60年代半ばから、アルフレッド・ヒッチコックは不調に喘いでいた。『マーニー』(64)、『引き裂かれたカーテン』(66)、『トパーズ』(69)が軒並み酷評。“サスペンスの神様”とまで称された男の地位はみるみるうちに失墜し、完全に過去の人となってしまったのである。
だがこの老監督は、過去の栄光にすがる晩年を送るつもりは毛頭なかった。齢70を超えても、「常に面白い映画を撮りたい」、「映画の最前線で活躍したい」という闘志が潰えることはなかったのである。大プロデューサーのデヴィッド・O・セルズニックに請われ、アメリカにやってきたヒッチコックだったが、心機一転ハリウッドを離れることを決意。『舞台恐怖症』(50)以来、22年ぶりにイギリスで新作『フレンジー』(72)を撮影する。故郷に戻ることで、スリラーの名手として名を挙げた頃の“初心”を取り戻したかったのかもしれない。
ぜひご一読ください!
最近のコメント