『アンダーカレント』の考察/解説レビューをCINEMOREに寄稿しました

『アンダーカレント』紺碧の宇宙をたゆたう、静謐な死」という考察/解説レビューをCINEMOREに寄稿しました。

ジャズ・ピアニストのビル・エヴァンス、ギタリストのジム・ホールが共作した1962年のアルバム『Undercurrent』を、繰り返し、繰り返し聴いていた時期があった。一方がメロディーラインを弾けば一方がバッキングに徹し、音の一つ一つに陰影を付けていく。クールで思索的なインタープレイは、深淵で神々しかった。

そして、アメリカ人写真家トニー・フリーゼルの「Weeki Wachee spring, Florida, 1947」という写真を使用した、鮮烈な印象を残すジャケット・デザイン。白いロングドレスに身を包んだ女性が、澄んだ湖底に漂うモノクロ・ショット。その顔は水面に隠れ、生きているのか、それとも死んでいるのかも分からない。えも言われぬ不穏さをたたえつつ、名状しがたい神性も感じさせる。筆者はこのジャケットに、宿命的なまでに心惹かれてしまった。

おそらく漫画家の豊田徹也も、『Undercurrent』に魅せられた1人だろう。彼は2004年からおよそ1年間にわたって、そのタイトルもズバリ『アンダーカレント』と言う作品を月刊アフタヌーン(講談社)に連載。その表紙には、紺碧の宇宙にゆっくりと沈んでいく女性が描かれている。明白なまでのオマージュだ。

物語の主人公は、実家の「月乃湯」を継いだ女性・関口かなえ。夫はある日突然失踪してしまい、途方に暮れつつも必死に銭湯を切り盛りしている。やがて堀と名乗る男が住み込みで働き始め、かなえは彼と同じ屋根の下で暮らすことに。そんなある日、山崎という探偵に夫の捜索を依頼した彼女は、予想もしていなかった事実に直面するーーー。

ぜひご一読ください!

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