2026/5/10

『NARKISSOS』(2006)徹底解説|ロック親父たちのメンツと、カエラ嬢の瑞々しさ

『NARKISSOS』(2006年/サディスティック・ミカ・バンド)
楽曲背景と意味を深掘り考察・批評・レビュー

10段階評価
5
OKAY

概要

『NARKISSOS』(2006年)は、日本が世界に誇る伝説的ロックバンド、サディスティック・ミカ・バンドが17年ぶりに発表した通算4枚目のオリジナル・アルバム。加藤和彦、小原礼、高橋幸宏、高中正義というオリジナル・メンバーに、ゲスト・ヴォーカルとして木村カエラが参加。彼女のパンキッシュで瑞々しい歌声が、ベテランたちが奏でる緻密なアンサンブルに心地よい刺激を与え、バンドの新たなアイコンとして見事に機能している。キリンラガービールのCMソングとして話題を呼んだ「Big-Bang,Bang!愛的相対性理論」や、セルフカバーである「タイムマシンにおねがい(2006 Version)」などを収録。

目次

キリンラガービールが呼んだ、3度目の奇跡

可憐な木村カエラ嬢にゾッコンなロック親父共が、己のメンツにかけて完成させたアルバム。2006年のキリンラガービールのCMがきっかけで3たび復活したサディスティック・ミカ・バンドだが、実は僕は彼らに関してそれほど深い基礎知識を持ち合わせているわけではない。

把握しているのは、元ザ・フォーク・クルセダーズの加藤和彦をはじめ、高中正義、高橋幸宏、小原礼といった日本の音楽史を支えるレジェンドたちが在籍していること。

そして、『タイムマシンにおねがい』(1974年)が大ヒットし、日本国内よりもむしろ海外での評価が異常に高いバンドである、ということぐらいだ。

個人的にタイムリーだったのは、桐島かれんをボーカルに迎えて2度目の再結成を果たした1989年の方である。『Boys & Girls』(1989年)って、すごくいい曲だったよな。「Feel me…僕は君じゃな~い♪」ってやつ。……あれ? でもよく考えたら、これ歌ってたの幸宏だよね。桐島かれん、メインじゃなかった気がする。

音楽性の乖離と“iPodシャッフル”状態

んで、木村カエラをフロントに立てた3度目の再結成アルバム『NARKISSOS』(2006年)ですが、うーん、ごめんなさい。正直に言うと、このアルバムはあんまり僕の好みじゃない。

理由は明確で、メンバーそれぞれの現在の音楽的な志向がバラバラすぎるのだ。加藤和彦と小原礼が志向するブルージーで泥臭いフォーク・ロック、高橋幸宏が洗練させてきたエレクトロニカ・ミュージック、そして高中正義が鳴らすテクニカルなフュージョン。これらの要素に乖離がありすぎて、ひとつのトータルアルバムとして全然聴けない。

その巨大なギャップを、木村カエラという“現在最強のロック・ミューズ”のカリスマ性によって無理やり接着しようとしているのは分かる。だが、彼女が全曲でメインボーカルを張っている訳ではないため、結果的にますます混沌を深める“iPodシャッフル状態”に陥ってしまっている。

このレジェンド・メンバーたちの根底に通底している音楽的なルーツは当然あるのだろうが、作品全体としては、単なる「お互いの現在のプレイを見せ合う博覧会」になってしまっている気がしてならないのだ。

カエラ嬢が牽引する「Big-Bang, Bang!」の引力

実質的に、木村カエラの魅力が前面にフィーチャーされた楽曲は、『タイムマシンにおねがい』の2006年ヴァージョンと、同曲と同じく作詞・松山猛、作曲・加藤和彦の黄金コンビによって書かれた『Big-Bang, Bang! (愛的相対性理論)』くらいなのだが、この2曲に関してはマジで最高にイイ!!

特に『Big-Bang, Bang! (愛的相対性理論)』の、「ダ・ダ・ダ・ダ・ダ…」というキャッチー極まりないギターリフの破壊力。ファニーかつゴージャスでありながら、どこかアンニュイでグラマラス。洋楽的なグルーヴを完全にはなぞりきらない、計算され尽くした極上の国産ロックだと思う。

という訳で、『NARKISSOS』はレジェンドたちによる渋くて安定感のあるプレイが楽しめるアルバムだし、カエラ嬢の歌声も伸びやかでバッチリはまっている。ただ、全体的にフォーク・ロックへ偏向している楽曲群がどうも個人的な嗜好に馴染めず、アルバム通してのヘビー・ローテーションには至らなかった。

とはいえ、『タイムマシンにおねがい』と『Big-Bang, Bang! (愛的相対性理論)』の2曲だけは、今でもプレイリストに入れて聴きまくっておりますが、何か?

アルバム情報
プレイリスト
  1. 1. Big-Bang,Bang!愛的相対性理論
  2. 2. Sadistic Twist
  3. 3. in deep hurt
  4. 4. Last Season
  5. 5. King fall
  6. 6. Sockernos
  7. 7. Tumbleweed
  8. 8. Jekyll
  9. 9. Low Life and High Heels
  10. 10. NARKISSOS
  11. 11. タイムマシンにおねがい-2006 Version(Bonus track)
サディスティック・ミカ・バンド アルバムレビュー