多分筆者が大学生の時に最も聴き込んだアルバムは、エイフェックス・ツインの『Selected Ambient Works 85-92』(1992)だった。言うまでもなく本作は、アンビエント・テクノの歴史的大名盤。超有名曲のM3「Pulsewidth」なんて、これまで何万回聴いたか分からん。
だが、自分が思うに、エイフェックス・ツインことリチャード・D・ジェームスは、本質的にアシッドなメロディ・メイカーなのであって、ブライアン・イーノが仰るところの「環境としての音楽」すなわち「生活に干渉しない音楽」的なものでは全くないと思っている。チルアウトするには、あまりにもビートが変態的だし、ダウナーすぎるのだ。M6「Green Calx」を鬼リピなんかしたら、心身ともにキマッてしまいそうである。
『…I Care Because You Do』(1995)では複雑怪奇なグリッチ・サウンド、『Richard D. James Album』(1996)ではガッツリとしたドリルンベース、『Drukqs』(2001)や『Syro』(2014)では音響・ノイズ・エレクトロニカとあらゆるテクスチャーをコンパイルしてみせたこの奇才は、常に変幻自在のサウンドでリスナーを魅了…いや、困惑させ続けてきた。
「エイフェックス・ツイン的」というクリシェから遠く離れ、その正体を徹底的に秘匿すること。音楽をアップデートさせていくというよりも、リスナーを撹乱させるために音像をくるくると変化させていくこと。「テクノ・モーツァルト」と称されることもあるエイフェックス・ツインだが、筆者にはトラックメイカーというよりもトリック・スターというイメージの方が遥かに強い。
ぜひご一読ください!
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