死にたいキャバ嬢と、推したい腐女子。『ミーツ・ザ・ワールド』(2025年)は、第35回柴田錬三郎賞を受賞した金原ひとみの同名小説を、松居大悟が映画化した作品だ。
主人公の由嘉里(杉咲花)は、擬人化焼肉マンガ「ミート・イズ・マイン」を全力で推している27歳の会社員。職場にも家庭にも自分の居場所を見いだせないまま、日々をやり過ごしている。ある夜、婚活に失敗して酔いつぶれた彼女は、歌舞伎町のキャバ嬢ライ(南琴奈)と出会う。やがて由嘉里はライと一緒に暮らしはじめ、今まで経験してこなかった“他者”という未知へと踏み込んでいく。
思えば、1990年代から2000年代にかけての日本映画は、「他者とわかり合うこと」を物語の目的としていた。岩井俊二の『Love Letter』(1995年)は、死者との通信を通して他者への理解を回復する物語だったし、行定勲の『世界の中心で、愛をさけぶ』(2004年)は、亡き恋人との精神的再会を通じて、共感による救済を体現していた。
ぜひご一読ください!