『殺しの分け前/ポイント・ブランク』死と時間と色彩が混濁する前衛ノワール」という考察/解説レビューをCINEMOREに寄稿しました。
「映画を撮っているときは、“死は存在しない”と自分に言い聞かせることができるんだ」(*1)。
『脱出』(72)、『未来惑星ザルドス』(74)、『エクソシスト2』(77)などで知られる異能の映画作家ジョン・ブアマンは、死から逃れるように作品を撮り続けてきた。虚構の世界に身を浸すことで、世の理(ことわり)から目を背けてきた。その精神性は、アウトプットされた映画にもしっかりと染み込んでいる。特に、彼の劇場映画2作目に当たる『殺しの分け前/ポイント・ブランク』(67)は、まるで呪われた夢のなかを死者が彷徨っているかのような、前衛フィルム・ノワールだ。
突如銃声が鳴り響き、男が倒れるファースト・カット。その男ウォーカー(リー・マーヴィン)は、親友のリース(ジョン・ヴァーノン)にそそのかされ、犯罪組織の取引を襲撃して大金を強奪。だが突然の裏切りにあい、銃弾を浴びせられてしまう。こう書くと何の変哲もない描写のようだが、①アルカトラズ刑務所跡で犯罪組織を襲撃するシーン、②謎のパーティのさなか「助けてくれ!」とウォーカーを押し倒してリースが懇願するシーンが高速カットバックされるという、時系列がとっ散らかった編集のため、観ている我々は状況をうまく脳内処理できない。冒頭からクエスチョン・マークが点灯しまくりである。
ぜひご一読ください!
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