シェイクスピア通にはたまらない映画だろう。
若き日のウィリアム・シェイクスピアと貴族の娘ヴァイオラとの恋愛をメインに据えながら、『オセロ』、『リア王』、『ハムレット』といった代表作の名セリフがいたるところに盛り込まれ、二人の恋愛の顛末が傑作喜劇『十二夜』に繋がるという構造は、「ブラボー!」の一言。シェイクスピアに通暁しているトム・ストッパードが、脚本で参加しているのが大きい。
監督のジョン・マッデンも、テンポある演出で当時の風俗を鮮やかに素描。その語り口は実にエレガントだ。クライマックスで『ロミオとジュリエット』を上演するくだりは、劇場の奥行きが感じられるほどの臨場感に満ちている。
このあたりの演出はウエスト・エンドやブロードウェイで、舞台監督としても活躍しているジョン・マッデンならでは。
キャストも皆芸達者揃いで素晴らしい。ジェフリー・ラッシュのコメディエンヌとしての才能には改めて驚かされるし、ベン・アフレックも脇役ながら印象深い演技を披露。
驚いたのは本作のヒロイン、ヴィオラ役グウェネス・パルトロウ。彼女の初見は『セブン』(1995年)だったが、当時の印象は地味で華のない女優さんというイメージだった。
ところがそれからぐんぐん実力をつけ、どんどん綺麗になり、一躍ハリウッドのドル箱女優になってしまった。あまつさえ、この映画でアカデミー主演女優賞まで獲得。大出世なり。
逆に一番印象に残らなかったのがシェイクスピア役のジョゼフ・ファインズ。粗野で野性的、セックスアピールに満ちた新しい解釈のシェイクスピア役は斬新ではあるものの、あまたの名作を創りだした程の知性と教養が感じられず。
これじゃあ単なるジゴロです。
- 原題/Shakespeare In Love
- 製作年/1998年
- 製作国/アメリカ
- 上映時間/123分
- 監督/ジョン・マッデン
- 製作/デヴィッド・パーフィット、ドナ・ジグリオッティ、ハーヴィー・ワインスタイン、エドワード・ズウィック
- 脚本/マーク・ノーマン、トム・ストッパード
- 撮影/リチャード・グレイトレックス
- 音楽/スティーヴン・ウォーベック
- 美術/マーティン・チャイルズ
- 衣裳/サンディ・パウエル
- 編集/デヴィッド・ギャンブル
- グウィネス・パルトロー
- ジョセフ・ファインズ
- ジェフリー・ラッシュ
- コリン・ファース
- ベン・アフレック
- ジュディ・デンチ
- トム・ウィルキンソン
- サイモン・キャロウ
- ジム・カーター
- マーティン・クルーンズ
- イメルダ・スタウントン
- ルパート・エヴェレット
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