「絶望」すら溶解させる、“J-POP界のジャンヌ・ダルク”こと川瀬智子の圧倒的ヴォーカリゼーション
突然ではあるが、僕は小柳ゆきが嫌いである。歌唱力があることは認めるが、自分に陶酔しきったあの歌いっぷりがイヤだ。鼻につく英語の発音もイヤだ。『あなたのキスを数えましょう』なんてサイアクだ。数えるな、そんなもん。
僕はどうも昔から「歌いあげる系」とか「熱唱系」が苦手である。 じゃどんなヴォーカリストが好きかと言えば、僕は脱力系がお好みである。ダル~イ感じで歌うコが好きである。
ということで、トミーフェブラリーこと川瀬智子ちゃんはいい。カワイイよねー。昔はパフィーの亜実ちゃんも好きだったのだが、GLAYのTERUと略奪結婚しやがったもんだから、俺ランキングでは赤丸急下降である。
ものすごく脱線したが、ブリグリの話だ。ブリグリはいいですよ、お父さん。特にデビューアルバムの『The Brilliant Green』は最高ッスね。
サウンドは正統UKロックのギターバンドだが、突き抜けたポップ感とけだるい憂鬱感を合わせ持つ、実に懐の広いバンドなのである。
ここにあるヒミツに罪悪感を背負って生きていた
視界の外を見渡せば
まるで手すりさえもない
真っ暗な闇の中にある階段を
あてもなく降りていた
(There will be love there 愛のある場所)
いやー、暗い歌詞ッスね。まさに私的『ベティ・ブルー』状態。
行く当てもなく彷徨う「愛」という幻影を追い掛けて、漆黒の闇に身をゆだねていく。こんなに体温の冷たい曲なのに、トミーのヴォーカルと組み合わさると、アラ不思議。彼女の真摯な情熱が「絶望」という氷塊を溶解し、暖かで緩やかな世界観を現出させてしまうのである。
傷つけ合うくらい 愛していた
夢は絶望になった 知らぬうちに
射し込む光が すきま風が
濡れた頬に痛く 滲み入るよう
(冷たい花)
彼女は、J-POP界のジャンヌ・ダルクである。絶望・哀しみ・喪失、全ての罪を背負って彼女は歌い続ける。贖罪のうたはトミーという唯一無二のろ過機で昇華され、聴くものに一筋の希望すら抱かせるのだ。
- アーティスト/The Brilliant Green
- 発売年/2000年
- レーベル/ソニー・ミュージックレコーズ
- I’m In Heaven
- 冷たい花
- You & I
- Always and Always
- Stand by
- MAGIC PLACE
- “I”
- Baby London Star
- There will be love there-愛のある場所-
- Rock’n Roll
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