『ワン・バトル・アフター・アナザー』の考察/解説レビューをCINEMOREに寄稿しました

『ワン・バトル・アフター・アナザー』PTA映画における新たな父性のかたち ※注!ネタバレ含みます」という考察/解説レビューをCINEMOREに寄稿しました。

「彼は演技が下手くそだったから、成功しなかったんだよ」(*)

これは、ポール・トーマス・アンダーソンが父アーネストを冗談めかして語った一言。過度に突き放すわけでも、過剰に持ち上げるわけでもなく、父親を一人の人間としてフラットに受け止めるような、親子の独特な距離感がにじみ出ている。

アーネスト・アンダーソンは人気司会者として名を馳せたものの、俳優としては成功を収めることができなかった。PTAにとって彼は偉大な人物であると同時に、どこか不完全な人間でもあったのだ。この見方は、そのままアンダーソン作品における父性の描写に直結する。理想化された権威ではなく、欲望や欠点を抱え込んだ存在として。

PTA初期作品において、父性は欠落や歪みとして表出される。『ブギーナイツ』(97)や『マグノリア』(99)では、家族と信頼関係を築くことができず、実父不在のなかで擬似家族が形成されていく。特に『マグノリア』では、父の愛を得られなかった子どもたちが深いトラウマを抱え、その傷が連鎖していく様子が語られていた。

ぜひご一読ください!