ラクエル・ウェルチがエロすぎる、’60年代を代表するSF古典
『ミクロの決死圏』(1966年)といえば、’60年代を代表するSF映画の古典中の古典。
脳内出血をおこした要人の命を救うべく、特殊潜航艇プロテウスをミクロ化して体内に注入し、救出作業を試みる。しかしミクロ効果は1時間しか持続しない。おまけに、救出チームの中にこのミッションを妨害せんとするスパイも混じっている可能性も…という密室劇の定番プロットが効いている。
インナースペースで繰り広げられるサイエンス・フィクションと、1時間以内に作戦を遂行しなければならないという、リアルタイム・サスペンスの合わせ技一本という訳だ。
ひん死状態の要人が、ミクロ技術の権威であるチェコの科学者で、アメリカに亡命しようとしたところを敵側のスパイに襲われたという設定が、冷戦構造が顕著だった当時の政治状況をよく表している。
「軍隊を縮小化することで、移送手段を簡略化しよう」という発想からミクロ技術が編み出されたのだが、やっぱあらゆる最新技術は、軍事目的に転用されるのだなあ。そーいや『ドラえもん』で、誤って丸飲みした指輪を探すべく、静香ちゃんの体内に入るという話がありましたね。今思うと実にミクロ化の目的が牧歌的なり。
しかしまあこの映画、何と言ってもラクエル・ウェルチである!有無を言わさずラクエル・ウェルチである!!問答無用にラクエル・ウェルチである!!!
バスト94・ウェスト58・ヒップ90を誇るこのグラマラス美女に、ぴったりと貼り付くかのようなウェットスーツを着用させるあたり、リチャード・フライシャーもチャンとツボを心得た演出ぶり。全国の童貞中学生の心を鷲掴みしてしまうお色気をこれでもかと発散させている。
そもそも、盛りのついたオヤジたちによって結成された医療チームの一員となり、潜航艇という名の密室に乗り込む紅一点というシチュエーション自体、公然たるセクシャル・ハラスメント。
抗体に攻撃された彼女のバディーに繊維がまとわりつき、オヤジどもがそれを必死に取り除こうとするシーンは、どう見てもうら若き女性の身体をまさぐる図にしか見えず。
これってR指定じゃなくていいの?と本気で心配してしまった。『ミクロの決死圏』は、ラクエル・ウェルチの存在によって『エロスの決死圏』と化しているんである。
さてこの映画、そもそもの設定は、手塚治虫の『鉄腕アトム』が元ネタ。アメリカ三大ネットワークのひとつNBCが、虫プロと『鉄腕アトム』配給契約を結び、『ASTRO BOY』のタイトルで全米放送。
その中のエピソード『細菌部隊』を映画用シナリオにしたいと20世紀FOXから打診があり、NBCは仁義を通して虫プロの了承を得るようにと連絡先を教えたのだが、なぜだか20世紀FOXはそれをガン無視。勝手に映画化してしまったのである。
手塚治虫は当然ご立腹だったのだが、後年企画と監修を手がけたアニメ作品『ワンダービート スクランブル』(1986年)で、特殊体内突入艇をミクロ化して患部に注入&治療を行うという、『ミクロの決死圏』アウトラインを自らパクっているので、どっちもどっち。手塚自身も、「腹も立ったが、お互い様」というコメントを残している。
ちなみに同様のコンセプトで、後年ジョー・ダンテ監督の『インナースペース』(1987年)が作られているので、こちらも要チェックなり。
- 原題/Fantastic Voyage
- 製作年/1966年
- 製作国/アメリカ
- 上映時間/100分
- 監督/リチャード・フライシャー
- 製作/ソウル・デヴィッド
- 原作/オットー・クレメント、ジェイ・ルイス・ビックスビー
- 脚本/ハリー・クライナー
- 撮影/アーネスト・ラズロ
- 特殊効果/L・B・アボット
- 編集/ウィリアム・B・マーフィー
- 音楽/レナード・ローゼンマン
- スティーヴン・ボイド
- ラクエル・ウェルチ
- アーサー・ケネディ
- エドモンド・オブライエン
- ドナルド・プレザンス
- アーサー・オコンネル
- ウィリアム・レッドフィールド
- ジェームズ・ブローリン
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