ブルーカラー感を全面に押し出した、宇宙版『真昼の決闘』
硬派なアクション・ムービーを撮らせたら右に出る者は2~3人ぐらいしかいない、ピーター・ハイアムズによるSFサスペンス。
すでに多くの識者によって指摘されているように、巨悪に敢然と立ち向かう連邦保安官(ショーン・コネリー)という図式は、宇宙版『真昼の決闘』(1952年)とも言うべきノリ。
2000人にもおよぶ労働者たちが採掘労働に明け暮れる、巨大宇宙ステーションを舞台にしたSF映画なのだが、異星人やら巨大生物といったSF的ギミックは一切登場せず、ショットガンや合成麻薬といったプロップによって、現代社会を照射したかのようなリアリティー溢れるストーリーが展開される。
まずこの映画、サスペンスの醸成がイカしてます。敵に雇われた殺し屋が、コネリーのいる宇宙ステーションに刻々と近づいてくるあたりの描写は、迎え撃つ主人公の心理描写と巧みにクロスカッティングされて劇的な効果を生んでいる。
クライマックスのアクションシーンも単なる銃撃戦に淫することなく、船外に脱出したショーン・コネリーによる頭脳戦が展開されてなかなか見応えあり。
華やかさとはほど遠い宇宙ステーションの鬱屈とした雰囲気は、2年前に公開された『エイリアン』(1979年)の影響もあるのかもしれない。
機械油の匂いがたちこめてくるような薄汚れた宇宙ステーションは、『エイリアン』の舞台である宇宙貨物船ノストロモ号と酷似している(そーいや、両作とも音楽を手がけているのがジェリー・ゴールドスミスだ)。
かつて盲目的に信じられていた“光と希望に満ちあふれていた未来社会”の姿はどこにもなし。やがてこのディストピアのビジュアル・イメージは、『アウトランド』の翌年に公開される『ブレードランナー』(1982年)で決定付けられることになる。
最後に不満を一つ。冒頭で「こんなヘンピなトコロで住むのは嫌!」と勝手に宇宙ステーションから抜け出すショーン・コネリーのワイフや、孤軍奮闘のコネリーに協力するオバハン医師など、少なからず女性陣もこの映画に出演している。
しかし、この映画の持つ独特の息苦しさをより表現するには、宇宙ステーション内にいる女性は娼婦だけ、という設定にしてしまったほうがいいんではないか。それって思い切り、『地獄の黙示録』(1979年)な訳だけども。
ブルーカラーの貧困層の物語に、優しく包み込んでくれるかのような女性性は、余計な“甘さ”を付与するものでしかない。
- 原題/Outland
- 製作年/1981年
- 製作国/アメリカ
- 上映時間/126分
- 監督/ピーター・ハイアムズ
- 製作/リチャード・ロス
- 製作総指揮/スタンリー・オトゥール
- 脚本/ピーター・ハイアムズ
- 撮影/スティーヴン・ゴールドブラット
- SFX/ジョン・スティアーズ、ロイ・フィールド
- 音楽/ジェリー・ゴールドスミス
- 美術/フィリップ・ハリソン、マルコム・ミドルトン
- 編集/スチュワート・ベアード
- 衣装/ジョン・モロ
- ショーン・コネリー
- ピーター・ボイル
- フランセス・スターンヘイゲン
- キカ・マーカム
- ジェームズ・B・シッキング
- クラーク・ピータース
- ジョン・ラッツェンバーガー
- スティーヴン・バーコフ
- スチュアート・ミリガン
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