動物たちが擬人化された、どこかの国のどこかの街。一匹の犬=ドッグが注文書をポストに投函すると、やがてロボットが配達されてくる。バラバラのパーツをIKEAの家具みたいに組み立てて、おともだちロボットの完成。一緒にポップコーンをつくったり、映画を見たり、海水浴に行ったり、楽しい日々が過ぎていく。サラ・バロンによるグラフィック・ノベル「ロボット・ドリームズ」は、そんな風にして物語が始まる。心躍る軽快なタッチで、思わずパラパラと読み進めてしまう。
だがアニメーション版『ロボット・ドリームズ』(23)のオープニングは、お世辞にも軽快とは言い難い。深夜のニューヨーク・マンハッタン。真っ暗な部屋で、たったひとりテレビゲームに興じるドッグ。虚ろな目で番組をザッピング。電子レンジのチンという音が虚空にこだまする。テレビのブラウン管に反射する生気の抜けた表情。『アパートの鍵貸します』(60)のジャック・レモンみたいに、そこには都市生活者の孤独が映し出されている。
やがて、「ARE YOU ALONE?」というロボット通販のテレビCMに惹きつけられるドッグ。さっそく購入し、ロボットを組み立てると、セントラル・パークでローラースケートをしたり、ゴンドラを漕いでのんびりしたりして、グラフィック・ノベルと同じような楽しい日々が描かれていく。「都市生活者の孤独」という前フリが効いているからこそ、ドッグの喜びが何十倍にもなって、観ている我々に響いてくるのだ。そして80年代ニューヨークという舞台が、心のときめきをさらに際立たせてくれる。
ぜひご一読ください!
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