『ソイレント・グリーン』の考察/解説レビューをCINEMOREに寄稿しました

『ソイレント・グリーン』アンモラルで風変わりなディストピアSF ※注!ネタバレ含みます」という考察/解説レビューをCINEMOREに寄稿しました。

THE 職人、リチャード・フライシャー。どんなジャンルであろうとも、どんな面倒臭い条件があろうとも、どんな低予算であろうとも、彼はきっちりと仕事をこなして、一定のクオリティを担保する。『ミクロの決死圏』(66)と『絞殺魔』(68)と『トラ・トラ・トラ!』(70)が同じ監督の作品だなんて、誰が信じられるだろう? 彼ほど、自分に求められていることを的確に理解して、為すべきことを実践できるフィルムメーカーはいない。

だがーーここが非常に面白いところなのだがーーフライシャーの映画は、職人監督の範疇を超えて、しばしば奇妙な輪郭を露出するときがある。例えば、ミア・ファローが盲目の女性を演じる『見えない恐怖』(71)。真っ赤な血で染まったバスタブに死体があるにも気づかず、彼女がお湯の蛇口を閉めるシーン。恐怖を知覚できないことで生まれる悪夢的映像。もしくは、『マンディンゴ』(75)で農園主の女性が黒人奴隷と体を交わすシーン。超えてはいけない一線を超えてしまったような、目撃してはいけないものを目撃してしまったような感覚。観客の倫理を揺さぶるというよりは、画そのものの力で我々をなぎ倒してしまうのだ。

彼の大ファンを公言している黒沢清は、「1970年代のフライシャーは本当に過激だった」とコメントしている。特に円熟期を迎えてから獲得した、異様な禍々しさ。職人でありながらも、ウェルメイドとは決して言い難い、不穏さに満ちたフィルモグラフィー。それはもちろん、ディストピアSFの名作『ソイレント・グリーン』(73)にも当てはまる。

ぜひご一読ください!

アーカイブ

メタ情報

最近の投稿

最近のコメント

カテゴリー