンクル、ジ・オーブといった一癖も二癖もあるミュージシャンが名前を連ねているとあって、今後の展開がなかなか楽しみなレーベルなり。
さてこの『Oblivion With Bells』(2007年)、何でも200曲にも及ぶデモ音源中から厳選に厳選を重ね、おまけにU2のラリー・ミューレン・ジュニアや、ブライアン・イーノまでもが選曲に携わって、最終的に12曲を絞り込んだというのだから、気合いの入り方はハンパなし。
世間的には、「圧倒的スケールの壮大なアート・アルバム」として人口に膾炙しているようだが、個々の楽曲のクオリティーはハイレベルながらも、むしろ全体的には半径数メートルのミニマルな世界で共振するかのような、慎ましやかなトラックが全体を占めている感がある。
オープニングを飾る『Crocodile』は、トライバル・ハウスのビートがリスナーの耳に心地よく響きわたる、いかにもアンダーワールドらしいナンバーだが、ダウン・テンポのチル・アウト系トラックが多いことにもそれは顕著だ。
シンセサイザーによるシンフォニー・サウンドが、深い海の底でたゆたうようなフィーリングを体感させるM-4『To Heal』、ダークでインダストリアルな音響設計のM-8『Cuddle Bunny vs Celtic Villages』、生ピアノの旋律がストレートに胸に突き刺さるM-11『Good Morning Cockerel』。
『Dubnobasswithmyheadman」(1993年)や『Beaucoup Fish』(1999年)の頃の、アッパーなダンス・ミュージックが好みのリスナーには、『Oblivion With Bells』は喉越しが良すぎて、ひっかかりがないことが不満の向きもあるだろう。
そういう意味では、このアルバムはフロアー向きの作品ではないかもしれない。しかしアンダーワールドは、確実にサウンドのテクスチャーを深化させている。
それはリスナーをフィジカルに作用させるのではなく、体内の奥底にそっと入り込んで、バイオロジカルに覚醒させるのだ。
- アーティスト/Underworld
- 発売年/2007年
- レーベル/Traffic
- Crocodile
- Beautiful Burnout
- Holding The Moth
- To Heal
- Ring Road
- Glam Bucket
- Boy, Boy, Boy
- Cuddle BUnny vs. The Celtic Villages
- Faxed Invitation
- Good Morning Cockerel
- Best Mamgu Ever
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