『ひらやすみ』(2025)の考察/解説レビューをリアルサウンドに寄稿しました

再放送を機に読み解く『ひらやすみ』 “前に進まなくてもいい”という2020年代日本のリアル」という考察/解説レビューをリアルサウンドに寄稿しました。

真造圭伍が手がけた漫画『ひらやすみ』は、何も起こらない時間を丁寧にすくい取る作品として、静かな支持を集めてきた。2025年はNHK夜ドラ枠で実写ドラマ化。さらに1月1日、2日の深夜には、2夜連続の一挙放送がされている。

物語は、29歳のフリーター・ヒロト(岡山天音)が、近所に住む老女から譲り受けた平屋で暮らし始めるところから始まる。上京してきたいとこのなつみ(森七菜)、高校からの親友ヒデキ(吉村界人)、不動産会社勤務のよもぎ(吉岡里帆)など、さまざまな人々が彼の元に集まり、時間を共有していく。大きな事件は何も起きないし、劇的な展開もない。描かれるのは、変わらない日常と、変わらない関係性の反復だ。

この「何も起こらなさ」は、スローライフ的な表象と混同される。だが、『ひらやすみ』が描いているのは、癒やしや理想化された暮らしではない。そもそも日本のドラマにおいて「何も起こらない日常」が肯定的に描かれ始めたのは、2000年代以降のことだった。競争やスピードに疲れた視聴者に向けて、地方移住、古民家、下宿といったモチーフが持ち込まれ、「速さから降りること」がひとつの到達点として提示されてきた。

その文脈において、アイコン的な存在だったのが小林聡美である。映画『かもめ食堂』やドラマ『すいか』(日本テレビ系)、『パンとスープとネコ日和』(WOWOW)、近年の『団地のふたり』(NHK BS)に至るまで、彼女は一貫して、あくせくしない人生を歩む女性を演じてきた。スローであることは、競争や速さを一度は引き受けた末に辿り着く、ある種の完成形として提示されてきたのだ。

ぜひご一読ください!