岩井俊二自ら書いた小説を原作に、松たか子、福山雅治、広瀬すず、森七菜ら豪華キャストが集結した映画『ラストレター』。2020年に劇場でこの作品を観たとき、筆者は「これは岩井俊二の集大成的映画ナリ!」としみじみ感慨に耽ったものだ。
彼の代表作『Love Letter』で用いられていたというアナログなモチーフを、新しい装いで再構築したような、それでいてどこか懐かしいような感覚。『Love Letter』で主演を務めていた中山美穂と豊川悦司のコンビが、サプライズ出演していたこともその印象を強めていた。岩井俊二はこの映画をきっかけにして、新しいフェーズに突入するのではないか?当時筆者は、そんな予感を抱いたものである。
ところが最新作の『キリエのうた』を観て、驚いた。『ラストレター』に輪をかけて、岩井俊二の集大成的な映画だったからだ。舞台となる場所が次々に入れ替わる構成や、過去と現在が交錯する時系列(『Love Letter』、『ラストレター』)、“歌”が世界を照らしていくストーリー(『スワロウテイル』、『リリイ・シュシュのすべて』)、青春の恋(『四月物語』、『花とアリス』)、放浪する主人公(『スワロウテイル』、『リップヴァンウィンクルの花嫁』)、双子のようにそっくりな2人の女性(『Love Letter』、『ラストレター』)、仄かに香る死の匂い(『ヴァンパイア』、『花とアリス殺人事件』)。岩井俊二が過去に描いてきたモチーフが、これでもかというくらいに詰まっている。
ぜひご一読ください!
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