問答無用でキャーキャー楽しめるポップコーン・ムービー
【思いっきりネタをばらしているので、未見の方はご注意ください。】
いつものごとくWOWOWシネマをダラ見してたら、SFスプラッターの名作『ブロブ/宇宙からの不明物体』(1988年)を放送していて、コレDVDにもなっていない貴重ムービーなもんだから、「これまさに僥倖ナリ!」と眼を皿のようにして拝観。
もろもろツッコミどころはあるにせよ、淀川先生の『日曜洋画劇場』で初見を果たしてからはや20年、久々にアメーバ状の怪物と再会して感慨もひとしおであった。
監督は、シュワちゃん主演のアクション大作『イレイザー』(1996年)が一番のメジャー作品であろう、チャック・ラッセル(1996年)。その後は『ブレス・ザ・チャイルド』(2000年)や『スコーピオン・キング』(2002年)など、順調にB級ホラーの製作に逆戻り。
そのラッセル氏と共同でシナリオを手がけているのが、『ショーシャンクの空に』(1994年)や『グリーンマイル』(1999年)の大ヒットで、今や涙腺刺激モノのオーソリティーになってしまったフランク・ダラボン。
もともとはこのヒト、キャリア初期に『エルム街の悪夢3 惨劇の館』(1987年) や、『ザ・フライ2 二世誕生』(1988年) の脚本を手がけた、筋金入りのスプラッター大好きオタクである。
そんな二人がタッグを組んだ作品だからして、1958年の映画『マックイーンの絶対の危機』(無名時代のスティーブ・マックイーンが主演しているのだ)をリメイクした『ブロブ/宇宙からの不明物体』でも、単なるグチョグチョ・ドロドロ系の悪趣味スプラッターには陥らせない。B級感丸出しの低予算SF映画ながら、シナリオが練りに練られているのだ。
お話の舞台がスキーシーズン以外は閑散としている田舎町で、アメフト選手がもてはやされる典型的なジョックス礼賛のお土地柄、っていう設定がグー。
要は典型的な’80年代青春映画のスキームを踏襲している訳で、「奥手なアメフト少年が美人のチアリーダーに恋をする」というベタベタ・ストーリーを勝手に我々が想像していると、主役と信じきっていたポール君(ドノヴァン・リーチ)が序盤でアッサリ殺されてしまう、という衝撃展開に目がテンになってしまう。
本当の主役は、札付きの不良初年ブライアン。演じるケヴィン・ディロンはマット・ディロンの実の弟だが、顔つきはフレディ・マーキュリー系。ヒロインは、お世辞にも可愛いとは言えないショウニー・スミス演じるメグ。
この二人が力を合わせて巨大アメーバと対決するんだが、コレが宇宙からの飛来物ではなく、実は対ソ連用に開発された生物兵器であることが判明。この事実を隠蔽しようとして、政府の調査団は街ごと葬り去ろうとする…という展開はまんま『アウトブレイク』。
ドラマを矮小化させず、スケールの大きい映画にせんとするスタッフの熱意が伝わってくるようである。
若干95分程度の尺ながら、ダイナーのウェイトレス、保安官、神父など、脇役たちにもきちんとフォーカスを当てているので、彼らの死がビジュアル面だけではなく、心情的にもショックを受けるように計算されている。
それにしても、「生きたまま消化される」って考えられる限り最もイヤーな殺され方だよなあ。犠牲者がみんな『ムンクの叫び』みたいなご面相になってしまうのが、見所であります。
完全に狂人と化した神父が、ブロブの入った試験管を握りしめつつ「審判の日」の訪れを予言するエンディングも、黙示録的な雰囲気を漂わせていて、奇妙な味。『ブロブ/宇宙からの不明物体』は、問答無用でキャーキャー楽しめるポップコーン・ムービーなのだ!
…あ、あと、デヴィッド・リンチ映画の常連俳優ジャック・ナンスが、医者役でチラリと出演しているので要チェックなり。
- 原題/The Blob
- 製作年/1988年
- 製作国/アメリカ
- 上映時間/95分
- 監督/チャック・ラッセル
- 製作/ジャック・H・ハリス、エリオット・カストナー
- 脚本/チャック・ラッセル、フランク・ダラボン
- 撮影/マーク・アーウィン
- 音楽/マイケル・ホーニッグ
- ケヴィン・ディロン
- ショウニー・スミス
- ドノヴァン・リーチ
- リッキー・ポール・ゴールディン
- ビリー・ベック
- キャンディ・クラーク
- ジョー・セネカ
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