『ジェイコブス・ラダー』の考察/解説レビューをCINEMOREに寄稿しました

『ジェイコブス・ラダー』聖書が照らすベトナム帰還兵の闇」という考察/解説レビューをCINEMOREに寄稿しました。

『ゴースト/ニューヨークの幻』(90)と『ジェイコブス・ラダー』(90)が同じ脚本家の手による作品と知れば、多くの人が意外に思うだろう。第63回アカデミー賞で脚本賞に輝いた『ゴースト/ニューヨークの幻』(監督:ジェリー・ザッカー)は、亡くなった恋人が幽霊として戻ってくるというロマンティック・ファンタジーウーピー・ゴールドバーグ演じる霊媒師オダ・メイ・ブラウンの軽妙な演技が物語にユーモアを添え、笑いと涙を絶妙に織り交ぜた、ハリウッドらしい感動作に仕上がっていた。

一方『ジェイコブス・ラダー』は、ロマンティックな幻想の対極に位置する、身の毛もよだつようなナイトメア・ストーリー。そこには“愛の奇跡”の代わりに、“悪夢の迷宮”が広がっている。ベトナム戦争帰還兵のジェイコブ(ティム・ロビンス)が、現実と幻覚のあわいで崩壊していくプロセスを描いたこの映画は、不条理、死、罪、そして解放をめぐる精神的ホラー。観客はジェイコブの意識の奥底へと引きずり込まれ、現実の手触りを失っていく。

すべては、脚本家ブルース・ジョエル・ルービン自身が見た悪夢から始まった。深夜のニューヨーク地下鉄に閉じ込められ、出口のない恐怖に襲われる。唯一の逃げ道は地下へのトンネルーーすなわち地獄への入り口。この夢を見た当時、彼はイリノイの田舎で失意の中にあり、人生の物語が「もう終わった」と感じていた。しかし目覚めた瞬間、「これは映画のオープニングになる」と直感し、地獄から抜け出すために書き始めたという。

ぜひご一読ください!