2026/6/3

『マテリアリスト 結婚の条件』(2025)の考察/解説レビューをCINEMOREに寄稿しました

マテリアリスト 結婚の条件

『マテリアリスト 結婚の条件』ロマコメという魔法が死んだ街の、愚かな愛の行方」という考察/解説レビューをCINEMOREに寄稿しました。

自分磨きが際限なく求められ、マッチングアプリで相手をスワイプして選ぶのが当たり前になった現代。そんな時代に、ロマンティック・コメディというジャンルはどんな意味を持つのだろう。この問いに、切先鋭く鮮烈なアンサーを叩きつけるのが、セリーヌ・ソン監督の長編第2作『マテリアリスト 結婚の条件』(25)である。

前作『パスト ライブス/再会』(23)では、運命という目に見えない絆を静謐なタッチで描いたソン監督。しかし本作ではガラリと趣を変え、ハイスペックな市場価値が幅を利かせる、シビアな婚活狂騒曲にカメラを向けている。実はソン監督自身、ニューヨークで売れない劇作家だった頃、家賃を稼ぐためにマッチメイカーとして働いていた異色の経歴を持つ。実体験から生まれているからこそ、この映画は恐ろしいほどリアルで、今っぽくて、それでいて反逆的なロマンス映画に仕上がっているのだ。

物語は、意表を突くオープニングから幕を開ける。映し出されるのは、古代の穴居人たちが花を贈り合い、相手の指にそっと花をつけてあげるという、素朴な愛の儀式。そんな原始的な光景から、映画はいきなり現代のニューヨークへと切り替わる。鏡の前で隙なくメイクを施す、主人公ルーシー(ダコタ・ジョンソン)の姿。愛は人類の誕生以前から存在していたのに、いつの間にか私たちは「恋に落ちる」ということの本来の意味を見失い、それを制度や取引へと変換してしまった。この強烈ジャンプカットは、そんなことを示唆しているようだ。

ぜひご一読ください!

セリーヌ・ソン 監督作品レビュー