ダーレン・アロノフスキーは、かつてのロマン・ポランスキーやルイス・ブニュエルと同じ系列に属する、神経症的でアブノーマルな映画を撮り続ける現代の映像詩人だ。彼の作品では、主人公の精神と肉体が徹底的に傷つけられ、観る側である我々の精神もそれにシンクロして蝕まれていく(辛い……)。アロノフスキー作品はいつだって、観賞要注意系ばかり。最新作の『マザー!』も、ベネツィア国際映画祭のコンペティション部門で上映されると、その衝撃的な内容に評価が真っ二つに分かれ、日本では劇場未公開のDVDスルー作品となってしまった。という訳で【フィルムメーカー列伝 第十三回】は、物議を醸し続ける現代の映像詩人ダーレン・アロノフスキーについて考察していきましょう。
ダーレン・アロノフスキーは1969年2月12日、ニューヨークのブルックリン生まれ。父親はユダヤ教保守派で、幼少時からユダヤ人らしく育てられたという。ティーンエイジャーになるとケニアやアラスカで生物学を学び、野外研究に明け暮れる日々を送る。1987年に入学したハーバード大学では、社会人類学を専攻し、フィールドワーク系研究者として順調にキャリアを重ねていった。
そんな彼に転機が訪れる。大学のアニメーター志望の友人の影響で、映画の面白さに目覚めてしまったのだ。勢い余ってアロノフスキーは映画を制作しはじめ、学生のアワードで最終候補作品に選出されるほどの高い評価を得る。これに気を良くした彼は「自分の生きる道は映画以外なし!」とフィルムメーカーとして完全覚醒。円周率に取り憑かれた男の精神崩壊を描いた商業用映画処女作『π』で、映画界に殴り込みをかける。
ぜひご一読ください!
最近のコメント