J-Pop的構造にとらわれない、耳障りの良いポップネス
僕がKan Sanoの名前を初めて知ったのは、テレビ朝日系音楽バラエティ番組『関ジャム 完全燃SHOW』(この番組はマジで勉強になります)。蔦谷好位置が『C’est la vie feat. 七尾旅人』を激推ししていて、恥ずかしながら彼の名前を認識した次第。
ざっとKan Sanoのプロフィールをチェックしてみると、高校卒業後に渡米してボストンのバークリー音楽大学に入学。全然ジャズ・ミュージシャン志望じゃなかったのに、ジャズ作曲科でコンテンポラリー・ジャズを勉強していた変わり種だった。
帰国後はシコシコとトラックをつくっては、My Spaceにアップしたり、海外のレーベルにデモを送ったりする日々。ホテルのラウンジで、ピアノの弾き語りをしていたこともあったという。
次第にキーボーディスト兼プロデューサーとして頭角を表し、CHARA、UA、土岐麻子、大橋トリオ、青葉市子、七尾旅人らのレコーディングに参加。その傍らで、自分のソロアルバムも次々と発表するという、八面六臂の活躍ぶり。
『Fantastic farewell』(2011年)でソロデビューを飾り、『2.0.1.1.』(2014年)を経て発表された3rdアルバムがこの『k is s』(2016年)だ。
ネオソウルを起点にして、ヒップホップ、ブロークンビーツ、ハウス、ジャズ、あらゆるジャンルをクロスオーヴァーに摂取し、血肉化させたサウンドは、耳障りの良いポップネスをたたえながらも、どこかアヴァンギャルドな手つき。
「イントロ→Aメロ→Bメロ→サビ」というJ-Pop的構造にとらわれない展開は、「(音楽的に)どこにも属したくない」というKan Sanoの矜持が見て取れる。全体的にアシッドでジャズ・ファンクな感じは、むしろインコグニートに近いかも。
どのナンバーも捨て曲ナシの名盤だが、やっぱM-4『C’est la vie』は名曲ですね。気持ちよくレイドバックした鍵盤の和音に、音数を抑えたアーヴァンなトラックと、七尾旅人の透明感溢れるヴォーカルが重なる。
M-7『Momma Says』もイイ。彼自身が影響を受けたという、エリカ・バドゥを思いっきり意識したネオ・ソウル。そのてらいのなさに、逆にミュージシャンとしてのアティチュードが滲み出ている。
ちなみに僕の中でKan Sanoとtofubeatsは、「細面なトラックメーカー系メガネ男子」という同一フォルダに格納されている。写真を見ても、いつも取り違えてしまう。毎度すいません。
- アーティスト/Kan Sano
- 発売年/2016年
- レーベル/origami PRODUCTIONS
- Penny Lane
- Magic!
- Reasons feat. Michael Kaneko
- C’est la vie feat. 七尾旅人
- lovechild
- Can’t Stay Away feat. Maylee Todd
- Momma Says feat. 島村智才
- LAMP
- と び ら
- Awake Your Mind
- Let It Flow
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