アンビエント・ミュージックを一気にポピュラーに押し上げた名盤
それまでは、変態的フレーズをループしまくるアシッド・トラック・コンポーザーとして認知されていたエイフェックス・ツインが、まだ未開拓の荒野だったアンビエント・ミュージックに突如斬り込んでいったのが、この『Selected Ambient Works 85-92』(1993年)である。
…なんていう紹介もバカバカしいぐらい、今や世界的名盤として認知されているアルバムではありますが。当時大学生だった僕も、サークル仲間のT君(変態)に超レコメンドされて聴きまくった覚えがあります。
イギリスのレコードレーベルWarpは、ハード一辺倒だったテクノシーンに一石を投じるべく、よりBPMの遅いインテリジェントテクノを掲げた、『アーティフィシャル・インテリジェンス・シリーズ』を’92年よりリリース。
エイフェックス・ツインも、Polygon Window(ポリゴン・ウィンドウ)名義でアルバム製作に参加していることから、いわゆるリスニング系のテクノ・ミュージックにはもともと親近感があったのだろう。
ドリーミーなナンバーを多数収録した『Selected Ambient Works 85-92』は、アンビエント・ミュージックを一気にポピュラーに押し上げた。
だが、あくまで個人的な意見を言わせてもらうなら、確かに『Ambient Works』とタイトルで謳ってはいるものの、かつてブライアン・イーノが掲げた「環境の一部としての音楽、生活に干渉しない音楽」という意味では、あまりアンビエントとして機能していないと思う。
エイフェックス・ツインは本質的にアシッドなメロディ・メーカーだ。ミニマルなビートと丸みを帯びたアナログ・シンセの音色で構築されてはいるが、ところどころに彼特有の変態的リズム・トラックが顔をもたげ、ハードなレイヴ・トラックが瞬間的に垣間見える。M-6『Green Calx』なんぞ、どー考えてもアゲアゲなナンバーでしょ。
M-3『Pulsewidth』は確かにチルアウトの代名詞みたいなトラックだし、ベッドタイム・ミュージックとして重宝されるかもしれないが、僕はこのアルバムから“透明感”だとか“清冽さ”みたいなものはいっさい感じない。
エイフェックス・ツインの強力すぎるアシッドっぷりを深いエコーやリバーヴで中和し、遅めのBPMで微調整したかのような印象を受ける。故にこのアルバムは、ジャンルを超えて愛聴される作品になったのかもしれないが。
- アーティスト/Aphex Twin
- 発売年/1993年
- レーベル/ R&S
- Xtal
- Tha
- Pulsewidth
- Ageispolis
- I
- Green Calx
- Heliosphan
- We Are the Music Makers
- Schottkey 7th Path
- Ptolemy
- Hedphelym
- Delphium
- Actium
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