ミシェル・ルグランのヨーロッパ的感性によって再構築された、軽妙洒脱なラウンジ・ミュージック
父親が指揮者にして作曲家のレーモン・ルグラン、お姉さんが歌手のクリスティアンヌ・ルグランという音楽一家に育ち、パリ国立高等音楽院でピアノを学んだという血統書付きのサラブレッド、ミシェル・ルグラン。
彼の仕事で何よりもまず思い浮かぶのは、『シェルブールの雨傘』(1964年)、『ロシュフォールの恋人たち』(1967年)、『華麗なる賭け』(1968年)といった映画音楽家としての顔だ。ジャン・リュック・ゴダールとコラボした初期作品も味わい深し。
しかし彼がジャズ・ピアノストとしてアルバム『Legrand Jazz』(1958年)を発表していることは、意外に知られてない事実。しかもそのメンツが、にわかに信じ難いほどに豪華なのだ。
ざっと名前を挙げれば、マイルス・デイビス、ドナルド・バード、アート・ファーマー、クラーク・テリー、ベン・ウエブスター、ジョン・コルトレーン、ポール・チェンバース、ハービー・マン、フィル・ウッズ、バリー・ガルブレイス、ビル・エバンス、ハンク・ジョーンズ!!モダンジャズの歴史を彩ったビッグネームばかりなり。
ハード・バップ以降のモダン・ジャズは、どうしてもテクニック重視のスポーティーな文脈として捉えられがち。しかし、ルグランのヨーロッパ的感性によって解体→咀嚼→再構築されると、一転して軽妙洒脱なラウンジ・ミュージックに刷新されてしまう。
ファッツ・ウォーラーの『The Jitterbug Waltz』、ディジー・ガレスピーの『Night In Tunisia』、セレニアス・モンクの『’Round Midnight』といったスタンダード・ナンバーの数々が、軽やかなホーン・セクションやストリングスによって、カラフルにリ・アレンジ。その音色はスウィートで、センチメンタルで、そしてちょっとエロい。
クールな大人の夜の音楽を希求したニューヨークの一流ジャズメンたちを従えて、生粋のパリ・ミュージシャンであるルグランは、ひたすら気持ちのいいアンサンブル&ハーモニーを奏でている。
ハネるようなリズム・セクションも、とってもグルーヴィー。M-5『Stompin’ At The Savoy』を聴いて心が踊らないヤツは、不感症であると断言しよう!
- アーティスト/Michel Legrand
- 発売年/1958年
- レーベル/Polygram Records
- Jitterbug Waltz
- Nuages
- Night in Tunisia
- Blue and Sentimental
- Stompin’ at the Savoy
- Django
- Wild Man Blues
- Rosetta
- Round Midnight
- Don’t Get Around Much Anymore
- In a Mist
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