スーパーハッピーでバラエティ豊かな、耳が幸せすぎるグラミー受賞作
2005年のインタビューでエド・シモンズは、5作目のスタジオ・アルバム『Push the Button』(20024年)について「ここ数年で最も幸せだ」、「心からこれが自分たちにとって最高のアルバムだと感じている」と語っている。
それだけケミカル・ブラザーズにとってこの作品は自信作だったのだろう。実際にこのアルバムは2006年のグラミー賞で「最優秀エレクトロニック/ダンス・アルバム賞」を受賞するなど、高い評価を得た。
前作『Come with Us』はトライバル・ハウス系のクラブサウンドを突き詰めたような作風だったが、『Push the Button』はヒップホップやロック、ポップスなど多様な要素を積極的に取り入れ、バラエティ豊か。頭のてっぺんから足のつま先まで、眼福ならぬ耳福なアルバムになっている。
だってM-1「Galvanize」から、エキゾチックなストリングスと中東風のメロディーでブチかましてくれるんすよ。しかもゲストヴォーカルはA Tribe Called QuestのQ-Tip。ここまでヒップホップライクなトラックは、ケミカル史上初。
続くM-2「The Boxer」は、ティム・バージェス(シャーラタンズ)のエネルギッシュなボーカルが前面に出たロック・チューン。「デ・デ・デ・デ・デ・デ・デデデデデ…」のリフはいつ聴いてもブチあがる。個人的には、彼らの楽曲のなかで1、2を争うくらいに好き。
ケリー・オケレケ(Bloc Party)の独特な歌声とカッティングギター、躍動感のある電子音が絡み合うM-3「Believe」、憂いを帯びたスティーヴ・レイラー(元Hope of the States)のヴォーカルがメランコリックなM-4「Hold Tight London」、リズムボックスのような規則的なビートがクセになるM-6「The Big Jump」、「Left! Right!」という掛け声に合わせて思わずヘッドバンキングしてしまうM-7「Left Right」、Funkadelic系ファンキーチューンのM-9「Shake Break Bounce」…。色とりどりなトラック揃いだ。
ラストを飾るのは、浮遊感のあるシンセサイザーとエコーのかかったギターが特徴的な「Surface to Air」。ちゃんと大団円感のある壮大なトラックで締めくくってくれるのって、なんか嬉しい。『Push the Button』みたいにスーパーハッピーでバラエティ豊かな音楽があれば、たぶん人生ってサバイヴできるんだ。
- アーティスト/Chemical Brothers
- 発売年/2005年
- レーベル/Freestyle Dust
- Galvanize
- The Boxer
- Believe
- Hold Tight London
- Come Inside
- The Big Jump
- Left Right
- Close Your Eyes
- Shake Break Bounce
- Marvo Ging
- Surface to Air

