90年代テクノ感覚をアップデートさせた、現在進行形のビッグビート
前作『Further』(2010年)が、全曲映像付きのオーディオビジュアル作品という実験作だったのに対し、通算8作目のスタジオ・アルバムとなる今作『Born in the Echoes』(2015年)は、再びゲストヴォーカルとのコラボ・スタイルに回帰。『Surrender』(1999年)や『Push the Button』(2005年)に近い感触の仕上がりになっている。
ただしサウンド面は、クラブ・ミュージックの変化を踏まえ、ビートのパンチ力やシンセの存在感をより前面に押し出したものに。ミニマルなリズムや反復パターン、浮遊感のあるパッドサウンドによって、彼らの90年代的テクノ感覚を現代風にアップデート。過去作のビッグビート感やポップ・センスを踏襲しつつ、ちゃんと現在進行形のテクノ/ハウス・ミュージックになっている。
その姿勢が最もよく表れているのが、M-2「Go」だろう。2005年の「Galvanize」に続くQ-Tipとのコラボ作では、典型的なビッグビートを現代的に再解釈。タイトでパンチの効いたキックとスネア、跳ねるようなハットがEDM的高揚感を演出し、Q-Tipのラップがリズムと完全に同期している。
セイント・ヴィンセントのアニー・エリン・クラークが参加したM-3「Under Neon Lights」も同様。ポストパンク的なテクスチャを持つシンセラインに、彼女のヴォーカルが絡み合う。クラブ向けのフロア・サウンドなのに、その手触りはとってもポップなのだ。
クロージング・ナンバーの「Wide Open」もええですね。透明感のあるアコースティック/シンセサウンドにのせて、ベックの優しい歌声が空気いっぱいに広がる。アルバム全体を包み込むドラマ性がたまらない。
クラブ・カルチャーの文脈に根ざしつつも、ポップリスナーに開かれたアルバム。時代のトレンドを嗅ぎ分け、最新系のサウンドを届け続ける彼らのバランス感覚には、もうリスペクトしかありません。
- アーティスト/Chemical Brothers
- 発売年/2015年
- レーベル/Virgin
- Sometimes I Feel So Deserted
- Go (feat. Qティップ)
- Under Neon Lights (feat. アニー・エリン・クラーク)
- EML Ritual (feat. アリ・ラブ)
- I’ll See You There
- Just Bang
- Reflexion
- Taste of Honey
- Born in the Echoes (feat. ケイト・ル・ボン)
- Radiate
- Wide Open (feat. ベック)
- Direct Buki(Japanese bonus track)
- Let Us Build a City(Japanese bonus track)
- Wo Ha(Japanese bonus track)
- Go(extended mix)(Japanese bonus track)
- Reflexion(extended mix)(Japanese bonus track)

