酒と煙草と女を愛した希代のパンク親父による、ジェーン・バーキンとのエロ賛歌
実はフレンチポップという言葉自体は日本で作られた造語で、本国フランスではヴァリエテ・フランセーズと呼ばれている。
もちろん語彙としては、フランス産のポップ・ミュージック全般をフレンチポップと言ってしまっても間違いではないのだが、ニュアンス的には60年代にフランスで誕生した音楽ムーヴメント「イェイェ」を指す場合が多いようだ。
60年代当時、エルヴィス・プレスリーやチャック・ベリーなどのアメリカ産ロックン・ロールが世界中を熱狂の渦に巻き込み、シャンソン一辺倒(多少誇張アリ)だったフランスにも大きく影響を与えた。
基本的に、端麗で優雅なフランス語はロック・ミュージックには馴染まないはずのだが、ブームに刺激されて、アイドル歌手にフランス語でロックを歌わせちゃったのがイェイェなのである。
果たして産み落とされたのは、アメリカン・カルチャーとフレンチ・カルチャーが融合した、摩訶不思議な極上ポップス。バンドネオン(アコーディオンのような鍵盤楽器)がフィーチャーされた心弾むメロディー、どこか小悪魔的なリリック!
フランス・ギャル、シルヴィ・バルタンといった、超ラブリー&超キュートなフレンチ・ロリータたちが微笑みかける、甘美で危険な誘惑。かくして、イェイェ=フレンチポップは世界に加工輸出され、静かな熱狂を呼んだのである。
そしてフレンチポップを語るうえで、この御大を忘れるわけにはいかないだろう。セルジュ・ゲンスブール、酒と煙草と女を愛した希代のパンク親父。
30歳を過ぎてからデビューアルバムを発表するという遅咲きだったが、聴いただけで妊娠しそうなエロエロな歌詞+卓越したメロディーセンスで、一躍音楽シーンのトップ・スターに躍り出る。
アイドル歌手のみならず、ブリジット・バルドー、イザベル・アジャーニ、アンナ・カリーナといった大女優にも曲を提供するなど、プロデュースワークも積極的におこなっていた。
大女優とのコラボ・アルバムという意味では、やはりこの作品にトドメを刺すだろう。当時の恋人ジェーン・バーキンを迎えて製作した、『Jane Birkin Serge Gainsbourg』(1969年)である。
とにかくエロい。ものすごくエロい。音楽ってこんなにエロいのか、と耳を疑ってしまうくらいにエロい。当時バリバリの童貞だった僕は、このアルバムを聴いただけで射精しそうになりました。
あまりにも有名なM-1『Je Taime …moi non plus』では、大女優ジェーン・バーキンに「ジュテーム」(愛してる)を連呼させ、大胆なあえぎ声まで披露させているのだから、そのエロ手腕や恐るべし。
ちなみに、元カノのブリジット・バルドーにも、同じ曲で同じことをさせているのだが、バルドーの意向でお蔵入りに。興味のある方は聴き比べてみるのも面白いかもしれない。
- アーティスト/Serge Gainsbourg
- 発売年/1969年
- レーベル/Fontana Records
- Je T’Aime…Moi Non Plus
- Anamour
- Orang Outan
- Sous Le Soleil Exactement
- 18-39
- 69 Annee Erotique
- Jane B
- Elisa
- Canari Est Sur Le Balcon
- Sucettes
- Manon
- Chanson de Slogan, La
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