ストレンジでウィアードな、ドロリとしたニコの内実
ファッション誌の表紙を艶やかに飾るトップ・モデルとして活躍したのち、演技にも挑戦すべく月9ドラマの端役から女優スタートし、併行して歌手活動も展開すべく、avex traxあたりからマキシ・シングルをリリース。
こんなパターンは芸能界でゴマンとある訳だが、別にこれは日本に限った話ではなく、海外のショウ・ビズの世界でも、黄金のパターンとして踏襲されている。
ニコも10代の頃から『Vogue』や『Ellie』といった超一流ファッション誌のモデルとして活動したのち、女優としてフェデリコ・フェリーニの『甘い生活』(1960年)に端役で出演。
ニューヨークに移ったあとアンディ・ウォーホールに見いだされてザ・ヴェルヴェット・アンダーグラウンドに参加と、流転のクリエイティブ・ライフを送ってきた。
『Chelsea Girl』(1968年)は、『The Velvet Underground & Nico』(1967年)のリリース後にザ・ヴェルヴェット・アンダーグラウンドを脱退した彼女の、記念すべきソロ・デビュー作。
ドラムレスでベースレス、その代わりにストリングスを効果的にまぶしたサウンドは、ふわふわと白日夢的な様相を呈している。音の中心がどこにあるのか分からないような、ストレンジでウィアードな風景。それはニコ自身が内包していたドラッグ・カルチャーの内実をどろりとさらけ出したかのようだ。
元祖ヘタウマとでも称すべき彼女のアンニュイなヴォーカリゼーションが、その印象をさらに強固なものにしている。特に2曲目に収録されている『These Days』は、壊れやすい玩具のように繊細で、その美しさが一瞬に凝固したかのように儚げな名曲。
ウェス・アンダーソンが、『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』(2001年)の主題歌に起用したことで、すっかり有名になった。
その完成度たるや、ジャクソン・ブラウンが10代(!)の頃に作詞・作曲したとはにわかに信じられないほど。フィンガー・ピッキングによるギター・ワークに、優しいストリングスが絡み合う幻術的なアレンジに、一瞬にして心を持って行かれてしまう。
ボブ・ディラン、ルー・リード、ジョン・ケイル、ジャクソン・ブラウンなど、超豪華な布陣を従えて高い評価を得た『Chelsea Girl』をリリース後も、ニコは数枚アルバムを発表するものの、ヒット作に恵まれず長い低迷期に入ってしまう。
そして1988年7月18日、彼女は自転車で転倒して脳内出血を起こし、数時間後に死亡した。R.I.P.
- アーティスト/Nico
- 発売年/1968年
- レーベル/Verve
- The Fairest Of The Seasons
- These Days
- Little Sister
- Winter Song
- It Was A Pleasure Then
- Chelsea Girls
- I’ll Keep It With Mine
- Somewhere There’s A Feather
- Wrap Your Troubles In Dreams
- Eulogy To Lenny Bruce
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